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第6章  罪咎

第63話  炊出

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 クラーラから大先生呼びが飛び出して、面食らったノアは過去の振舞いを後悔した。

(ケンちゃんとしか大先生は使っていない筈なのに、何処から感染したんだか)

 紹介が終わるとゴブリンの集落にいることにクラーラが眼を丸くする。不安そうな挙動をするがエステラが声をかけると直ぐに落ち着いた。

 ノアから作る料理の説明があり、分担して早速調理にかかる。

 上機嫌で料理を始めるノアを流し見てエステラは嘆息した。

 いつも以上にテンション高く振舞っているが、その実落ち込んでいるのが、彼女には手に取るように分かる。

 ノアはなんでも一人で出来る。出来てしまう。だから、いつも感情を一人で抱え込む。信頼を得てその心の内に入れて貰えるように、弱音を吐ける相手になれるように彼女は小さく気合を入れた。





 俺は料理を始める前に、まず、日除け代わりの大きなタープを設置し、衝立とテーブルを準備した。

 そして、業務用炊き釜の魔道具を一基。釜が40cm程で五升焚きだ。一人一合として五〇人分を焚き上げる。

 低床の魔道コンロを二基用意し寸胴鍋も二つ用意した。あとは腰の高さの業務用ロースターを取り出して設営の完了だ。

 二人には大量の食材を渡し、炊き込みご飯とキノコ鍋を準備してもらった。俺は一番時間がかかる丸鳥の蜂蜜酒ミード焼きを始める。といっても下準備済みだから、後は業務用オーブンで焼くだけだ。

 下準備は蜂蜜薬草酒ミードネクター。これは蜂蜜酒ミードに香草を入れたものだ。それに塩揉みした丸鳥を一晩漬け込む。

 詰め物はセロリ、ニンジン、タマネギ、リンゴ。それを粗いザク切りにして、しんなりするまで炒める。決め手はスタッフィング。揚げる前のクルトンと言えばイメージしやすいかな。サイコロ状に切ったパンをカリッと乾燥させたものだ。野菜とそれを1:2の分量で混ぜ合わせて、バターとコンソメスープを少量加えたものを腹に詰める。スタッフィングが身から出るエキスを吸い取って悪魔的な旨さになるぞ。

 業務用オーブンを取り出し二五〇度に予熱開始。途中三度ほど落ちた脂を流しかけ、一時間かけて焼き上げる予定だ。

 上げ底の網付きバットに載せて、一〇羽分を用意した。

 単体でも美味いが、味変のソースも用意しよう。詰め物と同じ野菜を飴色になるまで炒めて、コンソメを足す。それにセロリの葉を千切っていれ、ローズマリーも追加する。そして、これもオーブンへぶち込む。作っているのはグレイビーソースだ。

 そこまで終えて、残りの手順を頭で確認する。
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