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第7章  獄窟

第19話  面倒

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 クランとは互助会? みたいな組織だ。上納金もあるので俺は一人でもよかったが、ダンジョンに入っているときのクラーラの務め先、兼安全の確保と何よりレオさんからのお願いで所属を決めた。

 尤も、ひねくれ者の俺はいつでも離脱できる条件を契約に組み込んでもらった。諸々の柵への対策だ。今では案外、気安い場所になった。

 クラン所属のメンバーは宿舎も用意されるが、俺は秘匿性の高いあれやこれやを研究する為に、近場の一軒家を借りて当たり前のように魔改造して住んでいる。

 クラーラはクランメンバーの食事担当としてコック長をしている。胃袋をガッチリつかまれたメンバーは逆らえない人物筆頭に彼女の名を上げるようになった。

 俺の及び腰を悟ったオリヴェルさんは、逃がすつもりはないといい笑顔になる。俺を引きずるように歓楽街へと連行していった。


§


「――小僧ども。道具の管理はしっかりしろよ! 研ぎの甘い剣で命を落とすのはバカのやることだ。週に一度はボトヴィットに確認してもらえ」

 壮年の男は腕を組んでクランに所属するC級に指導する。

「分かっているよ。用具係ポペイロさん。先輩からも言われているから耳タコだよ」

(まったく。他のクランだと。用具係ポペイロが世話してくれるのにここは口ばっかだね)

 まだ若い冒険者は、顔を背けて見えないように舌をだすと、ひっそりとため息を吐いた。

 用具係ポペイロとはクランのメンバーを補佐する者のことだ。ポーションの備蓄管理。防具の補修。武器のメンテナンスなど多岐に渡る。

 だが、ノアの所属する用具係ポペイロは違った。口は出すが手は出さない。

 クランの方針なので仕方がないが、隣の芝は青いのだ。

「――あれ? バリーさん。オリヴェルさんと約束があるって言っていませんでしたか?」

 通りかかった女性スタッフが用務員にそう話しかた。

「……あっ? そうだった。……チッ――――行くの面倒だな」

 男は吐き捨てるようにそう言い放つ。

「……」

 音に響く今代の英雄。護傘の誘いを面倒という理由でぶっちぎろうとする人物にスタッフは言葉を無くし、暫し見つめた。
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