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第6章 罪咎
第83話 料理
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俺の遡りの旅は順調にすすむ。
~~~
――夜
エステラが食事の準備をしている。クラーラもそれを手伝い、日はとっぷりと暮れていた。灯り取りのキャンプファイヤーの魔道具が仄かに夜を染め上げている。
モルトが火の周りでチャムとカロと追いかけっこをしている。ルールは分からないが、鬼が目まぐるしく代わりラー♪の歓声が切り替わりの合図だ。不規則に近づいたり離れたりする姿は……鬼ごっこというより、マイムマイムに見えるな。。。
少し離れた場所から聞こえる、彼女達二人の楽し気な声をBGMに満天の夜空を仰ぎ見た。雲は流れ、煌めく星に手が届きそうだ。前回は見上げる発想もなかったっけ、エステラは直ぐに界域異空に入ろうとするが、風の匂いを感じる野外での食事が旅の醍醐味というものだよ。
おっ! どうやら料理が出来たようだ。
「――おまたせ。今日は揚げピザとミネストローネ。それとサラダピンチョス。お代わりもあるよ」
キャンプファイヤーな灯りに向いて据えられた四角いテーブルに料理が配膳された。俺はその正面に座り、左にエステラ、右にクラーラとコの字型に席に着いた。
半円に閉じられたピザがこんがりと揚げられよい香りを放つ。ミネストローネには玉ネギ、ニンジンとゴブリンの村産のベーコンが入れられていた。
サラダピンチョスは先端が厚めのチーズで、その下にハムが配置されいる。そして、薄く帯状にスライスした大根、ニンジン、キュウリが中心で留められてリボンのようだ。互い違いに配置されたそれらは、華やかで可愛らしくエステラの粋が感じられた。最後には真っ赤なミニトマト彩りを添える見た目にも鮮やかな一品だ。
「――今日は。ノアから教えてもらった料理を初めてアレンジした記念日。王都のみんなも同じ物を食べているよ。きっと」
そうか、あの日か。遠くの仲間も同じ物を食べていると思うと感慨深いな。俺はそれに早速かぶりつく。
「サクサクで熱々、最高だ!」
美味しい物には感謝を伝えないとね。ミネストローネも滋味に溢れ美味い。そしてピンチョス。一口で食べると素材の風味が混ざり合って格別だ。それに――
「旨い! ミニトマトの酸味と塩気が味を引き締める。――漬けたのか?」
「――ん!」
塩漬けにされたミニトマトがドレッシングの役割だ。立て続けに三本をペロリ。俺が生み出した野菜がちゃんと料理されて、予期せぬ調理法で提供された。
――感無量だ。初めは変な顔をされた真っ赤な食材が、しっかりと理を料り、こんなにも美味しく素晴らしい物へと昇華した。何よりこの世界の食文化になったのが格段に嬉しい。
「ありがとう。エステラ」
万感の思いも込めて俺はそう伝えた。
「――ん!」
今日もお腹いっぱい食事を楽しんだ。
◇
――数日後
とうとうやって来ました。危険と噂の森まで。遠くに霞みながら広がっているのが見えてくる。
~~~
――夜
エステラが食事の準備をしている。クラーラもそれを手伝い、日はとっぷりと暮れていた。灯り取りのキャンプファイヤーの魔道具が仄かに夜を染め上げている。
モルトが火の周りでチャムとカロと追いかけっこをしている。ルールは分からないが、鬼が目まぐるしく代わりラー♪の歓声が切り替わりの合図だ。不規則に近づいたり離れたりする姿は……鬼ごっこというより、マイムマイムに見えるな。。。
少し離れた場所から聞こえる、彼女達二人の楽し気な声をBGMに満天の夜空を仰ぎ見た。雲は流れ、煌めく星に手が届きそうだ。前回は見上げる発想もなかったっけ、エステラは直ぐに界域異空に入ろうとするが、風の匂いを感じる野外での食事が旅の醍醐味というものだよ。
おっ! どうやら料理が出来たようだ。
「――おまたせ。今日は揚げピザとミネストローネ。それとサラダピンチョス。お代わりもあるよ」
キャンプファイヤーな灯りに向いて据えられた四角いテーブルに料理が配膳された。俺はその正面に座り、左にエステラ、右にクラーラとコの字型に席に着いた。
半円に閉じられたピザがこんがりと揚げられよい香りを放つ。ミネストローネには玉ネギ、ニンジンとゴブリンの村産のベーコンが入れられていた。
サラダピンチョスは先端が厚めのチーズで、その下にハムが配置されいる。そして、薄く帯状にスライスした大根、ニンジン、キュウリが中心で留められてリボンのようだ。互い違いに配置されたそれらは、華やかで可愛らしくエステラの粋が感じられた。最後には真っ赤なミニトマト彩りを添える見た目にも鮮やかな一品だ。
「――今日は。ノアから教えてもらった料理を初めてアレンジした記念日。王都のみんなも同じ物を食べているよ。きっと」
そうか、あの日か。遠くの仲間も同じ物を食べていると思うと感慨深いな。俺はそれに早速かぶりつく。
「サクサクで熱々、最高だ!」
美味しい物には感謝を伝えないとね。ミネストローネも滋味に溢れ美味い。そしてピンチョス。一口で食べると素材の風味が混ざり合って格別だ。それに――
「旨い! ミニトマトの酸味と塩気が味を引き締める。――漬けたのか?」
「――ん!」
塩漬けにされたミニトマトがドレッシングの役割だ。立て続けに三本をペロリ。俺が生み出した野菜がちゃんと料理されて、予期せぬ調理法で提供された。
――感無量だ。初めは変な顔をされた真っ赤な食材が、しっかりと理を料り、こんなにも美味しく素晴らしい物へと昇華した。何よりこの世界の食文化になったのが格段に嬉しい。
「ありがとう。エステラ」
万感の思いも込めて俺はそう伝えた。
「――ん!」
今日もお腹いっぱい食事を楽しんだ。
◇
――数日後
とうとうやって来ました。危険と噂の森まで。遠くに霞みながら広がっているのが見えてくる。
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