最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

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第一章 リュータ、アールガルズに立つ

第八話 リュータ、名前が変わる

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 しかし、この人に教えるにしても、同じように『調査』して、消臭消音ができるのだろうか。

「えーと、教えるのはいいけど、魔法を使ってるから真似できるかどうか」

 とりあえず素直に答えてみる。

「おおおおお! 本当か! いや、無理しなくてもいいんだぞ!? 何せ一千万円相当だぞ!? そんだけありゃ、家が建つぞ!」

 すごい食い付きである。そして俺氏、算数を間違える痛恨のミスを犯していた模様。
 密かに心に大打撃。
 いや、ほら、だって最近文明に触れてなかったし?
 いくら元大学生だからって、無人島生活を一か月近くしてたら、そうなるじゃん?

 なんて、若干落ち込んでいたら、斥候のジョンソンさんが興奮している理由を話してくれた。

「いやー、おいらもさ。たまーに見るんよ。アンドラビット。でもそれが捕れなくて悔しくってさ」
「俺なんか生のアンドラビットなんて見たことねーぞ。そもそもアンドラビット狩り専門の狩人なんか、普通は貴族お抱えだからな。そのお姿さえ拝見した事ない。あんたは当然、違うんだよな?」
「ここに来たのもついさっきだけど、少なくとも専用の狩人と言う者ではないね」

 しかし、まじかー。
 このうさぎ、斥候クラスの人じゃないとまず発見すらできないのかー。
 しかも専門の狩人で、貴族お抱えじゃないと狩れないって。

 つまり、この辺が辺境なのも考えれば、このうさちゃんズは外敵がいないのかな。
 だからあいつら、あんなのんびりと寝てるのね。


 そして狩りを実演して見せたら、いきなり沈黙してしまった。
 なんと言うかあれだ。
 料理教室に行ったら、こちらが完成品です、以上、となったような空気だ。

「うわー。それはおいらには無理だー」

 そしてがっくりとうなだれるジョンソンさん。
 俺も多分そうだろうなーと思ってた。
 四つん這いになってorzしている姿を見ると、なんだか申し訳ない気持ちになってくるな。

「あんた、いきなりですまなかったな」
「いえ、ガルフさん。別にこの程度であれば」
「そうか! そう言ってもらえると助かる! それと、妙な頼みをした侘びといっちゃなんだが、夜の見張りは俺らに任せてくれ!」
「そうですね。貴重なものも見せて頂いたのでお礼も兼ねて、そうしましょう」

 おお、そうか。
 この世界は危険が一杯だから、野営をするなら休む際には見張り役がいるのか。
 それは助かるなー。

「なら俺は返礼に、このアンドラビットを進呈しようかな。と言うか、晩飯、一緒に食べない?」

 すると、3人が目を見開く。

「い、いや。それはさすがに値が勝ちすぎると言うか。なぁ?」

 リーダーのガルフは興奮する事はあれぞ、やはり良識人のようだ。しかし、他の二人はすでによだれが出ているぞ。
 超イケメンの吟遊詩人も酷い有様で、綺麗な顔がかなり台無しになっていた。
 でもなんか、イケメンの変顔とか、親近感湧くね。

「遠慮しないでくれ。ただ、そうだなー。どうせだからこいつを捌いてくれないか? 見ての通り服を洗濯したからあまり汚したくないんだ」

 そういって石の上にある服を見る。
 すると、向こうは3人で少し見詰め合い、そして同時に頷く。
 俺はウサギの捌き方なんて知らないし、こいつらは1羽10万円のウサギ肉を食える。
 それでこれは、ギヴアンドテイク。
 俺が与え、彼らも与える。

 この世界の人間にも通用するといいな!


***

 結局、助け合いはハンターの必然だと断言したガルフは、俺の提案を受け入れた。
 いやはや、通用したね。ギヴアンドテイク。

「いやー、肉うめー! 酒がほしー!」
「この歯ごたえ、肉汁、たまりません。たっぷり塩も効いていて最高ですね」

 さっきからひたすらにウサギ肉を褒め称えるリーダーと吟遊詩人。
 斥候のジョンソンは何をしているかと言うと、黙々と本気で肉を喰らっている。目がマジなので誰も話しかけられない。
 あのあと解体を見せてもらいながら、これ4人分だと少なくね? と思った俺は追加で3羽狩ってきた。
 よく考えれば俺自身も久しぶりの肉なので大奮発。島で大量に作った塩も提供したら崇められてしまった。

 やはり異世界でも塩は高いんだな、なんて思いつつ肉を喰らう。香辛料なんていらないほど肉に臭みがなく、その割にとても濃い肉感が非常に美味だ。思わず素の感想を述べてしまう。

「本当にうまいな。今まで木の実やキノコがメインだったから、余計にそう思うのか」
「なんだー?お前さんエルフだったのかー?」
「え、いや違うけど」
「そりゃそーだよな。耳尖がってないし!」

 酒も入っていないのにテンション高いな、ガルフ!
 でもなんだろう。決して嫌いな空気じゃなかった。
 これが可愛い女の子じゃないのが不満っちゃー不満だけど、気の合う仲間とバカ騒ぎして食う飯も、旨し!!

 そして、いるのかエルフさん。しかも人類と友好関係っぽい口ぶりだ。敵対していたらこんな言い方はしないはず。これは後でしっかり話を聞かないとな。

 その後、夜半まで話をして、寝て、夜が明けたら出発して、街まで案内してもらうことになった。
 道中で色々と話をしてこの世界の常識を叩き込む。
 実にいい人達だ。
 しかも強くて、大きい猪が出てきた時も3人で連携してあっさり倒していた。
 即席でソリを作って運ぶ姿も、狩り慣れているのが素人の俺でも良く分かった。
 ちょっと、ハンターに憧れた。
 素直にそう言うと、大歓迎だと言われ、街に着いたらギルドに紹介してもらえる事になった。


 この世界の人と出会い、なんだか長いプロローグがやっと終わった気がした。
 これからが本当の異世界物語だ!




 なんて思えていたのは、ほんのわずかな間だけでした。


***

 あれから三度の野営を超えて、四日目の昼前。
 俺たちはガルフたちが本拠地にしてる外れの街ババビアルカに着いていた。
 高い石壁と大迫力の巨大バリスタが壁上にいくつも設置されていて、あれでワイバーンでも狩るのか!? とちょっと興奮した。
 そして隣にあるあの棒みたいなのは投石機だと、ステファンが教えてくれた。

 そんな風に話を聞きながら門に辿り着き、そこで、検問的なものにあっていた。

 俺だけ。

「第5級ハンターのガルフ殿が保証するのだ。問題はないと思うが、この『鑑定石』に手を当ててくれ。確認と記録を取る」
「はーい。ところで、『鑑定石』ってなんですか?」
「よほどの田舎から来たのか。これはな」

 その門兵さんに話を聞くと、その人の名前と年齢と犯罪歴が出てくる不思議な水晶で、魔道具だそうだ。

 魔道具!!

 初魔道具キターと思っていたが、なんだこれ・・・。



- ターナ=ベルータ
  年齢:16
  犯罪:なし
  賞罰:なし



「誰だよこいつ!!」
「いや、お前さんだろ、ターナ」
「いやいや、俺、タナベだし!! リュータだし!?」
「何? どういう事だ!?」

 聞かれても困る。
 するとそこに現れたのが、仮面を付けた金髪の男。

「おや、どうしたのかね?」
「こ、これはクワトリ少佐!!」
「よしたまえ。今の私はしがないハンターだ」
「しかし少佐!! 我々にとってはあなたは未来永劫、救国の英雄です!!」

 何? いきなりすごい人が出てきたんだけど? しかもどこかで聞いたような名前のフレーズ!?

 ガルフ、ガルフー!? そこで固まってないで説明しておくれ!

「お、おお。少佐、戻っていらしたのですね」
「ああ、ガルフ君か。ガールダは中々に厄介な魔物的なモンスターだったが、もれなく討伐した」

 あ、現地の人もちゃんと魔物的なモンスターって言うのか。
 って、そうじゃないでしょ!

「さすが少佐です。しかしこいつが、名前が違うと言い出しまして」
「ほう、どれどれ・・・。なるほど、君は外国の人なのだね。場所によって読み方が変わるのはよくある話だ」
「そうなんですか。さすが少佐です!」

 いやいや


 俺の名前、区切りから変わってるし!?


「何、このように修正すればよいのだ」



- ターナ=ベルータ(タナベ=リュータ)
  年齢:16
  犯罪:なし
  賞罰:なし



「・・・」
「少佐、名字の文字数から違うってあるんでしょうか・・・?」
「いや、あまり、うむ、初めてだな・・・」
「リュータと言う名字もずいぶんと変わっておりますね」


 いや、リュータは名字じゃねーし!?


 しかし結局そのままとなりましたとさ、とほほ。

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