星剣使いの剣聖は旅を終えない

猫又 ロイ

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第1章 〈地下世界〉編

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 広場のような場所だった。地面はしっかりと石畳で整備されている。
 ただ、劣化により至る所にひび割れは生じていたが。

 その奥には無数の建物がひしめき合っていた。石造りの建物は、道同様にほとんど倒壊していたりと欠けてはいるが、それが建物であったことは分かるほどには残っている。
 広場から3方向へと真っすぐに道が伸びており、その通りの左右に建物が並ぶ。

 そして、上を見上げれば土の天井が広がっている。当然、太陽の光など届かないのだが……視界は十分、地上と同じように見えていた。
 どうやってか階段のようなカンテラの灯りを用いることなく、辺りを照らしている。

 それもまた、祖先たちの高度な技術によって成されているのだ。
 確か、空間魔法と光魔法を組み合わせたものだと、ウォルトは聞いている。

 いつ見ても、不思議な光景であった。

 広場には、他にも2組の探索者たちがいた。
 他にも、木造の露店らしき建物が数ヵ所あり、そのうち1つでもう一度カードを見せる。

「はい、ありがとうございます。ウォルトリアムさんとコッタさんは、今回はどのくらい潜る予定でしょうか?」

 こちらも顔馴染みのギルド員である男が、2人に親し気に話しかける。
 どのくらいの期間探索するかという質問に、ウォルトが答えた。

「1週間を予定している。早くなることはあるが、それ以上にはならないと思う」

 これは探索前の確認事項で、仮に告げた予定を大きく超過したりすると、何かあったとして捜索依頼が出されるという仕組みになっている。

「かしこまりました。では、お気をつけて」
「あぁ」
「うん! まったね~!」

 巨大なメイスを左手に持ち、右手をぶんぶん振るコッタに、ギルド員もにこやかに手を振り返した。

 広場から、向かって右側の通路が今回の2人の探索範囲だ。
 ただ、広場周辺はさすがに他の探索者の手が行き届いている為、特に何かをすることなく足早に通り過ぎる。

 暫く道に沿って歩き、右に左に曲がりつつ進んでいく。
 そして、前回の探索で拠点とした建物まで辿り着いた。

 ウォルトが鞄から地図を取り出す。現在地の建物には、「教会」と書き込まれている。
 これは中に祭壇さいだんのような場所と、その正面に無数のベンチらしきものが並んでいたことから判断された。今も昔も、内装の配置などはあまり変わっていないらしい。

 ただ、現代では失われてしまった文化もある為、そういった場所は入念に調べて学者へと報告することになっている。
 そこから更に情報を得たいとなった場合、別日に探索者を護衛に雇って調査に訪れることもあった。

 この場所は後日に調査が入ることが決定したので、今回は改めて周囲の安全を確認しつつ、その先を探索するのが目的だ。

「予定通り、今日はここを拠点として、明日から先に進むぞ」
「おっけ~!」

 荷物を下した2人は、野営の準備を始める。ウォルトがテントを組み立てる間、コッタは小さな箱を4つ手に建物の隅へと向かった。
 外柱の前に立つと、箱の底にあるつまみをひねる。それを地面へと置いた。それを4か所。

 これも探索で得られた古代の魔道具で、人間には何も感じ取れないが、怪物クリーチャーには不快な力が感じられるらしい。怪物クリーチャー避けとして、高値で売買されている。
 探索者には必須ともいえるので、高くてもほとんどの探索者は購入していた。

 しかし、この魔道具の動力源は、怪物から得られる「魔水晶」と呼ばれる物が使われている。魔水晶は今のところ怪物クリーチャーからしか得られないので、使える数は少ない。
 消耗品で、魔水晶1つで1日ほどしか魔道具を稼働かどうできないのも課題となっている。

 学者曰く、この魔水晶を創る工房のような場所があるはずらしく、発見者には多額の報酬が出るそうだ。
 ウォルトとコッタは、今のところ、そっちを探す予定はないが。

 テントも張り終え、さっそく周囲の探索へと向かう。
 教会の周りは一般的な平民の家屋らしく、しかし、地上で見るものと違い、ほとんど同じ造りをしている。ほぼ正方形になっており、それが整然と並んでいた。
 区画整理のし易い造りで、学者も「それを基準にして造っているのだろう」という話だ。

 内装も大体同じになっており、それらはもう調査対象にはならない。

 が、そこにある魔道具には価値がある。
 一般的に普及していたらしい魔道具の数々は、現代では垂涎すいぜんもの。

 例えば、食材を冷蔵保存しておける箱。
 例えば、火を使わず鍋を温める台。
 例えば、どこかの映像を映し出す板。

 それが多くの家屋から一定数見つかっており、そのうち未だ使える物は少なくなるが、それでも数百は回収されていた。
 トーノ村にある魔道具工房では、それらを分解・解析に精を出しているが、現代の技術で再現するには途方もない時間がかかる。
 それでも過去の超技術を修理するくらいはできる為、トーノ村の魔道具士はかなり優秀だとウォルトは思っている。

 現代の魔道具界隈は成長に歯止めがかかり、100年ほど同じような造りの魔道具しか作られていない。
 そこに過去の超技術が入り込めば、その市場は大騒ぎとなるだろう。

 そのため、ここの魔道具はトーノ村がある小国から出すことは禁止されていた。
 もちろん、現段階ではあるが。

「この辺はもうな~んもないね~!」
「そうだな」

 一軒ずつ家屋を回りながら、安全を確認していくウォルトとコッタ。
 魔道具含め探索済みの区画に、コッタは退屈そうにメイスの先をグルグルと振り回す。

 怪物クリーチャーの気配もなく、少し昼を過ぎた頃には確認も終わった。
 教会に戻ると、出発する前と何ら変わりない。怪物クリーチャー避けの魔道具もしっかりと作動しているようだ。

 コッタはベンチに転がり、ウォルトは昼食の準備を始める。
 鞄から取り出したのは、火を使わずに鍋を温められる魔道具の、携帯用だ。

 家屋に設置されている物よりも火力――火を使わずに力といっていいものか悩むが――は弱めだが、普通に調理する分には問題ない。
 『魔導コンロ』と名付けられたそれを床に置き、上に鍋を乗せた。

 大口に切った野菜と肉を炒め、水を注ぎ、調味料で味付けをしながら煮詰めていく。
 その間にパンを食べやすいようスライスしておいた。

 冒険者として旅をしていると料理をする機会も多く、ウォルトの動きは手慣れたものだ。
 コッタもやれないこともないが、手際や味はウォルトに軍配が上がるだろう。

 味見をしたウォルトが1つ頷いた。

「できたぞ」
「わ~い!」

 皿に盛りつけ、パンと共に出来立てのスープを口に運ぶ。
 男性らしく大味の味付け、かと思いきや意外と深みのある味わいにコッタの顔がゆるむ。

「美味しい!」
「そうか」

 ウォルトも食事に手を付けながら、コッタの賛辞に目を細めた。
 それからウォルトが2杯、コッタが4杯おかわりした。
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