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第6章  罪咎

第51話  宣誓

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 ジョシュアさんの傷が治る切っ掛けを及ぼしたカロは、エルフ的には生命の精霊だ。それを司る何かをしているのだろう。

 俺は落ちていたジョシュアさんの前腕を拾い上げた。その断面は光沢のある鉱石のようだった。それを遺体の元へと運び戻るといいなと思いながら押し当ててみる。

 それは俺の願い通りに復元した。仏様はなるべく綺麗にしないとね。ジョシュアさんなら尚の事だ。

「グスッ。グ。――ありがとうございます」

 少年からお礼を言われる。涙は枯れていないが、だいぶ落ち着いてきたようだ。

 俺は少年に伝えなければいけない事がある。

「悲しみの中すまない。これから言う事をよく覚えていて欲しい。君名前は?」

「グッ。……シルビニオン。グスッ。――と申します」

 ――この状況で。賢くてよく出来た子だな。

「シルビニオン。申し遅れたが俺の名はノア・メートランド。君の父親を殺したのは俺だ。一生恨んでくれていい。君には俺を殺す権利がある。いつでも殺しに来てくれ。もちろん。俺も抵抗するが、君が望むならその機会はいつでも何度でも作る」

 少年に自分の信念を伝える。俺は身内が傷付けられたら報復する。殺されたらやったそいつを殺す。そんな浅ましくも小さい人間だ。

 だから、もし誰かを殺したら殺される覚悟を持っている。眼には眼を歯には歯を。賢王の唱えた理だ。因果応報。自分がしたことの責任を負うのもまた自分であるべきだ。

 もちろん。無抵抗に殺されるつもりも無いが、ジョシュアさんの息子。シルビニオンの仇討ちにはいつでも付き合わなければ気が済まない。

「グスッ。――父は恨むなと。ングッ。言いました。ヒック。……恨む事は。グスッ――父の遺志を穢します。ヒック。……父は意思をもってそれを選んだのです。――自分の志を守る為に」

「――シルビニオン。君はまだ幼い。これから起こる。困難や不満は全て俺の所為だ。溜め込まなくていいんだ。ぶつける相手を作ったほうがいい」

 この子の情操の為にも負の感情をぶつける相手は必要だろう。
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