335 / 403
第6章 罪咎
第75話 満腹
しおりを挟む
エステラが調理を始めるとダイニングを満たす幸せな香り。
クラーラはソファーから首がねじ切れるほど振り返りスンスンと鼻を鳴らす。
「はぁ。――今日も美味しい匂いが。たまらん。溺れる。よだれが洪水のように」
……朝からこの娘。元気だな。
クラーラと当たり障りのない会話を続けていると、お待たせと言ってエステラがトレーで配膳してくれた。
ダイニングテーブルには、サイコロ状にカットされ、両面をキツネ色に香ばしくソテーされた料理が置かれる。付け合わせには切り込みの入ったウィンナーとニンジンのグラッセ。ボイルしたブロッコリーが彩りを添えていた。
「塩フレンチトーストとシチューにサラダ。足らなかったら言ってね。お代わりはいくらでもあるから」
彼女はグラスにオレンジジュースを注ぎながらそう説明した。シチューはゴロッとした野菜がいかにも旨そうだ。サラダもバランスよく盛り付けられており、オレンジ色のドレッシングが食欲をそそる。
「きゃぁー。綺麗。いい匂い。初めて見るけど、これ好きぃ。分かる。あたしの鼻は誤魔化せない。美味しいの決定!」
両手の平をくるくると擦り合わせて、少女は叫んだ。
クラーラさんや。鼻で味が分かるのかい。匂いからして旨いのは同意だが。
早速頂くとしよう。全員が席に着くのを待っていつもの言葉を口にする。
「いただきます」
まずは塩フレンチトーストから、口に含むと香ばしさと濃厚なバターの風味が広がり焼き目はパリッとした舌触りだ。それでいて噛むとトロッとしてほどけるように玉子とパンが旨さを畳みかけてくる。
その旨さを楽しんでいると気付く。そうだ。そういう事だ。俺は直ぐにシチューを掬い口へと運んだ。オーソドックスなザ・シチュー。だが、塩フレンチトーストの濃厚さを完璧に受け止めてくれる。いや。それ以上だ二つを合わせて初めて完成する料理のようだ。
「美味しいぃ。パンに蜂蜜をかけると。甘いのしょっぱいのの連続で、いくらでも食べれそう」
クラーラは塩フレンチトーストへ蜂蜜をかけて食べていた。甘いだけだと飽きがちなフレンチトーストを味変で楽しむ料理だ。俺はブラックペッパーを振りかけてウィンナーと一緒に食べた。最後の一つだけ蜂蜜をかける。甘じょっぱくてそれもまた良しだね。
この料理は俺のレシピではない。エステラのオリジナルだろう。そりゃ。師匠と呼ばれなくなるのも納得だ。その腕は確実に俺より上。
無くなると同時にエステラが新たな塩フレンチトーストを用意してくれた。俺はそれをシチューに浸して食べるのだ。満足するまでお代わりをした。
◇
エステラにメッセンジャーをお願いしたところ、シェリルさんから訪問の許しをもらった。
クラーラはソファーから首がねじ切れるほど振り返りスンスンと鼻を鳴らす。
「はぁ。――今日も美味しい匂いが。たまらん。溺れる。よだれが洪水のように」
……朝からこの娘。元気だな。
クラーラと当たり障りのない会話を続けていると、お待たせと言ってエステラがトレーで配膳してくれた。
ダイニングテーブルには、サイコロ状にカットされ、両面をキツネ色に香ばしくソテーされた料理が置かれる。付け合わせには切り込みの入ったウィンナーとニンジンのグラッセ。ボイルしたブロッコリーが彩りを添えていた。
「塩フレンチトーストとシチューにサラダ。足らなかったら言ってね。お代わりはいくらでもあるから」
彼女はグラスにオレンジジュースを注ぎながらそう説明した。シチューはゴロッとした野菜がいかにも旨そうだ。サラダもバランスよく盛り付けられており、オレンジ色のドレッシングが食欲をそそる。
「きゃぁー。綺麗。いい匂い。初めて見るけど、これ好きぃ。分かる。あたしの鼻は誤魔化せない。美味しいの決定!」
両手の平をくるくると擦り合わせて、少女は叫んだ。
クラーラさんや。鼻で味が分かるのかい。匂いからして旨いのは同意だが。
早速頂くとしよう。全員が席に着くのを待っていつもの言葉を口にする。
「いただきます」
まずは塩フレンチトーストから、口に含むと香ばしさと濃厚なバターの風味が広がり焼き目はパリッとした舌触りだ。それでいて噛むとトロッとしてほどけるように玉子とパンが旨さを畳みかけてくる。
その旨さを楽しんでいると気付く。そうだ。そういう事だ。俺は直ぐにシチューを掬い口へと運んだ。オーソドックスなザ・シチュー。だが、塩フレンチトーストの濃厚さを完璧に受け止めてくれる。いや。それ以上だ二つを合わせて初めて完成する料理のようだ。
「美味しいぃ。パンに蜂蜜をかけると。甘いのしょっぱいのの連続で、いくらでも食べれそう」
クラーラは塩フレンチトーストへ蜂蜜をかけて食べていた。甘いだけだと飽きがちなフレンチトーストを味変で楽しむ料理だ。俺はブラックペッパーを振りかけてウィンナーと一緒に食べた。最後の一つだけ蜂蜜をかける。甘じょっぱくてそれもまた良しだね。
この料理は俺のレシピではない。エステラのオリジナルだろう。そりゃ。師匠と呼ばれなくなるのも納得だ。その腕は確実に俺より上。
無くなると同時にエステラが新たな塩フレンチトーストを用意してくれた。俺はそれをシチューに浸して食べるのだ。満足するまでお代わりをした。
◇
エステラにメッセンジャーをお願いしたところ、シェリルさんから訪問の許しをもらった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,582
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる