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第7章  獄窟

第28話  嫌悪

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 無くしたくない場所を得て、少年は知った。人は切られた腕が生えては、こないことを、死んだ人間は生き返らない事を。

 自分は何だ? 人の形をした何かだ。化け物の自分はそれを隠して、人に擬態ぎたいしなければいけない。

 でなければ……。

 キラキラと眩しい程の魂で自分を引き上げてくれた恩人に裏切りの秘密をひそめる。人の振りをしてその優しさに付けこむ自分に嫌悪した。

 だから。――――だからこそ。その恩には敬虔けいけんに応えようと心を据える。

 少年は知らない。想像出来ない。自分の常識の中でしか、もし、その事をノアに伝えたらすごい才能だと褒めこそすれ嫌悪する事は無かった。

 むしろ無茶はするなといさめただろう。

 この時に何かが掛け違えられた。





「坊主。クランの練習場は貸し切りにしといたぞ」

 そうバリーさん(笑)が俺に告げた。

「――――バリーさん(笑)。今日こそは、一本いかせてもらいますよ」

「――そうかい? 今日の得物は何にする」

 俺の主な戦い方は、楯と槍の基本形。一番得意なじょう。そして、目下練習中の太刀だ。

 何しろあの朱色の太刀。反則級になんでも切れる。そりゃあもう。スッパスパ。逆に腕が鈍るんじゃないかと使用を制限している位だからね。

 だから、普段使うのはボトヴィットさんに打ってもらった太刀だ。

 この場の見学者は二人。一応パーティ扱いのパオラさんとエステラだ。尤も俺は一人で行動して、彼女達二人が一緒に行動することが多い。

 だってさ、俺ってば器用で貧乏だからね。

 でもやはりじょうでバリーさん(笑)から一本取りたい。今だに俺は世界の深さを思い知らされる日々を送っているた。

 俺が強くなるとそれに合わせるように相手も強くなる。つまり、いつまでも手加減されているということ。

 悔しいがそれが俺の実力と納得し精進に努めよう。

「それじゃあ。一手御指南!」

 俺はじょうを手に最強の相手と対峙した。
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