農家は万能!?いえいえ。ただの器用貧乏です!

鈴浦春凪

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第6章  罪咎

第18話  現着

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 ノアの感知に反応した人物がいる。

「トラ。――しばらく自走を頼む」

 そう言うとノアはドアを開いて外へ飛び出た。

「ノアさん。危険行為は控えてください」そう言うトラを無視してノアは空を飛行する。

 開発した飛行魔法だ。それを使い上空まで飛び上がると騎獣を追い越し待ち伏せる。

 魔法で路を塞ぐように巨木を倒すと。そっと隠れるように到着を待った。

 やって来た男は慌てて騎獣を制御し止める。

「――何だってんだ?」

 毒つく男の前にノアが現れる。

「久しぶりだな。――そんなに急いでどうしたんだ?」

 男は訝し気に噛みつく。

「――何だ? お前? デカいなりで道を塞ぐな。邪魔だからどけよっ!」

 騎獣をけしかけるように近づける。

「――つれないね。俺に『暴発くん』を差し向けたくせに。俺ってそういうのはキッチリ仕返しするタイプなんだよね」

 そう言いながらノアには珍しく獰猛に笑った。

 帝国の工作員は以前一度ノアと会っている。ノルトライブのダンジョンでファギティーヴォを差し向けた男だ。

 あるいは、バーでノアへミルクを渡してニヤニヤいやらしく笑っていたバーテンと言い換えるか。

 男はあの時より身長が伸びたノアを正確に把握出来なかったのだ。

 そして、その判断が男の命取りとなる。

「――ちっ! くそがっ!」

 男がノアの面影に気付いた時には遅すぎた。

 林に逃げ込もうとする男だが、騎獣の足が地に根を張ったように動かない。そしてバランスを崩して騎獣が倒れた。

 投げ出された男は反射的に土魔法を使い地中へ逃れようとするが、その場は既にノアに支配されている。

 男が使った魔法は拒絶するように何の影響も及ぼせない。

 虚を突かれて半拍の動作不良を起こした男に『昏倒くん』が投げつけられる。

 力なく地面に突っ伏す男。

 王都を二年もの間騒がせた帝国の工作員はこうしてあっけなく捕らえられた。

 ノアもその男も同じ一点に向かって進んでいたのだ。交わるべくして交わった。そこに帝国の思惑が介在しているのかは誰も知らない。


§


 清新は森林の中を悪意の蝶は舞い飛び行く。初めの生贄は巨大な熊だ。

 黒蝶がその熊に取り付くと、眼を血走らせて凶悪な咆哮をあげる。そして、深淵を目指して森の奥へと狂ったように進みだした。

 毒華だいかにおもねる黒蝶の悪意は静かに目指す。――深淵を。




 帝国の工作員を街のギルドへ預けて数日が経った。

 俺はやっと目的の場所に着いた。『追跡くん』が地面に落ちている。ここは広大な森の淵だった。
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