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第6章  罪咎

第30話  悪意

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 エステラと入れ違いで入出した副ギルド長は言う。

「――とても暴君殺しの『星昴せいぼう』とは見えませんね。華奢で普通の娘っ子に思えますよ」

 ギルド長は戒めるように言葉を吐いた。

「そうだな。だが、事実だ。ダンテス様からも気にかけるように王国中のギルドへ指示が飛んだ。大丈夫だとは信じるが、顔には出すなよ」

 赤の暴君ペルスヴァル。エイルミィのダンジョン最奥のゲートキーパーだ。

 その蒼い光から『閃蒼せんそう』と呼ばれたエステラは、今では『星をべる者』として『星昴せいぼう』の二つ名がギルド上層部へ広がっている。

 彼女の矢は流れる星を思わせ、美しく敵を討つ。流星群の瞬きだ。

 レオカディオとガンソの会合の後。その組織はゆっくりとだが、着実に手を繋げていた。

 ギルドに無記名の手紙は届かなくなった。今ではアナザラス一門から正規の書状が届いている。

 今回はダンジョンの無い。王国では聖獣の森と呼ばれる東端が感知地点だ。

 今までに無い動きに出来たばかりの組織も神経をそばだてている。

 ギルド長は嫌な想像を振り払い。工作員とエステラの面会を手配した。

~~~

 ――――二日後

 地下にある堅牢な造りの湿った空間へエステラは案内されるままに来た。

 背後にはクラーラを庇うように隠す。

 心に傷を負う可能性を考慮して、無理に合う事は無いと伝えたが、彼女の意思は強かった。

 頑丈な牢の中に拘束衣で椅子へと括りつけられた男がいる。

 眼の焦点は定まらず、絶えず視線が動いている。目は落ちくぼみ、頬はコケていた。

 接敵したエステラも、今回初めて見る人物だった。

「――っちっ! クソアマかよ。いつもよりダリィー格好させられたと思ったらアンタのせいか」

 男が悪態をつく。この日は念のため普段より厳重に拘束されていた。

「タラリア? ――同一人物?」

 小声でエステラが尋ねる。

(――適合マッチ

 それを聞き彼女はかすかに頷く。そして、強い眼差しで一つの質問をした。

「聞きたい事は一つ。――人口も少ない小さな村のダンジョンへどうしてアレを仕掛けたの?」

 エステラの背後でクラーラが身を竦ませる。村を滅ぼしたあのダンジョンアは戦略的にも意義が薄い。

「あっ? 何処の事だ? まぁ。クスリをくれたら口も滑らかになるかもな。肌の間を虫が這いずっているんだよ。――なぁ。あれは俺んだっ! 早く返せよっ!」

 固定された椅子を軋ませて、男は護衛へ怒鳴り散らす。

 クラーラが父親の形見のペンダントを握り意思を固めて話かけた。

「――私は貴方を許しません」

「んあぁ? 何トンチキこいてんだ? 戦争に許すも流すもなぇぞ。俺は言われた任務をしただけだ。――待てよ……」

 男は嫌らしい顔でクラーラに視線を定め嬉しそうに言う。

「お前がその村の人間か? くっくっくぅぅ。 全滅したって聞いたが生き残りがいたのか。――そいつは良い事を聞いた」

 そして、息をするように悪意を続けた。
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