384 / 403
第7章 獄窟
第19話 面倒
しおりを挟む
クランとは互助会? みたいな組織だ。上納金もあるので俺は一人でもよかったが、ダンジョンに入っているときのクラーラの務め先、兼安全の確保と何よりレオさんからのお願いで所属を決めた。
尤も、ひねくれ者の俺はいつでも離脱できる条件を契約に組み込んでもらった。諸々の柵への対策だ。今では案外、気安い場所になった。
クラン所属のメンバーは宿舎も用意されるが、俺は秘匿性の高いあれやこれやを研究する為に、近場の一軒家を借りて当たり前のように魔改造して住んでいる。
クラーラはクランメンバーの食事担当としてコック長をしている。胃袋をガッチリつかまれたメンバーは逆らえない人物筆頭に彼女の名を上げるようになった。
俺の及び腰を悟ったオリヴェルさんは、逃がすつもりはないといい笑顔になる。俺を引きずるように歓楽街へと連行していった。
§
「――小僧ども。道具の管理はしっかりしろよ! 研ぎの甘い剣で命を落とすのはバカのやることだ。週に一度はボトヴィットに確認してもらえ」
壮年の男は腕を組んでクランに所属するC級に指導する。
「分かっているよ。用具係さん。先輩からも言われているから耳タコだよ」
(まったく。他のクランだと。用具係が世話してくれるのにここは口ばっかだね)
まだ若い冒険者は、顔を背けて見えないように舌をだすと、ひっそりとため息を吐いた。
用具係とはクランのメンバーを補佐する者のことだ。ポーションの備蓄管理。防具の補修。武器のメンテナンスなど多岐に渡る。
だが、ノアの所属する用具係は違った。口は出すが手は出さない。
クランの方針なので仕方がないが、隣の芝は青いのだ。
「――あれ? バリーさん。オリヴェルさんと約束があるって言っていませんでしたか?」
通りかかった女性スタッフが用務員にそう話しかた。
「……あっ? そうだった。……チッ――――行くの面倒だな」
男は吐き捨てるようにそう言い放つ。
「……」
音に響く今代の英雄。護傘の誘いを面倒という理由でぶっちぎろうとする人物にスタッフは言葉を無くし、暫し見つめた。
尤も、ひねくれ者の俺はいつでも離脱できる条件を契約に組み込んでもらった。諸々の柵への対策だ。今では案外、気安い場所になった。
クラン所属のメンバーは宿舎も用意されるが、俺は秘匿性の高いあれやこれやを研究する為に、近場の一軒家を借りて当たり前のように魔改造して住んでいる。
クラーラはクランメンバーの食事担当としてコック長をしている。胃袋をガッチリつかまれたメンバーは逆らえない人物筆頭に彼女の名を上げるようになった。
俺の及び腰を悟ったオリヴェルさんは、逃がすつもりはないといい笑顔になる。俺を引きずるように歓楽街へと連行していった。
§
「――小僧ども。道具の管理はしっかりしろよ! 研ぎの甘い剣で命を落とすのはバカのやることだ。週に一度はボトヴィットに確認してもらえ」
壮年の男は腕を組んでクランに所属するC級に指導する。
「分かっているよ。用具係さん。先輩からも言われているから耳タコだよ」
(まったく。他のクランだと。用具係が世話してくれるのにここは口ばっかだね)
まだ若い冒険者は、顔を背けて見えないように舌をだすと、ひっそりとため息を吐いた。
用具係とはクランのメンバーを補佐する者のことだ。ポーションの備蓄管理。防具の補修。武器のメンテナンスなど多岐に渡る。
だが、ノアの所属する用具係は違った。口は出すが手は出さない。
クランの方針なので仕方がないが、隣の芝は青いのだ。
「――あれ? バリーさん。オリヴェルさんと約束があるって言っていませんでしたか?」
通りかかった女性スタッフが用務員にそう話しかた。
「……あっ? そうだった。……チッ――――行くの面倒だな」
男は吐き捨てるようにそう言い放つ。
「……」
音に響く今代の英雄。護傘の誘いを面倒という理由でぶっちぎろうとする人物にスタッフは言葉を無くし、暫し見つめた。
0
あなたにおすすめの小説
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界チートレイザー
はくら(仮名)
ファンタジー
※本作は別名義で『小説家になろう』にも投稿しています。
これは【サトリ】と呼ばれ忌み嫌われた少女と、異世界に召喚されチート能力を無効化する【チートレイザー】の力を与えられた少年の、捻じ曲げられた運命を切り開く物語である。
※今後も各種名称・設定の一部などを、諸事情により予告なく変更する可能性があります。なにとぞご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる