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第7章 獄窟
第20話 宿縁
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バリーと呼ばれた男は、本当に面倒くさそうにクランホームを出て行った。
§
「――ノア。今日は固めの杯だ。兄貴が来るまで肴をつまんで待ってな。乾杯は三人が揃ってからだ」
「師匠のおっさんが来るんですか? なんだか、嫌がっていたような?」
「フフフ。――将を射んとするなら、なんとやらだ。姐さんを口説いた」
「あぁ。クラーラのスィーツですか?」
「そうそう。――――おっと! どうやら来たようだ。兄っ――」
その声を封じる為にバリーから覇気と睨みが発動する、それを受けてオリヴェルが、グッと押し黙る。
「……バリーさん。ご足労ありがとうございます」
オリヴェルはそっと機嫌を伺うようにそう礼を言った。
バリーは躰を投げ出しドカりとスツールへ腰かける。
「お疲れさまっす。バリーさん(笑)」
バリーは揶揄うようにそう言ったノアを一睨みすると鼻を鳴らす。
「――さっさと始めろ。そして直ぐに終わらせるぞ」
オリヴェルは嬉しそうに酒を注文した。
古い馴染みも多いこの場所で、バリーはなるべく知り合いと顔を合わせないように、クランホーム内から出ずにいた。
そして、ここまでついて来てくれた嫁の住む家との往復生活をしている。
単身赴任を伝えた妻は曰く。もう直ぐ迎えが来てもおかしくないじーさま一人で行かせられませんよとのたもうた。
彼の歳はまだ五〇代。じーさん呼ばわりは釈然としないが、それも照れ隠しかと文句を押しつぶした。
王都には息子を治療してもらった恩がある。姫の護衛でエルフの里へ彼を派遣しようと画策した、王と大公は、辺境都市を目指した彼女の護衛に最強の剣士を遣わした。
尤も一緒に冒険者としてダンジョンに潜ることはなく。不測の事態に最速で援助することが、その任務だ。
用具係は暇つぶし、後進の指導にもあたるが、武芸百般の達人でありクランの熟練になればなるほど、彼を知らずとも、その佇まいで一目を置かれている。
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「――ノア。今日は固めの杯だ。兄貴が来るまで肴をつまんで待ってな。乾杯は三人が揃ってからだ」
「師匠のおっさんが来るんですか? なんだか、嫌がっていたような?」
「フフフ。――将を射んとするなら、なんとやらだ。姐さんを口説いた」
「あぁ。クラーラのスィーツですか?」
「そうそう。――――おっと! どうやら来たようだ。兄っ――」
その声を封じる為にバリーから覇気と睨みが発動する、それを受けてオリヴェルが、グッと押し黙る。
「……バリーさん。ご足労ありがとうございます」
オリヴェルはそっと機嫌を伺うようにそう礼を言った。
バリーは躰を投げ出しドカりとスツールへ腰かける。
「お疲れさまっす。バリーさん(笑)」
バリーは揶揄うようにそう言ったノアを一睨みすると鼻を鳴らす。
「――さっさと始めろ。そして直ぐに終わらせるぞ」
オリヴェルは嬉しそうに酒を注文した。
古い馴染みも多いこの場所で、バリーはなるべく知り合いと顔を合わせないように、クランホーム内から出ずにいた。
そして、ここまでついて来てくれた嫁の住む家との往復生活をしている。
単身赴任を伝えた妻は曰く。もう直ぐ迎えが来てもおかしくないじーさま一人で行かせられませんよとのたもうた。
彼の歳はまだ五〇代。じーさん呼ばわりは釈然としないが、それも照れ隠しかと文句を押しつぶした。
王都には息子を治療してもらった恩がある。姫の護衛でエルフの里へ彼を派遣しようと画策した、王と大公は、辺境都市を目指した彼女の護衛に最強の剣士を遣わした。
尤も一緒に冒険者としてダンジョンに潜ることはなく。不測の事態に最速で援助することが、その任務だ。
用具係は暇つぶし、後進の指導にもあたるが、武芸百般の達人でありクランの熟練になればなるほど、彼を知らずとも、その佇まいで一目を置かれている。
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