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第三章 リュータと新たな出会い
第三十話 勇者が奴隷となった日
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「面白いですね」
「なニ!? お、オイ、こレが見えナイノか! 超スげーオーラ出てンダゾ、俺様!!」
「ええ、ええ、見えておりますよ」
ユラリ、と膝をついた状態から足を立たせるミチルさん。肩の力を抜いて手をダランとぶら下げている。髪(幻影)も顔を覆い隠すように前に垂れている。コワイ、まるで貞子だ。クロちゃん、過剰演出では?
「大丈夫、問題ない。メスブタが望んだ」
「そうなのかー」
意味分からん。
「勝者がすべてを奪う、ですか。なるほど、さすが先輩、タメになります」
「お、オお? ほ、本当ヵ! な、なラ俺様のか、かカカ、彼女ニィィ」
何言い出してんだあの勇者。唐突に告白したぞ。コミュ障か?
しかしあいつの力は本物だ。俺の『鑑定』さえも弾く、本物の力を持っている。
「そして変態。関わりたくない」
「台無しだよ、クロちゃん!?」
それと俺の思考を読まないで!!
しかし、忍者と言い勇者と言い、職業持ちは変態しかいないのか。
いや、それを言い出すと農家や巫女、大工の皆さまにご迷惑か。
はぁ、ガルフたちに無事連絡は行ったのだろうか。そして俺、どうやって帰ろうかな。
「私、どうやら間違っていました」
「何? や、やっパリ僕とお付キ合いシテクレるンデすか?」
おい勇者、キャラ変わってんぞ。
そしてミチルさんは、右ポケットに手を差し込んで、取り出したのは・・・
「本体。リュータ、両手、出して」
「ん? こ、こうかなってうおっ」
器になるように両手の平を上に向けて合わせていたら、クロちゃんの黒い魔石が現れた!?
「時空魔法もどき、ぶい」
「ブイってあーた・・・、いや、待てよ。と言う事は」
見れば、徐々に消えていくミチルさんの頭部装甲。
「私も本気、出します!! リミッター解除!!!」
シャキーン、って何してんの君ぃ!?
「オ、お前、は、ハゲぼァ!?」
「ヤアア!! ハア! テヤ! トウ! それ以上は! 言わせません!」
己を解き放ったミチルさんの猛攻は、それはそれはもう、すごいものでした。
結果?
ああ、ミチルさんの圧勝だよ。
***
「あの、ありがとうございました!」
「いやいや、目的のものが見つかって、良かったね」
「はい!!」
例のハチマキを身に着けて、頭がフサフサなミチルさんは笑顔を返してくれた。
うんうん、やっぱり年頃の女の子はこうじゃなくちゃね。魅力的だよ。
左手のロープの先に繋がれた、奴隷と化した俺様勇者くんがorzしていなければ、もっと良かったけどね。
「俺様の、俺様の5年が・・・」
ああ、うん、分かるよ。でもね。
「すべてを捨てたか、それとも悪あがきをしてしまったか。その差です!」
そう、彼イトーツ=ヨシ君、伊藤剛君は頭がバーコードだったのです。なんでそこは妥協しちゃったのかな。
「くそっ、そこの男になら勝てたのにっ!!」
「俺の尻はやらんぞ」
「いるかよ!!」
なんてわがままな。
しかし彼の言う通り、俺と彼とでは戦力に差がありすぎる。
『生活魔法』は、実は安全機能があるから、人には通用しない。俺的には最強だと思っているが、それが通用しない人同士の争いはあるのだ。今後の身の守り方も、よく考えなければならないだろう。
「それは無理ですよ。リュータさんが襲われていたら、私がきっと助けに入りましたから」
「な、なんだそれ!? まさかこの男に惚れてたのか!? お二人は、お付き合いをなさっていたのですか?」
そんな事実はないし、彼女の笑顔にはそう言う感情が含まれていないぞ。顔は良いのに、非常に残念な男だな。
「違いますよ。リュータさんは、恩人ですから」
「恩人・・・?」
「そうです!!」
「私が落ち込んでいた時、お部屋を掃除してくれたんです!! あのキレイピカピカなお部屋を見て、私、がんばらなきゃって思ったんです!! その後家の外でアレックスさんとお話していて怒っちゃいましたけどね」
ああ、あったね、そんなの。
「お料理もおいしかったです。べっこう飴!」
べっこう飴を料理と言っちゃうのか、この子。自分を卑下する気はないけど、シルちゃんやあのたこ焼き屋さんを思うと少し恥ずかしい。でも現代日本人ならそんなものなのかな。
「リュータさんには頭が上がらないし、感謝しきりです。何かあったら真っ先に駆け付けますね!!」
「そうか、ありがとう」
「だから今度」
ん?
「私の部屋が汚れたら、助けて下さい!!」
どうやら俺の『生活魔法』は、最強の勇者を虜にしてしまったようだ。
ないわー。
そして彼女たちはすぐに旅立った。
「ねぇ、クロちゃん。俺も東に行った方がいいの?」
クロちゃんは何も答えてくれない。魔力が切れたそうです。
「現在位置がここだから、こうでしょ。そこで、こう。うーん、東へ向かうとアベリア王国とは反対になっちゃうな。一度向こうに戻るのがいいか」
彼女らと道は進む道が違うみたいだけど、これもまた縁でしょう。
彼女らの行く末に乾杯ってね。
「なニ!? お、オイ、こレが見えナイノか! 超スげーオーラ出てンダゾ、俺様!!」
「ええ、ええ、見えておりますよ」
ユラリ、と膝をついた状態から足を立たせるミチルさん。肩の力を抜いて手をダランとぶら下げている。髪(幻影)も顔を覆い隠すように前に垂れている。コワイ、まるで貞子だ。クロちゃん、過剰演出では?
「大丈夫、問題ない。メスブタが望んだ」
「そうなのかー」
意味分からん。
「勝者がすべてを奪う、ですか。なるほど、さすが先輩、タメになります」
「お、オお? ほ、本当ヵ! な、なラ俺様のか、かカカ、彼女ニィィ」
何言い出してんだあの勇者。唐突に告白したぞ。コミュ障か?
しかしあいつの力は本物だ。俺の『鑑定』さえも弾く、本物の力を持っている。
「そして変態。関わりたくない」
「台無しだよ、クロちゃん!?」
それと俺の思考を読まないで!!
しかし、忍者と言い勇者と言い、職業持ちは変態しかいないのか。
いや、それを言い出すと農家や巫女、大工の皆さまにご迷惑か。
はぁ、ガルフたちに無事連絡は行ったのだろうか。そして俺、どうやって帰ろうかな。
「私、どうやら間違っていました」
「何? や、やっパリ僕とお付キ合いシテクレるンデすか?」
おい勇者、キャラ変わってんぞ。
そしてミチルさんは、右ポケットに手を差し込んで、取り出したのは・・・
「本体。リュータ、両手、出して」
「ん? こ、こうかなってうおっ」
器になるように両手の平を上に向けて合わせていたら、クロちゃんの黒い魔石が現れた!?
「時空魔法もどき、ぶい」
「ブイってあーた・・・、いや、待てよ。と言う事は」
見れば、徐々に消えていくミチルさんの頭部装甲。
「私も本気、出します!! リミッター解除!!!」
シャキーン、って何してんの君ぃ!?
「オ、お前、は、ハゲぼァ!?」
「ヤアア!! ハア! テヤ! トウ! それ以上は! 言わせません!」
己を解き放ったミチルさんの猛攻は、それはそれはもう、すごいものでした。
結果?
ああ、ミチルさんの圧勝だよ。
***
「あの、ありがとうございました!」
「いやいや、目的のものが見つかって、良かったね」
「はい!!」
例のハチマキを身に着けて、頭がフサフサなミチルさんは笑顔を返してくれた。
うんうん、やっぱり年頃の女の子はこうじゃなくちゃね。魅力的だよ。
左手のロープの先に繋がれた、奴隷と化した俺様勇者くんがorzしていなければ、もっと良かったけどね。
「俺様の、俺様の5年が・・・」
ああ、うん、分かるよ。でもね。
「すべてを捨てたか、それとも悪あがきをしてしまったか。その差です!」
そう、彼イトーツ=ヨシ君、伊藤剛君は頭がバーコードだったのです。なんでそこは妥協しちゃったのかな。
「くそっ、そこの男になら勝てたのにっ!!」
「俺の尻はやらんぞ」
「いるかよ!!」
なんてわがままな。
しかし彼の言う通り、俺と彼とでは戦力に差がありすぎる。
『生活魔法』は、実は安全機能があるから、人には通用しない。俺的には最強だと思っているが、それが通用しない人同士の争いはあるのだ。今後の身の守り方も、よく考えなければならないだろう。
「それは無理ですよ。リュータさんが襲われていたら、私がきっと助けに入りましたから」
「な、なんだそれ!? まさかこの男に惚れてたのか!? お二人は、お付き合いをなさっていたのですか?」
そんな事実はないし、彼女の笑顔にはそう言う感情が含まれていないぞ。顔は良いのに、非常に残念な男だな。
「違いますよ。リュータさんは、恩人ですから」
「恩人・・・?」
「そうです!!」
「私が落ち込んでいた時、お部屋を掃除してくれたんです!! あのキレイピカピカなお部屋を見て、私、がんばらなきゃって思ったんです!! その後家の外でアレックスさんとお話していて怒っちゃいましたけどね」
ああ、あったね、そんなの。
「お料理もおいしかったです。べっこう飴!」
べっこう飴を料理と言っちゃうのか、この子。自分を卑下する気はないけど、シルちゃんやあのたこ焼き屋さんを思うと少し恥ずかしい。でも現代日本人ならそんなものなのかな。
「リュータさんには頭が上がらないし、感謝しきりです。何かあったら真っ先に駆け付けますね!!」
「そうか、ありがとう」
「だから今度」
ん?
「私の部屋が汚れたら、助けて下さい!!」
どうやら俺の『生活魔法』は、最強の勇者を虜にしてしまったようだ。
ないわー。
そして彼女たちはすぐに旅立った。
「ねぇ、クロちゃん。俺も東に行った方がいいの?」
クロちゃんは何も答えてくれない。魔力が切れたそうです。
「現在位置がここだから、こうでしょ。そこで、こう。うーん、東へ向かうとアベリア王国とは反対になっちゃうな。一度向こうに戻るのがいいか」
彼女らと道は進む道が違うみたいだけど、これもまた縁でしょう。
彼女らの行く末に乾杯ってね。
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