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第7章  獄窟

第33話  観農

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 希望した孤児達に与える農地開墾に活躍したのが、水素還元循環エンジン起動のトラだった。立てられた計画の下に粛々と作業を続け圃場を広げていった。

 ノアの訪問に気付いたエーギルは朗らかに声をかける。

「こんにちは。ノアさん。エステラさん。視察ですか?」

「えぇ。順調のようですね」

「はい。食料の生産自給率は都市内消費を上回りました。輸出量も確保できるほどですよ。ノアさんのおかげです」

「私は何も、全てはトラのおかげですかね」

 そう彼が応えると、エーギルは目じりを下げて本心を隠す。誰のおかげかを良く知るが故に。

「辺境都市の経済状況も数年で上向きになるでしょうね」

 エーギルはそう言って眩しそうに、その首謀者を見つめた。

「それは何よりです。となると、都市へ債権で出資すれば見返りも多いかな? 一度提案してみるか……」

「――都市への出資ですか?」

「えぇ。今は火の車は、……言い過ぎですがカツカツみたいですからね。今代の辺境伯様はまだ未成人だそうですが後見人がいらっしゃるでしょう?」

「えぇ。王民事業体のディンケスル支所を立ち上げる時にご挨拶に上がりました」

「王民事業体だと国王の影響がでますから、国債。――じゃなかった都市債でも発行してもらうように提案してみましょう。仕組みを簡単に説明します。5%以上の利回りにすれば、みんなこぞって購入するでしょう。――」

「――そうすれば、あの人の無茶も少しは収まるかね?」

 パオラさんも安心できるといいんだけど、と漏れた小さな心の声はエステラにしか拾えなかった。


§


 ――――王都

 レオカディオは王民事業体イーディセルの執務室で報告書に眼を通していた。

 それは、各地での食品自給率の表だ。右肩上がりのグラフは大台を突破し、既に王国は食料輸出国である事実を示している。

 ノアが提案した通り、今では植物油の産油国として外貨を稼ぎ。その絞り粕はたい肥となって循環する。

 各都市には錬金術士による化成肥料工場が設置され、有機と無機の肥料による野菜の増産が行われていた。
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