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第7章 獄窟
第18話 拉致
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透徹の魔道師。そう呼ばれた宮廷魔導師がいた。極彩にして無色。七種の魔法を息をするように用いて、彩りを世界に描く。その無色で変幻の魔法は、困難な路を貫き切り開いた。
レオカディオの魔法の師であり、パオラの炎魔法の才能を焔術にまで導いた人物だ。
彼の者の姿は王都に、今はない。一〇年前に起きた帝国からの侵攻の折り指揮を振るっていた大公を庇い両親が戦死し辺境都市へと戻っていった為である。
辺境都市の名はディンケスル。災厄のダンジョンを抑え、帝国ににらみを利かす王国の要だ。
◇
俺は声をかけられた。
「おい。ノア。一杯付き合えよ」
そう話しかけてきたのはオリヴェルさん。よくちょっか……気にかけてくれる。
「呑み過ぎるとティルダさんに言いつけますよ。シェスティの方がいいですか?」
オリヴェルさんはギョっとした顔で言う。ティルダさんは彼の歳の離れた奥さんで完全に尻に敷かれている。シェスティは娘さんで、おしゃまな彼女には、小さな妹ができた。
彼女たちはノルトライブに住んでいるので、オリヴェルさんは夜が寂しいのかな?
「どっちも勘弁だな。奢ってやるから付き合えよ。なぁ?」
そう言って肩をロックされる。二〇歳を超えたので俺も酒を嗜むようになった。
「パオラさん。エステラ。どうする?」
「あたしはパス。マスターに報告に行くからいって来たらいいよ」
そうパオラさんが、楽しそうにこちらを見つめて言った。
「私も――クランでララの手伝いをする」
「……なら、俺も――」
「――ダメだ。バカたれ! この間言っただろう? 今日は大事な日だ。黙ってついて来い!」
肩の力が強くなる。――もう、これ拉致だな。内心ため息をついた。
この街に来て一年とちょっと。なんやかんやあって今のクランに所属している。
レオカディオの魔法の師であり、パオラの炎魔法の才能を焔術にまで導いた人物だ。
彼の者の姿は王都に、今はない。一〇年前に起きた帝国からの侵攻の折り指揮を振るっていた大公を庇い両親が戦死し辺境都市へと戻っていった為である。
辺境都市の名はディンケスル。災厄のダンジョンを抑え、帝国ににらみを利かす王国の要だ。
◇
俺は声をかけられた。
「おい。ノア。一杯付き合えよ」
そう話しかけてきたのはオリヴェルさん。よくちょっか……気にかけてくれる。
「呑み過ぎるとティルダさんに言いつけますよ。シェスティの方がいいですか?」
オリヴェルさんはギョっとした顔で言う。ティルダさんは彼の歳の離れた奥さんで完全に尻に敷かれている。シェスティは娘さんで、おしゃまな彼女には、小さな妹ができた。
彼女たちはノルトライブに住んでいるので、オリヴェルさんは夜が寂しいのかな?
「どっちも勘弁だな。奢ってやるから付き合えよ。なぁ?」
そう言って肩をロックされる。二〇歳を超えたので俺も酒を嗜むようになった。
「パオラさん。エステラ。どうする?」
「あたしはパス。マスターに報告に行くからいって来たらいいよ」
そうパオラさんが、楽しそうにこちらを見つめて言った。
「私も――クランでララの手伝いをする」
「……なら、俺も――」
「――ダメだ。バカたれ! この間言っただろう? 今日は大事な日だ。黙ってついて来い!」
肩の力が強くなる。――もう、これ拉致だな。内心ため息をついた。
この街に来て一年とちょっと。なんやかんやあって今のクランに所属している。
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