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第6章  罪咎

第42話  穿光

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 その指示に合わせて一〇枚の光の楯が動き出す。

 不穏を察知して瞬間移動するように動き回るジョシュアさん。

 俺はジョシュアさんに槍杖そうじょうで切りかかる。それにより足を止めさせて楯で囲い込み封ずる。

 距離を取る俺。

 ジョシュアさんは全方位へ衝撃波を連続して引き剥がそうとするが、拘束は解けない。

 俺は落ち着いて狙いを定める。楯ごとジョシュアさんを打ち抜くのだ。

 これなら、消滅させずにいけるかな。

 すると、ジョシュアさんが身体ごと神速移動するシールドバッシュを連発し出した。

 拮抗するが、大きくブレる楯。そして――二枚の光の楯が砕けた。

 開いた隙間から拘束を逃れるジョシュアさん。

 残った八枚の楯も溶けるように消えてゆく。

 おいおい。まさかの時間切れ。タイトロープはとうとう千切れた。

 俺は距離を取りながら考える。一か八かぶっ放すか? それとも代案を用意して再挑戦?

 だが、この『精霊さん』はチャージが終わると何時破裂するか分からない危険な兵器だ。時間は無いぞ。

 どうする?


 ――そこへ緑の蔦が伸びてくる。そして無数のそれらがジョシュアさんに絡みついた。

 いつの間にかモルトがその場に立っている。珍しく厳しい眼差しでジョシュアさんを見ていた。

 ――それモルトがやってくれたの? 真祖の蔦? 何じゃそら!

 ジョシュアさんは脱出を試みているが、柔軟で強靭な蔦はそれを許さない。

 ありがとう。モルト。いつも頼りになるな。そう言えばお前には手を出すなって言ってなかったな。

 へなちょこの俺だけじゃ。この千載一遇の好機は生み出せなかった。

 俺は狙いをつけて『精霊さん』を放出した。

 放たれる。白に近い蒼い光線。と同時に俺の手も吹き飛んだ。

 アンキーレの楯がその衝撃から俺を守る。

 辺りを光に染めて閃光が森を貫いた。

 衝撃で吹き飛ばされる俺。

 光が収まると視界を塞ぐ立ち込める粉塵。

 『精霊さん』が森を貫いた生々しい爪痕が亀裂となって残っている。

 アンキーレの楯も限界を迎え、不安定に上下して何とか浮いていた。

 ジョシュアさんは?



 ――無傷で立っていた。どうやらモルトの拘束から逃れられたらしい。

 命がけの賭けは失敗に終わったようだ。

 神器の楯は限界間近。俺の右手は前腕が無くなっていた。

 そして、動き出すジョシュアさん。


 ――俺は笑う。絶望の中でこそ。

 世界は今日も厳しい。
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