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第6章 罪咎
第22話 暴虐
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長が森で眼にしたもの。
その眼に映る動物を手当たり次第に蹂躙するものの姿だ。仕留めた獲物を食べる事もしない。
穏やかで智を湛えていた瞳は血走り。美しい筈の漆黒の毛が逆立っている。
そこにいたのは本来なら森に平穏をもたらす聖獣の変わり果てた姿。
その爛々と光る暴虐の視線が長を捉えた。
それは、咥えていた虎狼を投げ捨てると唸り声と共に長に踊りかかってくる。
それまで、油断なく構えていた長もその瞬間に自身の死を覚悟した。
(すまん。倅。――後は頼む)
極限の思考により、ゆっくりと飛び掛かって来る血まみれの顎を見つめ、一族の事を思った。
その死が長に届く瞬間。――目の前に壁が現れた。
§
ジョシュアは、森の外辺で狩りをしていた。息子のシルビニオンも一緒だ。
その時、彼は森の騒めきを感じた。膨らむような不安も同時にだ。
「シルヴィ。ここからなら一人で街へ戻れるな? 気を付けて帰りなさい。父さんは村の様子を見てくる」
今日はシルビニオンの練習がてら、森の浅いところで弓の練習をしていたのだった。
「はい。分かりました。お父様。気を付けて行ってきて下さい」
その歳以上にいつも聞き分けの良い息子に相好を崩す。
「お前も気を付けて行くんだぞ。またな」
そう言ってジョシュアは走り出す。右足の動きがぎこちなく不規則な歩幅だが、風のような速さだ。
少年はそれを見送り街へと歩みを進める。
――ビョォウゥー
強い風が吹く。何かに気付いたように少年は振り返った。
「……お父様?」
シルビニオンは口を一文字に結ぶと作ってもらった子供用の弓を携え。父の後を追うように森の奥を目指した。
~~~
――集落
無人の村へとジョシュアが到着した。辺りを見回し大声で人気を探す。
そして、ゴブリンと一緒に作った地下豪を目指した。
そこにいなければ、ここを捨てて何処かへ逃げた事になる。
ジョシュアは最悪も想定しながら歩みを進めた。
入り口を守るように立つ一番危険な物見には年配のホブゴブリンがいた。
その者はジョシュアと知己がある。
「何があった? 全員無事か?」
ジョシュアがそう尋ねる。
「人間。どうしてここへ来た。今は非常事態だぞ」
ホブゴブリンは心配そうにそう言う。
「状況を教えてくれ。手伝えることもあるかもしれない」
一瞬の逡巡の元。集落に尽くすジョシュアに彼は答える。
――森中を動物が逃げ惑っている。こんな事は初めてだ。長は原因の確認に外へ出た」
「……村長が? そうか、仕来りか」
その眼に映る動物を手当たり次第に蹂躙するものの姿だ。仕留めた獲物を食べる事もしない。
穏やかで智を湛えていた瞳は血走り。美しい筈の漆黒の毛が逆立っている。
そこにいたのは本来なら森に平穏をもたらす聖獣の変わり果てた姿。
その爛々と光る暴虐の視線が長を捉えた。
それは、咥えていた虎狼を投げ捨てると唸り声と共に長に踊りかかってくる。
それまで、油断なく構えていた長もその瞬間に自身の死を覚悟した。
(すまん。倅。――後は頼む)
極限の思考により、ゆっくりと飛び掛かって来る血まみれの顎を見つめ、一族の事を思った。
その死が長に届く瞬間。――目の前に壁が現れた。
§
ジョシュアは、森の外辺で狩りをしていた。息子のシルビニオンも一緒だ。
その時、彼は森の騒めきを感じた。膨らむような不安も同時にだ。
「シルヴィ。ここからなら一人で街へ戻れるな? 気を付けて帰りなさい。父さんは村の様子を見てくる」
今日はシルビニオンの練習がてら、森の浅いところで弓の練習をしていたのだった。
「はい。分かりました。お父様。気を付けて行ってきて下さい」
その歳以上にいつも聞き分けの良い息子に相好を崩す。
「お前も気を付けて行くんだぞ。またな」
そう言ってジョシュアは走り出す。右足の動きがぎこちなく不規則な歩幅だが、風のような速さだ。
少年はそれを見送り街へと歩みを進める。
――ビョォウゥー
強い風が吹く。何かに気付いたように少年は振り返った。
「……お父様?」
シルビニオンは口を一文字に結ぶと作ってもらった子供用の弓を携え。父の後を追うように森の奥を目指した。
~~~
――集落
無人の村へとジョシュアが到着した。辺りを見回し大声で人気を探す。
そして、ゴブリンと一緒に作った地下豪を目指した。
そこにいなければ、ここを捨てて何処かへ逃げた事になる。
ジョシュアは最悪も想定しながら歩みを進めた。
入り口を守るように立つ一番危険な物見には年配のホブゴブリンがいた。
その者はジョシュアと知己がある。
「何があった? 全員無事か?」
ジョシュアがそう尋ねる。
「人間。どうしてここへ来た。今は非常事態だぞ」
ホブゴブリンは心配そうにそう言う。
「状況を教えてくれ。手伝えることもあるかもしれない」
一瞬の逡巡の元。集落に尽くすジョシュアに彼は答える。
――森中を動物が逃げ惑っている。こんな事は初めてだ。長は原因の確認に外へ出た」
「……村長が? そうか、仕来りか」
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