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Rubra's Birthday - 1
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真っ白な壁と色鮮やかな屋根が、降り注ぐ陽光を受けて眩く輝いている。夏の強烈な陽射しに目を眇めながら、ラズリはのんびりとした足取りで目的地に向かっていた。
青いワンピースが風になびく。
ひらひら揺らぐそれに空と海の色を重ね、ラズリは傍を通り過ぎていく懐かしさに浸った。
レモンの香り、巻貝を模した街灯、心地よい喧騒、美味しそうな料理の匂いに、綺麗な珊瑚を売るいくつもの露店。相変わらずこの都市は賑やかだ。何もかもが自分におかえりと囁いてくれるような気がする。
白壁に映える色濃い夏の花々が、ラズリの気分を高揚させていく。警備隊員としておよそ十年を過ごした海沿いの都市は、今までと変わらない形で彼女を出迎えてくれた。
「おーい! ラズリくん、こっちだよ」
道の向こうから元気な声が聞こえてくる。ラズリが手を振り返すと、声の主は柔和な微笑みを浮かべた。銀縁の丸眼鏡が、陽の光を受けてきらりと輝く。
ラズリの姿を認め、マーシュは小走りで駆け寄ってきた。
「やあやあやあ、久しぶりだね。しばらく会えなかったけど、健康的な生活を送っているみたいで安心したよ」
「マーシュ隊長。あなたもお元気そうで何よりです」
ラズリはマーシュに敬礼をした。彼は自分にとって敬うべき存在で、それは警備隊を辞めてからも変わらない。この都市を守る警備隊長に向けて尊敬の視線を送ると、マーシュは嬉しそうに答礼をした。
彼のふわふわと靡く茶色の髪に、少しだけ白いものが混じっている。鼻の両端の皺もくっきり浮き出てきたようだ。
少し、歳を取ったか。
含みのある視線に気がついたマーシュは、頭を掻きながらにこりと笑った。
「ははは、気が付いたかい? 近頃急激に老け込んじゃってさ、たくさん白髪が生えてくるんだ。目は霞むし、走ったらすぐ息切れしてしまうし……。僕ももう歳かな? 長生きしてれば仕方ないのかもしれないけどさ、情けないよね」
そう言いつつも、マーシュは自分の老いを心から嬉しく思っているようだ。彼は自分がどんな風に変わってしまったのか、身振り手振りを交えながら弾んだ調子でラズリに話した。
「ラズリ君を見送ったあの時、僕の体から忌まわしい海の霊気が消えていった。僕はもう海の民じゃない。ただの老けてしまったおじさんだ」
この都市も平和になってきたから、そろそろ後進に道を譲ろうか。引退したら海辺に住んで、毎日のんびりと釣りを楽しみたい。子供たちに勉強や体術を教えて慕われるのもいい……。マーシュは未来の計画をあれこれ口にしながら、青空を征く海鳥の群れを見上げた。
「綺麗だね。今日も天空神の機嫌がいいらしい」
丸眼鏡の奥にある茶の瞳が、ゆっくりと細められる。雲ひとつない空を見つめながら、今ある幸せを噛み締めるように息を吐く。マーシュの目元に穏やかな皺が刻まれているのを認め、ラズリは胸がいっぱいになる気持ちだった。
彼は人間としての生を過ごしている。海の民としての宿命や恨みから解放されて、ようやく自分のために生きられるようになったのだ。
「マーシュ隊長。あなたが前を向けるようになって良かった」
ラズリが微笑むと、マーシュは優しい笑みを浮かべながら頷いた。
「ありがとう、ラズリくん」
老いても人好きのする顔はそのままだ。きっとその髪が真っ白になってしまっても、マーシュは素敵なままなのだろうとラズリは思った。
*
通い慣れたカフェのテラス席で、ラズリはマーシュと久しぶりの会話を楽しんだ。手紙でやり取りしていても、直接顔を合わせれば話したいことは山ほど出てくる。ラズリの話題はもっぱら菜園作りについてだ。果物がたっぷり乗ったタルトを味わいながら、彼女は島の畑にあれを植えたのだ、これを植えたのだと話した。
「ルブラと美味しい果物をならす樹を植えようって話し合ったんです。オレンジとサポテの苗を畑にたくさん植えて、庭にはバナナの樹を持ってきました。あっ、そうそう。島にある榕樹を大きく育てて、緑の屋根を作ろうとしているんですよ! すてきでしょう?」
「ははっ、いいね! とても素敵な暮らしだ。ところで、君の夫は果物が好きなのかい?」
「ええ。陸の食べ物の中では獣肉と同じくらい美味しいって。でも、ルブラが一番好きなのはヤシ酒みたいですけどね。お酒に弱いから普段は飲ませないようにしてるんですが」
赤らんだ顔で酒を愉しむルブラを思い出し、ラズリはくすくすと笑った。
「土を耕すのはかなり大変です。警備隊を辞めてから運動不足にならないか心配していたんですが、今までよりも体を使った生活をしているかもしれません。でも、ルブラが支えてくれるから少しも辛いと思わない。彼は八本足を使って器用に畝を作ってくれるんですよ」
「ほう、あの彼がねえ」
マーシュは紅茶を飲みながらルブラのことを考えた。それぞれの足に農具を持った大蛸の姿が思い浮かぶ。世界を滅ぼしかけた邪神が、今は農作業に没頭していると思うと何だか可笑しみを感じる。
「ルブラって本当に優しいんです。料理は上手だし、体が大きいから高いところにある果物は全部取ってくれるし、手先が器用だから服も縫ってくれるし……。ふふ、今日の服もルブラが用意してくれたんですよ。青い色は私によく似合うからって」
ラズリは顔を綻ばせながら、自分の夫がどんなに素敵なのか語った。青いワンピースの袖を嬉しそうに見つめる様子からは幸福が滲み出ている。
「そういえば、君の夫はどうしたんだい? 姿を見かけないが」
マーシュが首を傾げると、ラズリは懐にそっと手を入れた。
「もちろん彼も一緒ですよ。ほらルブラ、マーシュ隊長に挨拶して。もう、嫌がらないの。大人げないこと言わないで早く出てきなさい!」
ラズリの胸元がもぞもぞと動く。
焦れたラズリがワンピースの中に手を突っ込むと、蛸の頭が勢いよく飛び出してきた。
『……あーあ。せっかくラズリの胸で寛いでたのによ』
両手に収まるくらいの小さな蛸が、ラズリの首に絡みつきながらうねうねと足を踊らせる。ぬるりとした金の眼に見つめられ、マーシュは口元をひくつかせた。
「まさか、その蛸って」
「ルブラですよ。彼ったら私のことが大好きで、常に一緒にいたがるんです。蛸の姿の方が私を見守りやすいんですって。まったく、私の夫は過保護なんだから」
ラズリは蛸の頭を撫でながらにっこりと笑った。
彼女はとても幸せそうだ。平時よりやや高い声に、きらきらと光る青い瞳。そしてほんのりと染まる頬。愛情に蕩けた女の顔だ。部下のそんな顔は始めて見たと、マーシュは目を瞬かせながらラズリを観察した。
『なあラズリぃ、お前の胸に戻してくれよ。いい匂いがするから出たくねえんだ』
「もう、あなたってば私を照れさせることばかり言うわね。島に戻ったらたくさん抱きしめてあげるから、それまで我慢して頂戴」
熱が籠もったその囁きに蛸が踊る。ルブラはラズリの唇に口付けるように吸盤をくっつけ、嬉しそうに触腕を蠢かせた。
『ひひっ。いつ何時どの角度から見てもお前は可愛すぎるぜ。あまりの可愛さに俺の眼が焼けちまいそうだ! ああ、早くラズリといちゃいちゃしてえ。家に帰ったらたっぷりちょっかいかけてやるからな、俺のラズリちゃああぁぁぁああん』
くぐもった人外の声が響く。邪神の声は狂気の音色となって人間たちの脳を侵食し、各々に理解不能な宇宙の知識を植え付けていく。あちこちから困惑のどよめきが上がったが、ラズリだけはうっとりとした顔で蛸にキスをしていた。
「……ラズリくん?」
マーシュはそっと声をかけた。
随分な変わりようだ。幸せを滲ませるラズリの横顔からは、かつて彼女が持っていた強さが感じられない。元部下と邪神が醸し出す甘い雰囲気に胸がつかえそうになる。
ふたりはお互いを見つめながら甘い語らいを続けている。無理やり口を挟むまでこの惚気は止まらないだろう。蛸の頭をぐりぐりと撫で回すラズリに、マーシュは適当な言葉を贈って話を打ち切ろうとした。
……だが、突如向けられた強烈な視線に口を噤んでしまう。
何かに見られている。
しかも、大勢に。
「あっルブラ! 待って、何!? 前が見えない!」
ラズリの顔にべったりと蛸が張り付く。
女の視界を覆い隠しながら、ルブラはどろりとした眼でマーシュを見据えた。
『……よう、クソ眼鏡。相変わらずしけた面してんな』
マーシュの脳内にくぐもった声が響く。
それに伴って、彼の周囲にいくつもの眼球が浮かび上がる。
眼。眼、眼、眼!
生け垣に、近くの花壇に、上空に、窓に、屋根に、タルトの上に。ありとあらゆる場所に眼球が現れ、マーシュのことをじっと見据える。人ならざる者の眼を示す長方形型の瞳孔、それは目の前にいる蛸のものに違いなかった。
『いいだろ? この目玉。ラズリの姿を全角度から見るのに最適なんだぜ!』
テーブルの上をごろごろと目玉が転げ回る。その狂気的な光景、一挙一動を観察されている恐怖に、マーシュは思わずカップを落としそうになった。
怯える彼を面白がるように、皿の上でぼよんぼよんと眼球が飛び跳ねる。驚きに震えながらも、マーシュは冷静にルブラに話しかけた。
「やあ。久しぶりだね。人に向かってクソ眼鏡とは、相変わらず君は礼を欠いている……。さて、これは一体どういうつもりだい? もしかして僕を脅しているのか?」
『はん、御名答。おいお前、まだ何か企んでんじゃねえだろうな? 俺とラズリの仲を引き裂こうとしてみろ、今度こそただじゃおかねえぞ! 俺はこうやってお前を監視してやることもできるんだからな!』
ルブラは指差しをするように、蛸足のひとつをぴんと伸ばした。小さな蛸に威嚇されても怖くも何ともないが、その正体が世界を滅ぼしかけた水神だと思うと肝が冷える。前が見えない、どうしたんだと騒ぐラズリを見るに、どうやら邪神の声はこちらにしか聞こえていないようだ。
マーシュは溜息を吐き、ラズリの顔からルブラを引き剥がそうとした。
「こらこら。話をするにも、まずはラズリくんから離れなさい。なぜそう彼女の顔に張り付いている?」
『お前にラズリの顔を見せたくねえし、ラズリにお前を見てほしくねえからだよ! おい、俺の頭を気安く掴むな。墨吐くぞ! やめろ、手ぇ放せ。ラズリを見るんじゃねえ、こいつの可愛い顔は俺だけのもんだ!!』
蛸が足をばたつかせながら必死に女の顔にしがみつく。小さな体で自分の手を払い除けようとする牽制が可愛らしく見えて、マーシュはつい口角を上げてしまった。
「ぷふっ……。ふっ、あはははは!!」
マーシュはとうとう吹き出し、両手を上げて降参した。ラズリと仲がいい自分に嫉妬しているのだろうか? 妻の顔を隠しながら脅すなんて、邪神も相当余裕がないらしい。
『……おい、何笑ってんだよ』
「ふくっ、ふふふっ! いや、情けないと思ってね。それだけ愛されておいてまだ僕を警戒しているのか? ラズリくんから束縛が激しいとは聞いていたが、まさかここまでとは……! 安心しなさい、僕はもう何もしない。君とラズリくんの仲を邪魔して、この平和な世界を壊したくないからね」
転げ回る目玉を退かし、マーシュは再びカップに口をつけた。紅茶をゆったり味わいながら、ルブラに向けて柔らかい声で話しかける。
「ラズリくんはね、僕にいつも分厚い手紙をくれるんだ。そこに書いてあるのは君のことばかりさ。読んだこちらの胸がむず痒くなるほどに、夫への感謝がいっぱいに綴られている。君は余程ラズリくんに甘いみたいだね?」
『当たり前だろ、ラズリは俺の宝物なんだ。いつまでも見守って愛し抜いて、未来永劫笑い合いながら暮らすって決めたからな』
「はははっ、そうかいそうかい! いいね、仲良きことは素晴らしきことだ」
愛情に蕩けたラズリの顔に、彼女を宝物と言い切ったルブラ。手紙に綴られていた通り、ふたりはとても幸せに過ごしているようだ。
マーシュの胸に喜びと安堵が込み上げる。彼は目を瞑り、かつてのラズリの言葉を反芻した。
――私はルブラを信じている。私たちの愛は、決して消えない。
「君がラズリくんを愛するように、ラズリくんもまた君を深く愛している。仲のよい君たちの間に割って入れる者は誰もいないのだから、そう見境なく嫉妬心をぶつけるのはやめなさい。余裕がない男は格好悪いよ」
冷静に諌められ、ルブラはばつが悪そうに目を逸らした。
『ふん、もし俺たちの間に割り込んでくる奴がいたら締め上げてやる』
「はは、それは怖ろしいね」
マーシュは目を細め、独り言のように呟いた。
「愛する存在と一緒にいられるというのは、とても幸せなことだ」
……そう、それは本当に幸せなことだ。
僕もできる限り彼らと一緒にいたかった。
マーシュはかつての恋人や友を思い出し、目を潤ませた。
祖父に殺されてしまった、かけがえのない存在たち。自分も陸の民として彼らと共に生きることができていたら、幸せに笑えたのだろうか?
(……いや、よそう。ラズリくんが幸せならそれでいい。彼女が笑って暮らせるなら、僕の魂も救われるんだ)
この出自に対しての恨みはけりが付いている。羨望と胸の痛みを仕舞って、マーシュは光る金色の眼を見つめた。
「ルブラくん。彼女といつまでもお幸せにね」
マーシュが呟いたその言葉に眼球が消えていく。
祝福を湛えた柔和な笑みを見て、ルブラはそっと足を下ろした。
*
陽が沈み、街に明かりが灯る。穏やかな時間を過ごしたラズリとマーシュは再会の約束をし、互いの無事を祈ってから別れた。
紺にひとすじの橙が混ざり合った空を見上げながら、ラズリは活気のある夜の都市を歩いた。輝く街灯と、その光を映す石畳のきらめきが美しい。風に乗って仄かに香る酒精の香りについ引き寄せられてしまう。
せっかく島からやって来たのだ、必要なものがあれば揃えておきたい。何か買い忘れたものはなかったかと、通り沿いの露店に視線を巡らせる。
ふと、葡萄酒を買い求める客の姿が目に留まった。笑い声に混じって、家族の誕生日に贈るのだという言葉が聞こえてくる。瓶の首に結ばれたリボンを見つめながら、ラズリは胸元に手を遣った。
(誕生日。……そういえば、私ってルブラの誕生日を知らないわ)
人ならざるものであるルブラに『誕生日』という概念があるのかどうか分からないが、以前自分の誕生日を祝ってくれたお礼に、今度はこちらが彼を祝ってあげたい。
何か、いい案はあるだろうか?
『ラズリ? どうした?』
突然足を止めたラズリを訝しく思い、ルブラが胸元からひょこりと頭を出す。丸く滑らかな蛸の頭を撫でながら、ラズリは小声でルブラに話しかけた。
「ねえルブラ。あなたって自分の誕生日がいつだったか覚えてる?」
『誕生日? それって生まれた日のことか? うーん。何せ俺が生まれたのなんて、ずっとずっとずうっっっと前の話だぜ。ぜんっぜん覚えてねえな』
「そう。そうよね……」
ほんのりと寂しい気持ちが込み上げる。ルブラの触腕を指に絡ませながら、ラズリはわざとゆっくりした足取りで市場を巡った。
「ね、ルブラ。欲しいものはない? せっかくここまで来たんだし、何かあなたに買ってあげたいんだけど」
『欲しいもの? 別にねえけど。急にどうしたんだよ』
「この前、私の誕生日に豪華な料理を作ってくれたでしょ。だから今度は私があなたを祝ってあげたいの。欲しいものがあったら教えて頂戴」
『へえ? それなら俺はお前が欲しい』
ルブラの即答に、ラズリの頬が赤く染まる。
「何よそれ。いつもあげてるでしょ」
『いいだろ、俺はお前と一緒にいられたらそれで幸せなんだよ』
乳輪に優しく吸盤を押し付けられる。男の興奮を表す淫らな触腕の動きに、ラズリは肩を跳ね上がらせた。
「っ!? ちょっ……。ちょっとルブラ、外でこんなことしないでよ!」
『なーあ、早く帰ろうぜ。我慢の限界だ、俺は今すぐにお前が欲しい。今夜もラズリをたっぷり愛してやりてえんだ』
吸盤の中に迎え入れた胸の先端をくにくにと刺激しながら、ルブラは女の耳元で囁いた。ラズリの下腹に刻みつけられた蛸の紋が疼き、ぞわりとした快感が背筋を走り抜ける。全身を支配し始めた淫欲に、ラズリは色の滲む吐息を漏らした。
「……もう、仕方ないわね……」
呆れを滲ませつつも、確かな期待を含んだその声に蛸が踊る。ルブラはラズリの乳房に蛸足を絡ませながら、早く海に向かえと急かした。
(あ、そうだ。誕生日が分からないなら、ルブラと出逢った日を彼の誕生日にしよう)
夫を祝いたいと考えていたラズリは、ふと浮かんだひらめきをすぐさま掬い上げた。
水神が「ルブラ」となった日。
その日まで、あと十日くらいある。
(ルブラに似合うシャツを縫って、不器用なりに料理も作るの。急いで準備すれば誕生日までに間に合うはず)
頭の中で日数を数えながら、ラズリは胸元のルブラに向かって微笑んだ。
(私のことはいつだってあげる。だから、たまには私以外のもので喜んでほしい。ルブラに喜んでもらえるように一生懸命頑張るから)
明日から、こっそりルブラの誕生日を祝う準備をしよう――ラズリは決心し、ルブラの頭をぐにぐにと撫で回した。
「ルブラ。今夜はあなたのしたいようにさせてあげるわよ」
『へえ。そりゃ楽しみだな。ラズリちゃんにはどんな願い事を聞いてもらおうかね』
人外の声が嬉しそうに弾む。うきうきとした様子で足を踊らせる夫を見て、ラズリはくすくすと笑った。
蛸足を手に取り、愛を込めて口付ける。夫の誕生日を素晴らしいものにするという決意を固め、ラズリは足早に海へ向かった。
********
翌朝。
ラズリはいつものように、夫の騒がしい起床催促に襲われた。
『ねぼすけラズリさん、いつまでぐーすか寝てるんですかぁ? もう目覚めの時間はとっくに過ぎてますよおぉッ! 陽が昇ったら暑くて畑仕事ができなくなっちまうぞ。ほら、起きろ。おーーきーーろーー』
おどろおどろしい狂気の声がラズリの耳に注がれる。太古の星の景色に頭を埋め尽くされ、ラズリは呻き声を上げながら何度も寝返りを打った。
『おい、二度寝しようとするな。規則正しい生活をするって俺と約束しただろ、なあ? 起きろ、いい加減起きやがれ。ああもう、お前は本っ当に寝起きが悪ぃなあ……。らぁずり、起きてくれよ。お前の旦那様が足を長くして待ってんだよ!』
「……うぅん……。うるさ……」
『らーずり。ラズリってば。ラズリちゃぁぁあん。なあ、こっち向けよラズリ。向いてくれってば』
枕に顔を埋めながら呻くラズリが可愛らしい。ルブラは妻の愛らしさに顔を綻ばせながらもつまらない気持ちになった。早く目を開けて綺麗な青い瞳を見せてほしい。大好きな妻から「愛してる」と言ってもらわないと、自分の一日は始まらないのだ。
ルブラは蛸足でラズリをつつきながら、ごく優しい声で彼女の目覚めを促した。
「ラズリちゃん、諦めておめめぱっちりしましょうね。ひひひっ、お前はかわいいなあ。いつまでもいつまでも見てられるぜ。全角度からお前を見つめてやりてえなあ……」
その言葉に、ラズリはぴくりと肩を震わせた。
近頃、ルブラはいくつもの眼球を生み出して自分を監視するという狂気的な習慣を生み出した。何でも、色々な角度から余すことなく妻の姿を見つめたいらしい。このまま放っておけば、ルブラは大量の眼で自分を視姦し始めるだろう。
机の引き出しを開けたら、真珠の代わりにぎっしりと目玉が詰め込まれていた衝撃は忘れられない。寝る時も枕元に目玉が転がっているし、入浴中も湯の上にぷかぷかと目玉が浮いているのだから堪らない。あの光景は心臓に悪すぎる。
愛が重いのは嬉しいけれど、自分の周りが目玉だらけになるのは嫌だ。転げ回ったり飛び跳ねたりする目玉をひとつひとつ捕まえるのはとにかく面倒なのだ。
(仕方ない、起きるか)
ラズリは潔く目を開けた。
視界に、まばゆく輝く金眼が飛び込んでくる。
「おはよ、ラズリ!」
「おはよう。あなたは私の起こし方をよく分かってるわね」
ルブラに頭を撫でられる。彼が浮かべる甘く柔らかい笑みに、ラズリは胸が切なく締め付けられるのを感じた。
朝日に照らされるルブラは今日も格好いい。彼は筋肉の鎧を纏っていて、体も自分よりずっと大きいのに、こちらを傷付けないようにと繊細な手つきで触れてくれる。ルブラの分厚い胸に顔を埋めると、怖ろしいもの全てから守ってもらえる気がした。
男の引き締まった浅黒い肌にキスを落とす。ラズリはルブラの刺青を撫でながら、彼の耳元で愛してると囁いた。
「ひひっ、くすぐってえ」
「大好きだよルブラ、愛してるわ」
「お前からの愛の言葉は何度聞いてもいいもんだなあ……。俺も愛してるぜ、ラズリ」
ルブラの下半身から伸びる赤褐色の蛸足が、ラズリの胴体にくるりと絡みつく。触腕で妻を包み込みながら、ルブラは女が纏う香りをたっぷりと吸い込んだ。
甘く匂い立つ熱帯の花。ラズリが好んで使う石鹸の香り。自分も同じものを使っているのに、ラズリから香るだけでこんなにも魅力的に感じる。ルブラは白い肌に鼻をくっつけ、深呼吸を繰り返した。
「ラズリ。お前は宇宙でいちばん綺麗な女だ」
「ふふっ、朝から何言ってるのよ」
「本当だ。どこを探したってこんなに美しい女はお前しかいねえ。お前を見てると可愛すぎて胸が苦しくなるんだ。なあ、分かるか? 俺が今感じているこの喜び、このムラムラする気持ちが。つまり、俺は……」
女の耳たぶを唇で挟み、ルブラは情欲が滲む吐息を注いだ。
「お前とヤりてえんだ」
切なげなルブラの顔が近づいてくる。蠢く触腕から夫の欲情を察知したラズリは、慌てて蛸足の下から這い出た。触手の拘束から抜け出した女に、ルブラの不満そうな顔が向けられる。
「おい、何で逃げるんだよ。今いい雰囲気だっただろうが!」
「だ、だって。昨日したばっかりじゃないの」
「昨日と今日とは別だろ? なあヤろうぜ、ラズリを見てたら収まりがつかなくなっちまったんだ。優しくするからさぁ」
「はいはい、悪いけど我慢して! まず朝の支度をしないと」
自分にしがみつくルブラを優しく押しのけ、ラズリは眉を下げた。
ルブラの抱き方はよく言えば丁寧、悪く言えばねちっこい。彼に抱かれたら、腰の痺れがひどくて何もできなくなってしまう。今日からルブラの誕生日を祝う準備をするのだから、ここで時間を取られるのは避けたい。
「ほら、ご飯にしよ。今日もしっかり食べてしっかり働こうね。あ、目玉を出すのはやめて頂戴。片付けるのが大変だから」
「らーーーずーーーりーーー。そんなに俺を焦らしてどうするつもりだ? ああ、可哀想な俺。可哀想なルブラ。こんなギンギンに滾ってるのに夜までお預けなんてな! まったく、俺様の誘いを跳ね除けるなんて酷ぇ女だぜ!」
蛸足がばたばたとベッドに打ち付けられる。至極不満そうなルブラに謝りつつ、ラズリは急いでキッチンに向かった。
********
雲一つない青空が目にしみる。今日も心地よい晴れの日だ。午前の畑仕事を終えたラズリは、花の香りを楽しみながら吊床の上で縫い物をしていた。
ルブラは海に潜っている最中だ。
彼がいない時間を使って、なんとか準備を進めなくては。
(残念なことに、ルブラにはあの目玉がある。だからこの企みはすぐにバレてしまうかもしれないけど、できればこっそりプレゼントを用意して驚かせたいのよね)
ルブラの誕生日に向けて、ラズリは手縫いのリネンシャツと彼が好きなヤシ酒、手の込んだ料理を用意することにした。
ヤシ酒は蓄えがある。ルブラは酒に弱いからあまり飲ませたくないが、誕生日くらいはいいだろう。シャツは手持ちの布で作るとして、問題は料理だ。
ルブラは料理がとても上手だ。魚を臭みなく調理できるし、果物も洒落た形に切ることができる。それに比べ、自分はせいぜい肉を焼くことぐらいしかできない。質素な料理でもルブラは喜んでくれるだろうが、折角だから彼を驚かせるようなものを作ってみたい。
どんな料理を作ればいいだろうか。
布を裁断しながら考えていたところ、ふと潮のにおいが強くなった。
「……あら?」
ぺたぺた。
砂浜に平たい足がくっつけられる音と共に、海から数人の魚人がやって来る。
かつてこの島で暮らし、水神のために海に沈んだ村人の成れの果て。青白い体躯をした彼らは、魚が入ったかごを背負いながら恐る恐るラズリに近づいてきた。
「こんにちは、今日も魚を持ってきてくれたのね」
「お、俺たちに話しかけるなっ。あの御方の怒りを買ってしまうだろう!」
ラズリの挨拶に甲高い声が上がる。彼らはきょろきょろと辺りを見渡しながら、海鮮が詰め込まれたかごを押し付けてきた。
「今週の献上品だ、これだけあればお前も満足だろう。早く受け取れ、俺たちはもう帰る!」
「あ、待って」
「ひぃッ! なぜ止める!? 俺たちはあの御方に嫉妬されたくないんだ、早く放してくれ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ魚人の手首を引っ掴み、ラズリは背の低い彼らをじっと観察した。
ぎょろりと突き出た目、たるんだ唇、水掻き、立派な尾。魚のような造形を持つ彼らは、水底に生きる海の民だ。
彼らはルブラが目覚めるまではこの島で漁師として暮らしていた。ならば、海の食材の扱いに長けているのではないか?
海の料理のことは、海の民に聞くのが一番ではないか?
「ねえ、あなた達って料理は得意? 聞きたいことがあるんだけど……」
ラズリは声を潜め、自分の企みを打ち明けた。
青いワンピースが風になびく。
ひらひら揺らぐそれに空と海の色を重ね、ラズリは傍を通り過ぎていく懐かしさに浸った。
レモンの香り、巻貝を模した街灯、心地よい喧騒、美味しそうな料理の匂いに、綺麗な珊瑚を売るいくつもの露店。相変わらずこの都市は賑やかだ。何もかもが自分におかえりと囁いてくれるような気がする。
白壁に映える色濃い夏の花々が、ラズリの気分を高揚させていく。警備隊員としておよそ十年を過ごした海沿いの都市は、今までと変わらない形で彼女を出迎えてくれた。
「おーい! ラズリくん、こっちだよ」
道の向こうから元気な声が聞こえてくる。ラズリが手を振り返すと、声の主は柔和な微笑みを浮かべた。銀縁の丸眼鏡が、陽の光を受けてきらりと輝く。
ラズリの姿を認め、マーシュは小走りで駆け寄ってきた。
「やあやあやあ、久しぶりだね。しばらく会えなかったけど、健康的な生活を送っているみたいで安心したよ」
「マーシュ隊長。あなたもお元気そうで何よりです」
ラズリはマーシュに敬礼をした。彼は自分にとって敬うべき存在で、それは警備隊を辞めてからも変わらない。この都市を守る警備隊長に向けて尊敬の視線を送ると、マーシュは嬉しそうに答礼をした。
彼のふわふわと靡く茶色の髪に、少しだけ白いものが混じっている。鼻の両端の皺もくっきり浮き出てきたようだ。
少し、歳を取ったか。
含みのある視線に気がついたマーシュは、頭を掻きながらにこりと笑った。
「ははは、気が付いたかい? 近頃急激に老け込んじゃってさ、たくさん白髪が生えてくるんだ。目は霞むし、走ったらすぐ息切れしてしまうし……。僕ももう歳かな? 長生きしてれば仕方ないのかもしれないけどさ、情けないよね」
そう言いつつも、マーシュは自分の老いを心から嬉しく思っているようだ。彼は自分がどんな風に変わってしまったのか、身振り手振りを交えながら弾んだ調子でラズリに話した。
「ラズリ君を見送ったあの時、僕の体から忌まわしい海の霊気が消えていった。僕はもう海の民じゃない。ただの老けてしまったおじさんだ」
この都市も平和になってきたから、そろそろ後進に道を譲ろうか。引退したら海辺に住んで、毎日のんびりと釣りを楽しみたい。子供たちに勉強や体術を教えて慕われるのもいい……。マーシュは未来の計画をあれこれ口にしながら、青空を征く海鳥の群れを見上げた。
「綺麗だね。今日も天空神の機嫌がいいらしい」
丸眼鏡の奥にある茶の瞳が、ゆっくりと細められる。雲ひとつない空を見つめながら、今ある幸せを噛み締めるように息を吐く。マーシュの目元に穏やかな皺が刻まれているのを認め、ラズリは胸がいっぱいになる気持ちだった。
彼は人間としての生を過ごしている。海の民としての宿命や恨みから解放されて、ようやく自分のために生きられるようになったのだ。
「マーシュ隊長。あなたが前を向けるようになって良かった」
ラズリが微笑むと、マーシュは優しい笑みを浮かべながら頷いた。
「ありがとう、ラズリくん」
老いても人好きのする顔はそのままだ。きっとその髪が真っ白になってしまっても、マーシュは素敵なままなのだろうとラズリは思った。
*
通い慣れたカフェのテラス席で、ラズリはマーシュと久しぶりの会話を楽しんだ。手紙でやり取りしていても、直接顔を合わせれば話したいことは山ほど出てくる。ラズリの話題はもっぱら菜園作りについてだ。果物がたっぷり乗ったタルトを味わいながら、彼女は島の畑にあれを植えたのだ、これを植えたのだと話した。
「ルブラと美味しい果物をならす樹を植えようって話し合ったんです。オレンジとサポテの苗を畑にたくさん植えて、庭にはバナナの樹を持ってきました。あっ、そうそう。島にある榕樹を大きく育てて、緑の屋根を作ろうとしているんですよ! すてきでしょう?」
「ははっ、いいね! とても素敵な暮らしだ。ところで、君の夫は果物が好きなのかい?」
「ええ。陸の食べ物の中では獣肉と同じくらい美味しいって。でも、ルブラが一番好きなのはヤシ酒みたいですけどね。お酒に弱いから普段は飲ませないようにしてるんですが」
赤らんだ顔で酒を愉しむルブラを思い出し、ラズリはくすくすと笑った。
「土を耕すのはかなり大変です。警備隊を辞めてから運動不足にならないか心配していたんですが、今までよりも体を使った生活をしているかもしれません。でも、ルブラが支えてくれるから少しも辛いと思わない。彼は八本足を使って器用に畝を作ってくれるんですよ」
「ほう、あの彼がねえ」
マーシュは紅茶を飲みながらルブラのことを考えた。それぞれの足に農具を持った大蛸の姿が思い浮かぶ。世界を滅ぼしかけた邪神が、今は農作業に没頭していると思うと何だか可笑しみを感じる。
「ルブラって本当に優しいんです。料理は上手だし、体が大きいから高いところにある果物は全部取ってくれるし、手先が器用だから服も縫ってくれるし……。ふふ、今日の服もルブラが用意してくれたんですよ。青い色は私によく似合うからって」
ラズリは顔を綻ばせながら、自分の夫がどんなに素敵なのか語った。青いワンピースの袖を嬉しそうに見つめる様子からは幸福が滲み出ている。
「そういえば、君の夫はどうしたんだい? 姿を見かけないが」
マーシュが首を傾げると、ラズリは懐にそっと手を入れた。
「もちろん彼も一緒ですよ。ほらルブラ、マーシュ隊長に挨拶して。もう、嫌がらないの。大人げないこと言わないで早く出てきなさい!」
ラズリの胸元がもぞもぞと動く。
焦れたラズリがワンピースの中に手を突っ込むと、蛸の頭が勢いよく飛び出してきた。
『……あーあ。せっかくラズリの胸で寛いでたのによ』
両手に収まるくらいの小さな蛸が、ラズリの首に絡みつきながらうねうねと足を踊らせる。ぬるりとした金の眼に見つめられ、マーシュは口元をひくつかせた。
「まさか、その蛸って」
「ルブラですよ。彼ったら私のことが大好きで、常に一緒にいたがるんです。蛸の姿の方が私を見守りやすいんですって。まったく、私の夫は過保護なんだから」
ラズリは蛸の頭を撫でながらにっこりと笑った。
彼女はとても幸せそうだ。平時よりやや高い声に、きらきらと光る青い瞳。そしてほんのりと染まる頬。愛情に蕩けた女の顔だ。部下のそんな顔は始めて見たと、マーシュは目を瞬かせながらラズリを観察した。
『なあラズリぃ、お前の胸に戻してくれよ。いい匂いがするから出たくねえんだ』
「もう、あなたってば私を照れさせることばかり言うわね。島に戻ったらたくさん抱きしめてあげるから、それまで我慢して頂戴」
熱が籠もったその囁きに蛸が踊る。ルブラはラズリの唇に口付けるように吸盤をくっつけ、嬉しそうに触腕を蠢かせた。
『ひひっ。いつ何時どの角度から見てもお前は可愛すぎるぜ。あまりの可愛さに俺の眼が焼けちまいそうだ! ああ、早くラズリといちゃいちゃしてえ。家に帰ったらたっぷりちょっかいかけてやるからな、俺のラズリちゃああぁぁぁああん』
くぐもった人外の声が響く。邪神の声は狂気の音色となって人間たちの脳を侵食し、各々に理解不能な宇宙の知識を植え付けていく。あちこちから困惑のどよめきが上がったが、ラズリだけはうっとりとした顔で蛸にキスをしていた。
「……ラズリくん?」
マーシュはそっと声をかけた。
随分な変わりようだ。幸せを滲ませるラズリの横顔からは、かつて彼女が持っていた強さが感じられない。元部下と邪神が醸し出す甘い雰囲気に胸がつかえそうになる。
ふたりはお互いを見つめながら甘い語らいを続けている。無理やり口を挟むまでこの惚気は止まらないだろう。蛸の頭をぐりぐりと撫で回すラズリに、マーシュは適当な言葉を贈って話を打ち切ろうとした。
……だが、突如向けられた強烈な視線に口を噤んでしまう。
何かに見られている。
しかも、大勢に。
「あっルブラ! 待って、何!? 前が見えない!」
ラズリの顔にべったりと蛸が張り付く。
女の視界を覆い隠しながら、ルブラはどろりとした眼でマーシュを見据えた。
『……よう、クソ眼鏡。相変わらずしけた面してんな』
マーシュの脳内にくぐもった声が響く。
それに伴って、彼の周囲にいくつもの眼球が浮かび上がる。
眼。眼、眼、眼!
生け垣に、近くの花壇に、上空に、窓に、屋根に、タルトの上に。ありとあらゆる場所に眼球が現れ、マーシュのことをじっと見据える。人ならざる者の眼を示す長方形型の瞳孔、それは目の前にいる蛸のものに違いなかった。
『いいだろ? この目玉。ラズリの姿を全角度から見るのに最適なんだぜ!』
テーブルの上をごろごろと目玉が転げ回る。その狂気的な光景、一挙一動を観察されている恐怖に、マーシュは思わずカップを落としそうになった。
怯える彼を面白がるように、皿の上でぼよんぼよんと眼球が飛び跳ねる。驚きに震えながらも、マーシュは冷静にルブラに話しかけた。
「やあ。久しぶりだね。人に向かってクソ眼鏡とは、相変わらず君は礼を欠いている……。さて、これは一体どういうつもりだい? もしかして僕を脅しているのか?」
『はん、御名答。おいお前、まだ何か企んでんじゃねえだろうな? 俺とラズリの仲を引き裂こうとしてみろ、今度こそただじゃおかねえぞ! 俺はこうやってお前を監視してやることもできるんだからな!』
ルブラは指差しをするように、蛸足のひとつをぴんと伸ばした。小さな蛸に威嚇されても怖くも何ともないが、その正体が世界を滅ぼしかけた水神だと思うと肝が冷える。前が見えない、どうしたんだと騒ぐラズリを見るに、どうやら邪神の声はこちらにしか聞こえていないようだ。
マーシュは溜息を吐き、ラズリの顔からルブラを引き剥がそうとした。
「こらこら。話をするにも、まずはラズリくんから離れなさい。なぜそう彼女の顔に張り付いている?」
『お前にラズリの顔を見せたくねえし、ラズリにお前を見てほしくねえからだよ! おい、俺の頭を気安く掴むな。墨吐くぞ! やめろ、手ぇ放せ。ラズリを見るんじゃねえ、こいつの可愛い顔は俺だけのもんだ!!』
蛸が足をばたつかせながら必死に女の顔にしがみつく。小さな体で自分の手を払い除けようとする牽制が可愛らしく見えて、マーシュはつい口角を上げてしまった。
「ぷふっ……。ふっ、あはははは!!」
マーシュはとうとう吹き出し、両手を上げて降参した。ラズリと仲がいい自分に嫉妬しているのだろうか? 妻の顔を隠しながら脅すなんて、邪神も相当余裕がないらしい。
『……おい、何笑ってんだよ』
「ふくっ、ふふふっ! いや、情けないと思ってね。それだけ愛されておいてまだ僕を警戒しているのか? ラズリくんから束縛が激しいとは聞いていたが、まさかここまでとは……! 安心しなさい、僕はもう何もしない。君とラズリくんの仲を邪魔して、この平和な世界を壊したくないからね」
転げ回る目玉を退かし、マーシュは再びカップに口をつけた。紅茶をゆったり味わいながら、ルブラに向けて柔らかい声で話しかける。
「ラズリくんはね、僕にいつも分厚い手紙をくれるんだ。そこに書いてあるのは君のことばかりさ。読んだこちらの胸がむず痒くなるほどに、夫への感謝がいっぱいに綴られている。君は余程ラズリくんに甘いみたいだね?」
『当たり前だろ、ラズリは俺の宝物なんだ。いつまでも見守って愛し抜いて、未来永劫笑い合いながら暮らすって決めたからな』
「はははっ、そうかいそうかい! いいね、仲良きことは素晴らしきことだ」
愛情に蕩けたラズリの顔に、彼女を宝物と言い切ったルブラ。手紙に綴られていた通り、ふたりはとても幸せに過ごしているようだ。
マーシュの胸に喜びと安堵が込み上げる。彼は目を瞑り、かつてのラズリの言葉を反芻した。
――私はルブラを信じている。私たちの愛は、決して消えない。
「君がラズリくんを愛するように、ラズリくんもまた君を深く愛している。仲のよい君たちの間に割って入れる者は誰もいないのだから、そう見境なく嫉妬心をぶつけるのはやめなさい。余裕がない男は格好悪いよ」
冷静に諌められ、ルブラはばつが悪そうに目を逸らした。
『ふん、もし俺たちの間に割り込んでくる奴がいたら締め上げてやる』
「はは、それは怖ろしいね」
マーシュは目を細め、独り言のように呟いた。
「愛する存在と一緒にいられるというのは、とても幸せなことだ」
……そう、それは本当に幸せなことだ。
僕もできる限り彼らと一緒にいたかった。
マーシュはかつての恋人や友を思い出し、目を潤ませた。
祖父に殺されてしまった、かけがえのない存在たち。自分も陸の民として彼らと共に生きることができていたら、幸せに笑えたのだろうか?
(……いや、よそう。ラズリくんが幸せならそれでいい。彼女が笑って暮らせるなら、僕の魂も救われるんだ)
この出自に対しての恨みはけりが付いている。羨望と胸の痛みを仕舞って、マーシュは光る金色の眼を見つめた。
「ルブラくん。彼女といつまでもお幸せにね」
マーシュが呟いたその言葉に眼球が消えていく。
祝福を湛えた柔和な笑みを見て、ルブラはそっと足を下ろした。
*
陽が沈み、街に明かりが灯る。穏やかな時間を過ごしたラズリとマーシュは再会の約束をし、互いの無事を祈ってから別れた。
紺にひとすじの橙が混ざり合った空を見上げながら、ラズリは活気のある夜の都市を歩いた。輝く街灯と、その光を映す石畳のきらめきが美しい。風に乗って仄かに香る酒精の香りについ引き寄せられてしまう。
せっかく島からやって来たのだ、必要なものがあれば揃えておきたい。何か買い忘れたものはなかったかと、通り沿いの露店に視線を巡らせる。
ふと、葡萄酒を買い求める客の姿が目に留まった。笑い声に混じって、家族の誕生日に贈るのだという言葉が聞こえてくる。瓶の首に結ばれたリボンを見つめながら、ラズリは胸元に手を遣った。
(誕生日。……そういえば、私ってルブラの誕生日を知らないわ)
人ならざるものであるルブラに『誕生日』という概念があるのかどうか分からないが、以前自分の誕生日を祝ってくれたお礼に、今度はこちらが彼を祝ってあげたい。
何か、いい案はあるだろうか?
『ラズリ? どうした?』
突然足を止めたラズリを訝しく思い、ルブラが胸元からひょこりと頭を出す。丸く滑らかな蛸の頭を撫でながら、ラズリは小声でルブラに話しかけた。
「ねえルブラ。あなたって自分の誕生日がいつだったか覚えてる?」
『誕生日? それって生まれた日のことか? うーん。何せ俺が生まれたのなんて、ずっとずっとずうっっっと前の話だぜ。ぜんっぜん覚えてねえな』
「そう。そうよね……」
ほんのりと寂しい気持ちが込み上げる。ルブラの触腕を指に絡ませながら、ラズリはわざとゆっくりした足取りで市場を巡った。
「ね、ルブラ。欲しいものはない? せっかくここまで来たんだし、何かあなたに買ってあげたいんだけど」
『欲しいもの? 別にねえけど。急にどうしたんだよ』
「この前、私の誕生日に豪華な料理を作ってくれたでしょ。だから今度は私があなたを祝ってあげたいの。欲しいものがあったら教えて頂戴」
『へえ? それなら俺はお前が欲しい』
ルブラの即答に、ラズリの頬が赤く染まる。
「何よそれ。いつもあげてるでしょ」
『いいだろ、俺はお前と一緒にいられたらそれで幸せなんだよ』
乳輪に優しく吸盤を押し付けられる。男の興奮を表す淫らな触腕の動きに、ラズリは肩を跳ね上がらせた。
「っ!? ちょっ……。ちょっとルブラ、外でこんなことしないでよ!」
『なーあ、早く帰ろうぜ。我慢の限界だ、俺は今すぐにお前が欲しい。今夜もラズリをたっぷり愛してやりてえんだ』
吸盤の中に迎え入れた胸の先端をくにくにと刺激しながら、ルブラは女の耳元で囁いた。ラズリの下腹に刻みつけられた蛸の紋が疼き、ぞわりとした快感が背筋を走り抜ける。全身を支配し始めた淫欲に、ラズリは色の滲む吐息を漏らした。
「……もう、仕方ないわね……」
呆れを滲ませつつも、確かな期待を含んだその声に蛸が踊る。ルブラはラズリの乳房に蛸足を絡ませながら、早く海に向かえと急かした。
(あ、そうだ。誕生日が分からないなら、ルブラと出逢った日を彼の誕生日にしよう)
夫を祝いたいと考えていたラズリは、ふと浮かんだひらめきをすぐさま掬い上げた。
水神が「ルブラ」となった日。
その日まで、あと十日くらいある。
(ルブラに似合うシャツを縫って、不器用なりに料理も作るの。急いで準備すれば誕生日までに間に合うはず)
頭の中で日数を数えながら、ラズリは胸元のルブラに向かって微笑んだ。
(私のことはいつだってあげる。だから、たまには私以外のもので喜んでほしい。ルブラに喜んでもらえるように一生懸命頑張るから)
明日から、こっそりルブラの誕生日を祝う準備をしよう――ラズリは決心し、ルブラの頭をぐにぐにと撫で回した。
「ルブラ。今夜はあなたのしたいようにさせてあげるわよ」
『へえ。そりゃ楽しみだな。ラズリちゃんにはどんな願い事を聞いてもらおうかね』
人外の声が嬉しそうに弾む。うきうきとした様子で足を踊らせる夫を見て、ラズリはくすくすと笑った。
蛸足を手に取り、愛を込めて口付ける。夫の誕生日を素晴らしいものにするという決意を固め、ラズリは足早に海へ向かった。
********
翌朝。
ラズリはいつものように、夫の騒がしい起床催促に襲われた。
『ねぼすけラズリさん、いつまでぐーすか寝てるんですかぁ? もう目覚めの時間はとっくに過ぎてますよおぉッ! 陽が昇ったら暑くて畑仕事ができなくなっちまうぞ。ほら、起きろ。おーーきーーろーー』
おどろおどろしい狂気の声がラズリの耳に注がれる。太古の星の景色に頭を埋め尽くされ、ラズリは呻き声を上げながら何度も寝返りを打った。
『おい、二度寝しようとするな。規則正しい生活をするって俺と約束しただろ、なあ? 起きろ、いい加減起きやがれ。ああもう、お前は本っ当に寝起きが悪ぃなあ……。らぁずり、起きてくれよ。お前の旦那様が足を長くして待ってんだよ!』
「……うぅん……。うるさ……」
『らーずり。ラズリってば。ラズリちゃぁぁあん。なあ、こっち向けよラズリ。向いてくれってば』
枕に顔を埋めながら呻くラズリが可愛らしい。ルブラは妻の愛らしさに顔を綻ばせながらもつまらない気持ちになった。早く目を開けて綺麗な青い瞳を見せてほしい。大好きな妻から「愛してる」と言ってもらわないと、自分の一日は始まらないのだ。
ルブラは蛸足でラズリをつつきながら、ごく優しい声で彼女の目覚めを促した。
「ラズリちゃん、諦めておめめぱっちりしましょうね。ひひひっ、お前はかわいいなあ。いつまでもいつまでも見てられるぜ。全角度からお前を見つめてやりてえなあ……」
その言葉に、ラズリはぴくりと肩を震わせた。
近頃、ルブラはいくつもの眼球を生み出して自分を監視するという狂気的な習慣を生み出した。何でも、色々な角度から余すことなく妻の姿を見つめたいらしい。このまま放っておけば、ルブラは大量の眼で自分を視姦し始めるだろう。
机の引き出しを開けたら、真珠の代わりにぎっしりと目玉が詰め込まれていた衝撃は忘れられない。寝る時も枕元に目玉が転がっているし、入浴中も湯の上にぷかぷかと目玉が浮いているのだから堪らない。あの光景は心臓に悪すぎる。
愛が重いのは嬉しいけれど、自分の周りが目玉だらけになるのは嫌だ。転げ回ったり飛び跳ねたりする目玉をひとつひとつ捕まえるのはとにかく面倒なのだ。
(仕方ない、起きるか)
ラズリは潔く目を開けた。
視界に、まばゆく輝く金眼が飛び込んでくる。
「おはよ、ラズリ!」
「おはよう。あなたは私の起こし方をよく分かってるわね」
ルブラに頭を撫でられる。彼が浮かべる甘く柔らかい笑みに、ラズリは胸が切なく締め付けられるのを感じた。
朝日に照らされるルブラは今日も格好いい。彼は筋肉の鎧を纏っていて、体も自分よりずっと大きいのに、こちらを傷付けないようにと繊細な手つきで触れてくれる。ルブラの分厚い胸に顔を埋めると、怖ろしいもの全てから守ってもらえる気がした。
男の引き締まった浅黒い肌にキスを落とす。ラズリはルブラの刺青を撫でながら、彼の耳元で愛してると囁いた。
「ひひっ、くすぐってえ」
「大好きだよルブラ、愛してるわ」
「お前からの愛の言葉は何度聞いてもいいもんだなあ……。俺も愛してるぜ、ラズリ」
ルブラの下半身から伸びる赤褐色の蛸足が、ラズリの胴体にくるりと絡みつく。触腕で妻を包み込みながら、ルブラは女が纏う香りをたっぷりと吸い込んだ。
甘く匂い立つ熱帯の花。ラズリが好んで使う石鹸の香り。自分も同じものを使っているのに、ラズリから香るだけでこんなにも魅力的に感じる。ルブラは白い肌に鼻をくっつけ、深呼吸を繰り返した。
「ラズリ。お前は宇宙でいちばん綺麗な女だ」
「ふふっ、朝から何言ってるのよ」
「本当だ。どこを探したってこんなに美しい女はお前しかいねえ。お前を見てると可愛すぎて胸が苦しくなるんだ。なあ、分かるか? 俺が今感じているこの喜び、このムラムラする気持ちが。つまり、俺は……」
女の耳たぶを唇で挟み、ルブラは情欲が滲む吐息を注いだ。
「お前とヤりてえんだ」
切なげなルブラの顔が近づいてくる。蠢く触腕から夫の欲情を察知したラズリは、慌てて蛸足の下から這い出た。触手の拘束から抜け出した女に、ルブラの不満そうな顔が向けられる。
「おい、何で逃げるんだよ。今いい雰囲気だっただろうが!」
「だ、だって。昨日したばっかりじゃないの」
「昨日と今日とは別だろ? なあヤろうぜ、ラズリを見てたら収まりがつかなくなっちまったんだ。優しくするからさぁ」
「はいはい、悪いけど我慢して! まず朝の支度をしないと」
自分にしがみつくルブラを優しく押しのけ、ラズリは眉を下げた。
ルブラの抱き方はよく言えば丁寧、悪く言えばねちっこい。彼に抱かれたら、腰の痺れがひどくて何もできなくなってしまう。今日からルブラの誕生日を祝う準備をするのだから、ここで時間を取られるのは避けたい。
「ほら、ご飯にしよ。今日もしっかり食べてしっかり働こうね。あ、目玉を出すのはやめて頂戴。片付けるのが大変だから」
「らーーーずーーーりーーー。そんなに俺を焦らしてどうするつもりだ? ああ、可哀想な俺。可哀想なルブラ。こんなギンギンに滾ってるのに夜までお預けなんてな! まったく、俺様の誘いを跳ね除けるなんて酷ぇ女だぜ!」
蛸足がばたばたとベッドに打ち付けられる。至極不満そうなルブラに謝りつつ、ラズリは急いでキッチンに向かった。
********
雲一つない青空が目にしみる。今日も心地よい晴れの日だ。午前の畑仕事を終えたラズリは、花の香りを楽しみながら吊床の上で縫い物をしていた。
ルブラは海に潜っている最中だ。
彼がいない時間を使って、なんとか準備を進めなくては。
(残念なことに、ルブラにはあの目玉がある。だからこの企みはすぐにバレてしまうかもしれないけど、できればこっそりプレゼントを用意して驚かせたいのよね)
ルブラの誕生日に向けて、ラズリは手縫いのリネンシャツと彼が好きなヤシ酒、手の込んだ料理を用意することにした。
ヤシ酒は蓄えがある。ルブラは酒に弱いからあまり飲ませたくないが、誕生日くらいはいいだろう。シャツは手持ちの布で作るとして、問題は料理だ。
ルブラは料理がとても上手だ。魚を臭みなく調理できるし、果物も洒落た形に切ることができる。それに比べ、自分はせいぜい肉を焼くことぐらいしかできない。質素な料理でもルブラは喜んでくれるだろうが、折角だから彼を驚かせるようなものを作ってみたい。
どんな料理を作ればいいだろうか。
布を裁断しながら考えていたところ、ふと潮のにおいが強くなった。
「……あら?」
ぺたぺた。
砂浜に平たい足がくっつけられる音と共に、海から数人の魚人がやって来る。
かつてこの島で暮らし、水神のために海に沈んだ村人の成れの果て。青白い体躯をした彼らは、魚が入ったかごを背負いながら恐る恐るラズリに近づいてきた。
「こんにちは、今日も魚を持ってきてくれたのね」
「お、俺たちに話しかけるなっ。あの御方の怒りを買ってしまうだろう!」
ラズリの挨拶に甲高い声が上がる。彼らはきょろきょろと辺りを見渡しながら、海鮮が詰め込まれたかごを押し付けてきた。
「今週の献上品だ、これだけあればお前も満足だろう。早く受け取れ、俺たちはもう帰る!」
「あ、待って」
「ひぃッ! なぜ止める!? 俺たちはあの御方に嫉妬されたくないんだ、早く放してくれ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ魚人の手首を引っ掴み、ラズリは背の低い彼らをじっと観察した。
ぎょろりと突き出た目、たるんだ唇、水掻き、立派な尾。魚のような造形を持つ彼らは、水底に生きる海の民だ。
彼らはルブラが目覚めるまではこの島で漁師として暮らしていた。ならば、海の食材の扱いに長けているのではないか?
海の料理のことは、海の民に聞くのが一番ではないか?
「ねえ、あなた達って料理は得意? 聞きたいことがあるんだけど……」
ラズリは声を潜め、自分の企みを打ち明けた。
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