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第三章 リュータと新たな出会い
第三十一話 リュータと天空の試練
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「何と言う事でしょう」
あれから俺もリザードマンの街を離れ、一人エルフの里を目指して北上していた時の事。
俺はそう、すっかりと森の中で迷っていた。
「こっちが北でこっちが南? いや、逆か?」
それと言うのも『生活魔法』の『方位磁石』がグリングリンしてしまっているからです。それはもうグリングリンです。『調査』も受け付けません。
しかし理由はなんとなく分かる。
うっそうと茂った森、密林と言い換えてもいいこの森林は、生活臭がしない。
つまり、完全な自然の中では『生活魔法』の機能が大幅に削がれてしまうのだろう。
「とにかく今は、ご飯だ」
悩んでいても仕方がないので、ご飯の準備をしよう。その前に、軽くでいいから体を拭きたいな。お湯の準備をしよう。
少しだけ広い場所で、魔物除けの魔道具を設置して、かまどを作り、薪を拾い、鍋を、ん?
ギャオオオオオ。
「おや? ん? んん?」
巨大な、ツタ?
の先に、花と口ぃぃぃ!!!
「あひーー!! お助けーー!!」
逃げました、一目散に。道具を『収納室』に放り込んで一目散です。
いやいや、さすがに無理ですよ。生身でビオ〇ンテと対峙するなんて。誰かゴジ〇連れてこい!!
***
「もしかすると、ここはエルフの里の近くではないのかもしれない」
周囲を見渡すが、人型の何かが通ったような跡がない。その代わり、非常に大型の生物が木々に体をこすりつけたような跡が無数にある。ある大きな木には、3本爪で引っかいたような縦傷も見える。
「まさに野生、と言う感じだな」
足元の巨大な根っこをよけながら一人ぼやく。
相手が魔物であればまだ『生活魔法』は攻撃に転用できる。しかしこれがキングワーム様のような「魔物っぽいけど動物」なのであれば通用しない。抵抗する術を失った哀れな俺は、野生の獣にパクパクされてしまうのかもしれない。ちなみに先ほどの巨大食人花も、ただの植物でした。異世界コワイ。
「神様もいい加減だよな。魔物以外に動物も植物も人間パクパクーってしちゃうじゃないか」
自然の摂理と言えば、そうなのだが、それでもファンタジー感が抜けるからやめて欲しい。そして出来ればその事実をくつがえして、俺の命をお助けして欲しい。そこに転がっている小動物の死骸らしき存在と添い寝する趣味はないのです。
「しかし、『生活魔法』も謎が深い魔法だな。誰もが覚えているのに、ここまでの可能性を考慮していない」
だが、それも最近気付いた事がある。
「『生活魔法』のLv2の必要ポイント991pは、どのスキルの消費量よりも多い」
つまり、人々が気軽に覚えられるレベルではない、と言う事だ。
もしかすると単にありふれた『生活魔法』がチートなのではなく、Lv2以上の『生活魔法』がチートなのかもしれない。しかしグラトニーイールには皆さんのLv1の『生活魔法』が通用した。
謎が謎を呼び、やはり分からない。
そして悩んでいると、俺は森の中なのにぽっかりと穴が開いたように木々がない場所に出て、光に包まれ、空高く舞い上がった。
「え? どうなってんの?」
まるでU.F.O.にさらわれる牛みたいにフワフワーっと天へと舞い上がった。
アブダクションはヤメテ!!
***
- ようこそ、勇者よ -
「違います」
- あなたにはこれからここで試練を受けてもらいます -
「やめて下さい、死んでしまいます」
ー ・・・ ・・・ -
・・・。
- ようこそ、勇者よ -
「やり直してもダメです! 俺、勇者じゃないですよ!!」
- なんと・・・ -
「勇者は東、えーと、リザードマンの街トリビュートから東に向かいましたよ」
- おお、勇者よ・・・ 勇者よ・・・ -
・・・。
ぐあ、なんだろう。この重い空気。真っ白で何も見えない景色が余計に重く感じる。人違いでさらわれたのに、相手を気遣ってしまうような、はかなくも永久のカナシな気分。すれ違い、空。
- なら、しょうがないわね -
へ?
- ねぇ、あなた。折角だから試練、受けてみない? -
軽! 超軽いよ! 何その扱いの差!! 雲より軽いんじゃないですかね!
しかし俺の答えは決まっている。
「いえ、帰して下さい」
- そう言わずに、ね? なんならほら、今ならクリアすれば豪華特典があるのよ! -
静かに首を振る。
勇者が挑むような試練に対抗できるような、そんな力は持ち合わせていない。期待に応えられないのは心苦しいが、どうかちゃんと勇者を呼んで試練をこなしてもらって欲しい。
- はいはい、一名様、ごあんなーい -
ちょ!?
いきなり飛ばされて、何やら真っ白い空間に辿り着いた。
- ハアイ! 早速だけど、試練について説明するわね! -
「待って欲しい! ちょっと、本当に、待って欲しい!!」
- ・・・、はぁ。何よ? -
何その明らかに不機嫌そうな声!!
人の事を間違って拉致監禁しておいてなんて態度だ。
いやしかし、俺もここで退けない。相手が例え超常の存在だとしても、人として、これは譲れない。
「トイレを貸してください」
- はぁ? -
だって、密林で迷ってからもう三日もしてないんだもの!! 私、限界よ!!
***
その後、食事に風呂に睡眠までねだったら、小さな一軒家を用意してくれた。真っ白な空間にポツンとあるその家で俺はゆっくりと休んだ。そして俺の体調は今や万全だった。
試練とやらがどのようなものかは知らないが、どのみちあのまま密林にいたら休むこともままならず、俺は遠くないうちに倒れていただろう。その点には感謝する。
- それで、もういいのね? -
「おいっちにっと。よし、体調は十分。しかし俺は勇者じゃないんで、過度に期待されても困りますよ」
- 分かってるわよ。これは、人の本質を見抜く為の試練だから気にする必要はないわ -
本質、本質か。
もしかしておばあちゃんエルフであるシルちゃんに欲情したかーとか、そう言うの聞かれるのかな。やだ、恥ずかしいわ。
- 何を考えているのか知らないけど、いいわね? -
「はーい」
ゴキリゴキリと首をならして、気合を込める。
こうなったら試練をクリアして、無事に帰る。今はそれだけに集中しよう。
- では第一の試練、魔物討伐よ!! -
え?
複数あるなんて聞いてない。
魔物討伐なんて、聞いてないよー。
***
- 聞きたいのだけれど、あなた、本当に 勇者 じゃないのよね? -
「違いますよ、見ての通りです」
ヒュン、ヒュンヒュヒュン。
今日も棍が冴えわたるな。我虎牙棍も満足しているようだ。名前が少しばかりアレだけど、こいつは実にいい武器だ。おや? 棍の中央、こんな所にスイッチがあるぞ。
「ポチっとな」
ガコガコン!!
「はぁ!? 変形した!!」
- ちょっとあなた、何をやっているのよ。はぁ、今回のお客さんはずいぶんと変わってるわね -
サーセン。
って、違う。棍が開いて、サーベルになったのだ。驚くなと言う方が、無理がある。
「いや、質量保存とか、どうなっちゃった訳!?」
形状どころか大きさも重さも変わっちゃってるんですけど!?
- 魔道具ごときで騒がないでくれるかしら -
魔道具。そうか、これ、魔道具だったのか。そして持ち手の下部にスイッチがある。ポチっとな。
ガコガコン!!
「なるほど、すごいな。と言うか、あの鍛冶屋、どうして教えてくれなかったのか」
そして落ち着いたらまた来いって、こういう事か。
しかしサーベルを扱う腕なんて持ち合わせていない。宝の持ち腐れか。
- 変わっているのはそうだけど、驚く事でもないでしょう。サーベル型の杖なんて、私も初めて見たけど、魔法を使うのなら悪くない武器ね -
杖!?
え、今の、杖だったの?
どうなってんだ、異世界。
***
- はいはい、第二の試練、行くわよ -
「随分と投げやりですね」
- 仕方ないじゃない。あなた、変なんだもの -
「え? それって勇者よりも?」
それはちょっと、しょっく。
- 第二の試練は、忍耐よ。先に進みなさい -
忍耐。
何が出てくるのだろうか。
そう思い、一歩踏み出すと景色が変わった。
ここは・・・
「和室?」
足を一歩踏み入れただけなのにすでに室内で驚く。しかもまるで千利休の茶室みたいな建物が、昨晩の一軒家と同じように真っ白な空間の中にポツンと建っているようだ。そして、目の前にはお座敷、畳張りの部屋が見える。
ブーツを脱いで、置いてあった足ふきで足を拭いて上がりました。
- 忍耐を図る為に、耐久正座よ!! -
ああ、うん。確かに正座って慣れないとつらいもんね。
はい、なら始めましょうか。
- 座ったわね。では、スタートよ!! -
~~ 一時間経過 ~~
「はぁ、このお茶も中々に、旨し」
出された番茶とお茶請けを頂く。実に優雅な時間である。
~~~ 二時間経過 ~~~
「いやー、晩ご飯までごちそうになっちゃって、すいませんね」
出てきた本格的な懐石料理を頂く。小鍋に出汁の利いた水炊きがまた、うまし。
~~~~ 三時間経過 ~~~~
ー ちょっとちょっと! いつまでそこに居座る気なのよ!! -
「え? 止めてもらうまでですが、何か?」
だって、せんべいとか、お米とか、もう何か月ぶりかって代物が出てきたんだもの。しっかり味をかみしめないと、もったいないでしょう?
心ゆくまで味わいたいのです。
- 何か、じゃないわよ!! ああ、もうこんな時間! -
そう言われても、畳と和室の部分以外真っ白で何も分からない。『ステータス』も見れないから時間も分からないのです。
ー もう、もういいわ! この試練は終了!! お、おかしいわね。現代っ子はこれに弱いって聞いてたんだけど・・・ -
おう。
年寄りっ子なめんなよ。
それとご褒美の一つに、お米を入れておいてください。
「ついでに今日はここで寝てもいいですか?」
ガタン!!
おや、誰かがコケる音がしたぞ。
- い、いいわ。お風呂もお布団も用意してあげる。今日の所はこれまでにしておくわ -
やった! 言ってみるもんだね。
***
そして一夜が明けました。トイレに行き、顔を洗い歯を磨いた。
窓の外を見るけど、相変わらず辺りは真っ白。そしてそんな空間に、デ・ジャ・ビュー。
「質問、いいですか?」
- なに? 朝ご飯にはもう少しかかるわよ - トントントン
ご飯作ってくれてたの、この声の主かよ!?
いやいや、俺の疑問はそうじゃない。それも気になるが、うまかったのでよかろうなのだ。
「ここもしかして、「原初の白のダンジョン」ですか?」
トントン、トン
- 違うわよ -
トントントン
今の感じからすると嘘ではない模様。では一体どこなのか。
- ほら、出来たわ -
わーい!! どこからともなく食卓と共に朝ご飯が現れた。
本日の朝ご飯は、なんと米、ミソ汁、焼き鮭、おしんこ。
「これだけで500円は固いわー」
- なんなのよ、その高いのか低いのか分からない微妙な評価は -
これでも高評価です!
と言う訳で今朝もおいしいご飯を堪能しました。
***
- ふ、ふふふ・・・ -
いきなり笑い出して、何なのだろうか。
- 最後の晩餐は終わったようね!! -
「な、なにぃ!?」
朝なのに、晩餐・・・。
- 食後の腹ごなしついでに、第三の試練を受けてもらうわ!! -
「なんだと!?」
今度は何をさせられるのだろうか。おいしいものだといいのだが・・・。
- 第三の試練は、獣の間! 『生活魔法』が通用しない獣たちに、なぶられなさい! -
え?
ガコン、と扉が開いた音と共に和室が消失!!
そして、うん、周囲に壁がせり上がってくる。
広さは学校の体育館くらいだろうか。そしてその中には、床一面びっしりの
「猫!?」
地球にいるのと同サイズの猫が、フシャーーフシャーーと鳴いていた。威かくされている模様。
- さぁ、今度はどうするのかしら? 犬派のターナさん? -
ターナさん、そんなとこにいたんですか!
じゃなくて、なんで俺が犬派だと知っているんだ!
だが
「なめるな!!」
- な!? -
俺は、俺はな!
ガコガコン!!
「猫もそこそこ、好きなんだーーー!!」
ぶわーーーーー!!
あれから俺もリザードマンの街を離れ、一人エルフの里を目指して北上していた時の事。
俺はそう、すっかりと森の中で迷っていた。
「こっちが北でこっちが南? いや、逆か?」
それと言うのも『生活魔法』の『方位磁石』がグリングリンしてしまっているからです。それはもうグリングリンです。『調査』も受け付けません。
しかし理由はなんとなく分かる。
うっそうと茂った森、密林と言い換えてもいいこの森林は、生活臭がしない。
つまり、完全な自然の中では『生活魔法』の機能が大幅に削がれてしまうのだろう。
「とにかく今は、ご飯だ」
悩んでいても仕方がないので、ご飯の準備をしよう。その前に、軽くでいいから体を拭きたいな。お湯の準備をしよう。
少しだけ広い場所で、魔物除けの魔道具を設置して、かまどを作り、薪を拾い、鍋を、ん?
ギャオオオオオ。
「おや? ん? んん?」
巨大な、ツタ?
の先に、花と口ぃぃぃ!!!
「あひーー!! お助けーー!!」
逃げました、一目散に。道具を『収納室』に放り込んで一目散です。
いやいや、さすがに無理ですよ。生身でビオ〇ンテと対峙するなんて。誰かゴジ〇連れてこい!!
***
「もしかすると、ここはエルフの里の近くではないのかもしれない」
周囲を見渡すが、人型の何かが通ったような跡がない。その代わり、非常に大型の生物が木々に体をこすりつけたような跡が無数にある。ある大きな木には、3本爪で引っかいたような縦傷も見える。
「まさに野生、と言う感じだな」
足元の巨大な根っこをよけながら一人ぼやく。
相手が魔物であればまだ『生活魔法』は攻撃に転用できる。しかしこれがキングワーム様のような「魔物っぽいけど動物」なのであれば通用しない。抵抗する術を失った哀れな俺は、野生の獣にパクパクされてしまうのかもしれない。ちなみに先ほどの巨大食人花も、ただの植物でした。異世界コワイ。
「神様もいい加減だよな。魔物以外に動物も植物も人間パクパクーってしちゃうじゃないか」
自然の摂理と言えば、そうなのだが、それでもファンタジー感が抜けるからやめて欲しい。そして出来ればその事実をくつがえして、俺の命をお助けして欲しい。そこに転がっている小動物の死骸らしき存在と添い寝する趣味はないのです。
「しかし、『生活魔法』も謎が深い魔法だな。誰もが覚えているのに、ここまでの可能性を考慮していない」
だが、それも最近気付いた事がある。
「『生活魔法』のLv2の必要ポイント991pは、どのスキルの消費量よりも多い」
つまり、人々が気軽に覚えられるレベルではない、と言う事だ。
もしかすると単にありふれた『生活魔法』がチートなのではなく、Lv2以上の『生活魔法』がチートなのかもしれない。しかしグラトニーイールには皆さんのLv1の『生活魔法』が通用した。
謎が謎を呼び、やはり分からない。
そして悩んでいると、俺は森の中なのにぽっかりと穴が開いたように木々がない場所に出て、光に包まれ、空高く舞い上がった。
「え? どうなってんの?」
まるでU.F.O.にさらわれる牛みたいにフワフワーっと天へと舞い上がった。
アブダクションはヤメテ!!
***
- ようこそ、勇者よ -
「違います」
- あなたにはこれからここで試練を受けてもらいます -
「やめて下さい、死んでしまいます」
ー ・・・ ・・・ -
・・・。
- ようこそ、勇者よ -
「やり直してもダメです! 俺、勇者じゃないですよ!!」
- なんと・・・ -
「勇者は東、えーと、リザードマンの街トリビュートから東に向かいましたよ」
- おお、勇者よ・・・ 勇者よ・・・ -
・・・。
ぐあ、なんだろう。この重い空気。真っ白で何も見えない景色が余計に重く感じる。人違いでさらわれたのに、相手を気遣ってしまうような、はかなくも永久のカナシな気分。すれ違い、空。
- なら、しょうがないわね -
へ?
- ねぇ、あなた。折角だから試練、受けてみない? -
軽! 超軽いよ! 何その扱いの差!! 雲より軽いんじゃないですかね!
しかし俺の答えは決まっている。
「いえ、帰して下さい」
- そう言わずに、ね? なんならほら、今ならクリアすれば豪華特典があるのよ! -
静かに首を振る。
勇者が挑むような試練に対抗できるような、そんな力は持ち合わせていない。期待に応えられないのは心苦しいが、どうかちゃんと勇者を呼んで試練をこなしてもらって欲しい。
- はいはい、一名様、ごあんなーい -
ちょ!?
いきなり飛ばされて、何やら真っ白い空間に辿り着いた。
- ハアイ! 早速だけど、試練について説明するわね! -
「待って欲しい! ちょっと、本当に、待って欲しい!!」
- ・・・、はぁ。何よ? -
何その明らかに不機嫌そうな声!!
人の事を間違って拉致監禁しておいてなんて態度だ。
いやしかし、俺もここで退けない。相手が例え超常の存在だとしても、人として、これは譲れない。
「トイレを貸してください」
- はぁ? -
だって、密林で迷ってからもう三日もしてないんだもの!! 私、限界よ!!
***
その後、食事に風呂に睡眠までねだったら、小さな一軒家を用意してくれた。真っ白な空間にポツンとあるその家で俺はゆっくりと休んだ。そして俺の体調は今や万全だった。
試練とやらがどのようなものかは知らないが、どのみちあのまま密林にいたら休むこともままならず、俺は遠くないうちに倒れていただろう。その点には感謝する。
- それで、もういいのね? -
「おいっちにっと。よし、体調は十分。しかし俺は勇者じゃないんで、過度に期待されても困りますよ」
- 分かってるわよ。これは、人の本質を見抜く為の試練だから気にする必要はないわ -
本質、本質か。
もしかしておばあちゃんエルフであるシルちゃんに欲情したかーとか、そう言うの聞かれるのかな。やだ、恥ずかしいわ。
- 何を考えているのか知らないけど、いいわね? -
「はーい」
ゴキリゴキリと首をならして、気合を込める。
こうなったら試練をクリアして、無事に帰る。今はそれだけに集中しよう。
- では第一の試練、魔物討伐よ!! -
え?
複数あるなんて聞いてない。
魔物討伐なんて、聞いてないよー。
***
- 聞きたいのだけれど、あなた、本当に 勇者 じゃないのよね? -
「違いますよ、見ての通りです」
ヒュン、ヒュンヒュヒュン。
今日も棍が冴えわたるな。我虎牙棍も満足しているようだ。名前が少しばかりアレだけど、こいつは実にいい武器だ。おや? 棍の中央、こんな所にスイッチがあるぞ。
「ポチっとな」
ガコガコン!!
「はぁ!? 変形した!!」
- ちょっとあなた、何をやっているのよ。はぁ、今回のお客さんはずいぶんと変わってるわね -
サーセン。
って、違う。棍が開いて、サーベルになったのだ。驚くなと言う方が、無理がある。
「いや、質量保存とか、どうなっちゃった訳!?」
形状どころか大きさも重さも変わっちゃってるんですけど!?
- 魔道具ごときで騒がないでくれるかしら -
魔道具。そうか、これ、魔道具だったのか。そして持ち手の下部にスイッチがある。ポチっとな。
ガコガコン!!
「なるほど、すごいな。と言うか、あの鍛冶屋、どうして教えてくれなかったのか」
そして落ち着いたらまた来いって、こういう事か。
しかしサーベルを扱う腕なんて持ち合わせていない。宝の持ち腐れか。
- 変わっているのはそうだけど、驚く事でもないでしょう。サーベル型の杖なんて、私も初めて見たけど、魔法を使うのなら悪くない武器ね -
杖!?
え、今の、杖だったの?
どうなってんだ、異世界。
***
- はいはい、第二の試練、行くわよ -
「随分と投げやりですね」
- 仕方ないじゃない。あなた、変なんだもの -
「え? それって勇者よりも?」
それはちょっと、しょっく。
- 第二の試練は、忍耐よ。先に進みなさい -
忍耐。
何が出てくるのだろうか。
そう思い、一歩踏み出すと景色が変わった。
ここは・・・
「和室?」
足を一歩踏み入れただけなのにすでに室内で驚く。しかもまるで千利休の茶室みたいな建物が、昨晩の一軒家と同じように真っ白な空間の中にポツンと建っているようだ。そして、目の前にはお座敷、畳張りの部屋が見える。
ブーツを脱いで、置いてあった足ふきで足を拭いて上がりました。
- 忍耐を図る為に、耐久正座よ!! -
ああ、うん。確かに正座って慣れないとつらいもんね。
はい、なら始めましょうか。
- 座ったわね。では、スタートよ!! -
~~ 一時間経過 ~~
「はぁ、このお茶も中々に、旨し」
出された番茶とお茶請けを頂く。実に優雅な時間である。
~~~ 二時間経過 ~~~
「いやー、晩ご飯までごちそうになっちゃって、すいませんね」
出てきた本格的な懐石料理を頂く。小鍋に出汁の利いた水炊きがまた、うまし。
~~~~ 三時間経過 ~~~~
ー ちょっとちょっと! いつまでそこに居座る気なのよ!! -
「え? 止めてもらうまでですが、何か?」
だって、せんべいとか、お米とか、もう何か月ぶりかって代物が出てきたんだもの。しっかり味をかみしめないと、もったいないでしょう?
心ゆくまで味わいたいのです。
- 何か、じゃないわよ!! ああ、もうこんな時間! -
そう言われても、畳と和室の部分以外真っ白で何も分からない。『ステータス』も見れないから時間も分からないのです。
ー もう、もういいわ! この試練は終了!! お、おかしいわね。現代っ子はこれに弱いって聞いてたんだけど・・・ -
おう。
年寄りっ子なめんなよ。
それとご褒美の一つに、お米を入れておいてください。
「ついでに今日はここで寝てもいいですか?」
ガタン!!
おや、誰かがコケる音がしたぞ。
- い、いいわ。お風呂もお布団も用意してあげる。今日の所はこれまでにしておくわ -
やった! 言ってみるもんだね。
***
そして一夜が明けました。トイレに行き、顔を洗い歯を磨いた。
窓の外を見るけど、相変わらず辺りは真っ白。そしてそんな空間に、デ・ジャ・ビュー。
「質問、いいですか?」
- なに? 朝ご飯にはもう少しかかるわよ - トントントン
ご飯作ってくれてたの、この声の主かよ!?
いやいや、俺の疑問はそうじゃない。それも気になるが、うまかったのでよかろうなのだ。
「ここもしかして、「原初の白のダンジョン」ですか?」
トントン、トン
- 違うわよ -
トントントン
今の感じからすると嘘ではない模様。では一体どこなのか。
- ほら、出来たわ -
わーい!! どこからともなく食卓と共に朝ご飯が現れた。
本日の朝ご飯は、なんと米、ミソ汁、焼き鮭、おしんこ。
「これだけで500円は固いわー」
- なんなのよ、その高いのか低いのか分からない微妙な評価は -
これでも高評価です!
と言う訳で今朝もおいしいご飯を堪能しました。
***
- ふ、ふふふ・・・ -
いきなり笑い出して、何なのだろうか。
- 最後の晩餐は終わったようね!! -
「な、なにぃ!?」
朝なのに、晩餐・・・。
- 食後の腹ごなしついでに、第三の試練を受けてもらうわ!! -
「なんだと!?」
今度は何をさせられるのだろうか。おいしいものだといいのだが・・・。
- 第三の試練は、獣の間! 『生活魔法』が通用しない獣たちに、なぶられなさい! -
え?
ガコン、と扉が開いた音と共に和室が消失!!
そして、うん、周囲に壁がせり上がってくる。
広さは学校の体育館くらいだろうか。そしてその中には、床一面びっしりの
「猫!?」
地球にいるのと同サイズの猫が、フシャーーフシャーーと鳴いていた。威かくされている模様。
- さぁ、今度はどうするのかしら? 犬派のターナさん? -
ターナさん、そんなとこにいたんですか!
じゃなくて、なんで俺が犬派だと知っているんだ!
だが
「なめるな!!」
- な!? -
俺は、俺はな!
ガコガコン!!
「猫もそこそこ、好きなんだーーー!!」
ぶわーーーーー!!
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夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
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