最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga

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第一章 リュータ、アールガルズに立つ

第七話 海と第一異世界人とリュータ

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 この世界は素晴らしい。
 そう思っていた頃が、俺にもありました。

「あばばばばば! おぼ、おぼれる!」

 そう、今絶賛おぼれています。大絶賛です。
 あのあと、山から下りて石碑に祈りを捧げ、オーガがぶち倒した丸太を加工して即席のイカダを作って大海原へ出かけました。
 そうして陸地があと少し、と言う所で、そこが河口である事が判明。
 潮の流れと河から流れる水との効果か、渦潮が大発生しておりました。
 当然即席で作ったイカダなんて分解。回収する暇もなく無事に身一つで海に投げ出されました。

「って、やばい、やばいよー。やヴぁいよー」

 やばすぎてもうやばい。
 もうこうなったらあれだ、スキルだ!

「この乱れた海で泳ぎきれるスキルを! 今すぐ下さい!」

 その後、色々ショートカットしたが無事泳ぎ系のスキルを習得。
 そのまま全力ぶっぱして河口へ突入。

「うおおおお! 俺は鮭! 鮭になるんだーー!」

 そう!
 そして川を上り、泳ぎきったその先でおにゃのことキャッキャウフフして子孫を残すのだー!
 レッツ産卵!!


***

 正気に戻り、岸へと上がる。

「まじかー」

 頭を抱える。
 俺は一体何を口走ったのか。またも野生が頭を出していたようだ。
 これから人里へ向かおうと言うのに、野性丸出しではよろしくない。
 心を落ち着かせ、そして周りを見渡す。
 混乱した時に大切なのは身近な情報だからだ。

 どうやらここはキャンプ地のようだ。
 誰かが使ったらしき石を積んだかまどのようなものがあるので、その辺の小枝を拾って火をつけた。
 服を脱いで、火の近くにある丁度よさげな石の上に置く。
 一息ついたところで、喉が渇いてきた。

「そう言えば水は大量には確保してなかった。しまったな、石碑の湧き水をもっと持ってくるべきだった」

 仕方が無いのでよさげな木材を拾い、魔法で削って簡易のコップを作る。
 そして川から水をくみ上げ、魔法を発動。
 その魔法とは『ろ過』であり、水以外の不純物質に干渉するので、魔法を使いつつも飲み水を確保できる素晴らしいものだ。
 塩を作った時の逆バージョンだな。

「ついでに殺菌も出来る優れものってね。ごくごく、ぷっはー! うまい! もう一杯!」

 二杯目を飲んでから、思う。
 きっと『生活魔法』じゃない魔法の中には、魔法水の中にある魔力を抜き出すものもあるだろう。
 それらとセットで使うのが、正しい魔法水なのかもしれない。『魔力操作』とかは、本当ならまず真っ先に覚えるべきスキルな気がするし。
 なら俺の次の目標は、その魔法を取ることだな。

「その為には人里へ行き、スキルに関して情報収集をしないといけないなー。人がいるのは、このキャンプ地からしても明らかだし」

 喉も潤い落ち着いた所で、周囲に『調査』を発動させる。
 するとどうだろう。周りに小動物の気配がある。
 棍を持ち、消音消臭を使って忍び寄る。
 うさぎである。
 サクっと棍で首を折ってころころする。
 それを10匹ほど繰り返し、『収納室』へ仕舞う。

「やっぱり消音消臭は小動物相手には無双できるなー。ほんと、チートすぎない?」

 うさぎを1匹だけ出して、これを晩飯にしようかと思い解体用に石ナイフを取り出す。
 前の世界でも鳥の解体とかじっちゃん家でしたことあるし、いざとなれば『生活魔法』でどうにかなるっしょ。


 いや、待て。なにやら大物の気配がする。
 一瞬、「すわっ、魔物的なモンスターか!?」と思ったが、話し声が聞こえるところから、もしかして人なのかもしれない。
 若干警戒しつつも、どうやって解体しようかと思案していると、森の中から人が現れた。

「なんだ、本当に先客がいるな」
「本当だな。ジョンソンがまた冗談を言っているのかと思っていたよ」
「な、なんだとー! おいら、斥候に関しては嘘つかねーよ!」

 ははは、違いねー、悪かったなーと笑い合うイケメン3人組。
 第一異世界人発見、なんだが・・・見た目は冒険者なのに、なんだその、なんで3人ともイケメンなの?
 異世界人ってこんな全員が全員、イケメンなの? 皮鎧纏ってるくせに、どうしてそうもイケてるの? 訳が分からないよ。
 俺のハーレム願望は、今ここで潰えるの?

 そういぶかしんでいると、何と勘違いしたのか、リーダーらしきイケメンが声をかけてきた。

「そう警戒するなって。なぁ、あんた、この辺は初めてか?」
「ええ、そうだけど」
「ああ、ああ。いいんだいいんだ。俺らが後だからな」

 何を言っているか分からないが、とにかく様子を見よう。

「だが、ここいらだとここしか野営地がないんだ。だから俺らも一緒でかまわねえか?」

 なるほど、そういう話か。ここは割と有名なキャンプ場、彼ら風に言うなら野営地らしい。
 公共の場であるなら、共にするのは致し方がないと思う。

 しかし赤の他人で、しかも向こうの方が人数が多いとなると、さすがに身の危険を感じる。
 しかもこっちの人達、どれくらい強いか分からんし。ゴブリンより強かったら、人数的にアウトだな。それ以前に、尻とか掘られないよね?

 そう悩んでいると、リーダーらしき男の隣にいたイケメンが声をかけてきた。

「すまないね。リーダーはせっかちでさ。まず僕らの紹介からさせてもらって、それから判断してくれないかな?」

 サラサラの金髪をかき上げての笑顔が、実にさわやかである。
 俺はこいつが『職業:吟遊詩人』だと言い出しても素直に信じてしまう恐れがある。
 そうアホな事を思っていたら、その沈黙を是と捉えたのか、自己紹介が始まった。

「おっと、そいつぁすまんな。俺の名はガルフ。こいつらと同じパーティで、第5級ハンター、そんで、リーダーだ。火魔法がメインだ」
「僕の名前はステファン。剣と風魔法を操るよ。第6級だからガルフより劣るんだ」
「おう、おいらはジョンソン。見てのとおり斥候で攻撃には期待すんなよ。第6級だ」

 なるほど、『調査』によるステータス情報どおりだ。
 しかしこいつら、ガルフ=ディーバイス、ステファン=ゴーリティアはまぁ分かる。

 でもジョンソン=ジョンソンズってなんだ? 家族全員ジョンソンなのか!?


 とりあえず名乗られたら名乗り返さないと落ち着かないのが日本人だ。

「ああ、丁寧な自己紹介をありがとう。俺はタナベリュータ。えーと、旅人、だな」
「へー、旅をしていてこの辺に? 言ってはなんですが、ここってかなりの辺境ですよ? 勿論、あなたの言葉を信じない訳ではないですが」

 吟遊詩人(ステファン)が教えてくれた。へー、ここって辺境なのか。


 おい神様? おたく、人里近くっつったよね?



「どう言えばいいものか」
「ああ、無理にお聞きはしませんよ。ただの純粋な興味なので、気分を害したのであれば謝らせて下さい」

 と言うか、よく分からんがかなりフレンドリーと言うか、何と言うか。

「おい、どうした。いきなりへりくだって。いくらお前が丁寧なヤツだったとしても、そこまで譲歩する必要はなくねーか?」

 リーダー(ガルフ)が吟遊詩人(ステファン)の不自然な態度の変化を指摘する。どうやら『生活魔法』の翻訳ミスではないようだ。
 そう思っていると、おもむろに俺の手元を指差す吟遊詩人。
 そこには先ほど仕留めたうさちゃんが。

「なっ!?それはまさか、アンドラビット!?」
「ああ、そのまさかだね」
「そいつなー。おいらも何度か捕まえようとしたんだけど、全然捕まえられないんだよ」

 まじかー。
 『職業:斥候』とか言っちゃう人でさえ無理な小動物なのか。
 俺の目にはその場で寝ているだけのぐーたらうさぎにしか見えんかったんだけど。

「おいらにどうやって捕まえたか教えてくれねえか? お礼はするからよー」

 なにやら怪しげな流れである。
 教えたら、お礼としてこのまま身包みはがされるのだろうか。
 ほとんどが『収納室』に仕舞ってあるので、別に困りはしないんだが。

「頼むよー。ほら、10万円でどうよ?」

 そういって腰の袋から金貨を摘み出す。
 金貨1枚10万円かー。

 って、この世界の通貨単位が円なのかよ!?

 そう思ったが、よく考えたら翻訳されているんだった。
 まぁ、分かりやすくていいか。
 しかしこの反応を見た面々が、またも勘違いをした。

「いや、お前。そりゃ無理だろ。今手元にあるアンドラビットの売値がそもそも最低値で10万円だぞ。それの取り方なんて言ったらその100倍は出さなきゃ誰も言わねーだろ。」
「いやいや、見るだけ、見るだけだから!」

 まじかー。
 このうさちゃん。なんと10万円。
 そして『収納室』にはそれが9羽。
 しかも狩り方は100倍の1億円。これはやばいでござるよ。

 俺の異世界人生、楽勝パターン入ったんじゃないでしょうか!
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