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第6章  罪咎

第29話  嵐前

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 共に行動していたジョルジアは、淡々と任務を熟し、皮肉気に笑う。彼が傷ついた時に、自身が施しのつもりで行ったハイヒール。

 その恩を返す為に助けに来たと言われた時は、それまでの自らの不明を恥じたものだ。

 逆賊の徒ジョルジア・バルデラス。――卑しくも生き恥をさらす者。

 帝国で彼はそう呼ばれていた。王に逆らい意見をして滅亡した愚かな一族の生き残り。

 その為に彼は、教育も武の指導も受けることなく一〇歳から最前線で闘わされる事となった。

 今ならば分かる。おかしいのは帝国だ。彼の父は命を賭して王へ具申したのだ。

 ――帝国は壊れている。離れたからこそ、それを実感する。

 そこから始まる逃避行。峻険な霊峰を超えて王国領へやって来るまでの間は、全ての苦労を彼が負ってくれた。

 無愛想で皮肉気だと思っていた性格は、武骨でシャイの裏返しだった。

 いつも気遣いを忘れずに、何でも一人で熟す。そして、たまに恥ずかしそうに笑うのだ。

 愛おしく思うようになるのにそれ程の時間は必要なかった。

 『――碌な死に方をしない。バカな一族の出だ』が口癖だ。自身に受けた呪いにより心臓が何時止まるか分からないとも言っていた。

 だから、そうなる覚悟を既に持っている。

 そして、彼女は、武人に生きては無粋と知る。だからこそ願う。納得の出来る生をと。

 彼女を救い助けてくれた最愛の英雄に。


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 スタンピードを鎮圧し戻ったエステラをギルド員が呼び止める。
 
「エステラ様。ギルド長がお待ちです」

 そう言われて当たり前のようにギルド長室へ通された。

「――疲れているところすまないね。エステラさん」

 白髪のカクシャクとした老人だ。エステラも合うのは二度目だが、名前は知らない。

「実は例の兆しが東端の小さな街近くで感知された。――その周辺にはダンジョンは無い筈なのだがね」

「――そう。そこへも行った方が良いですか?」

 老人は頷き嬉しそうに伝えた。

「そうしてくれると助かるよ。――それとね。エステラさんが気にしていた帝国の工作員だが、王都への移送途中にこの街で留置するように手配した。会ってみるかね?」

 エステラの眼に力がこもる。

「良いのですか?」

「あぁ。――君のお陰で被害が随分と抑えられた。望みには沿うように言われている。ただし、数人の護衛と一緒になるが……。準備が出来たら呼びに行かせるよ。二日程待ってくれるかな」

「分かりました。――同席させたいがいます。……本人が望めばだけど」

「分かった。それも伝えておくよ。今回はこの街の為に骨を折ってくれてありがとう」

 暇の挨拶をしてエステラが部屋を出て行く。

 変わって副長が入室してしてきた。
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