最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga

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第四章 リュータ、定住する

第四十一話 突貫、撃滅、登場

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「作戦開始まで、あと、10・・・9・・・」

 カウントダウンが始まった。これが0となったら俺は今から魔物的なモンスターの群れの中へと突撃する。
 現在位置は、巨人族の皆さんが逃亡に利用したと言う廃坑跡。山の麓から侵入し、その先はミントさんの自宅の裏の倉庫へと繋がっている。廃坑跡なのでかなりの大きさのトンネルだが、さすがに左右の突起を付けたままでは、魔道馬車で突入は出来ず、武装をいくつか外すハメとなっている。
 なお、何故この場に魔物的なモンスターがいないのかと言えば、理由はこれである。

「ギガローリングカメムシ。まさかここが繁殖地とは・・・」
「全ての生命の敵だが、今はこれほど頼もしい存在もないな」

 ウィルがそう呟く通り、一時期は憎しみさえ感じたその存在が、まさかの救世主だった。
 廃坑になった原因もこいつらの所為なので、感謝してよいのか悩むところだとオーリム王子は言っていたっけ。

 ちなみに、この世界における動物の立ち位置はかなり特殊だ。何せ人と敵対どころか動物も容赦なく食うのが魔物的なモンスターなのである。ゲームなんかでよくある、ゴブリンと動物が共生している森があるような一種の優しさは、この世界には存在しなかった。魔物的なモンスターは、人を含む動物を見たら、容赦なく食らう。ヤツらはハラペコキャラなのだ。
 だから動物たちも魔物的なモンスターに食われないだけの力を持った者のみが生き延びている。キングワーム様しかり、クラーケンしかり。そして、カメムシしかり。


「お香が利いて良かった。俺も魔力を温存できるし助かりました、ミントさん」
「魔道馬車全体に行き渡らせる都合、それほど長時間は持たないわ。行きは良くても帰りは厳しいわね」

 ミントさんの言う通り、実は帰りの分の対カメムシお香はない。それどころか、全力で移動しなければ行きも最後まで持たないだろう。幸いにも馬車の中は密封されているが、ガスマスクと同じで換気機構も無限ではない。魔石の魔力が失われれば、即座に酸素不足となってしまうだろう。そうなれば俺たちに待ち受けているのは、カメムシの充満する洞窟での確実な死である。そのために今は極力魔力を温存する方向だが、いずれにせよギリギリの戦いになりそうだった。


「2・・・1・・・0!!」
「ゴー! ゴー! ゴー!!!」
「任せるがいい! スロットル全開! 行くぞ、ヘンタイ二号!!」

 なお、ヘンタイ一号とは俺が頼んでいた耕運機の事でした。


***

「リュータ! あと少しで出るぞ!! 備えろ!」
「分かった! ・・・、でも、本当にやるの?」
「当然だ! よ!」
「なんだその不名誉な二つ名は!!!」

 誰だよ考えたヤツ!

「リュータ、そろそろ廃坑から出るわ」
「分かったよ、ミントさん! ちくしょーめ!!」

 今、唯一の癒しは抱きしめてくれているミントさんのぬくもりだけだ。なお、鎧越しなので全く柔らかくない。くやしいっ。でも感じちゃう。確かなぬくもりっ。

「衝撃に備えろ!! ぐ、ごあ!!」

 ドカーンと言う音と共に魔道馬車が宙を舞う。上り坂となっていたために地上に出たと同時に空へと投げ出されたのだろう。そして次に来るは、着地の衝撃。かなりいい音と何かを潰した衝撃が響く。俺はミントさんに抱きかかえられているので衝撃は少ないが、直接座っているウィルとミントさんはつらそうな表情をしていた。
 そして、そんな二人の行動に報いるべく、俺は緊急脱出ボタンを押す。

「じゃ、行ってくる!!」

 ウイーンと天井部が開き、サンルーフかよと突っ込みたくなりながら俺は屋上へと躍り出た。

 眼下に広がるのは、虎、シロクマ、マンモス・・・おい、ここはなんだ? 動物園か?
 しかし虎は例のブレードタイガー、クマは真っ白の毛並みに赤い葉脈のようなものを全身に這わせ、マンモスに至っては鼻が五本も生えている。フォルムも凶悪だが、おそらく実力も凶悪。こんなのが動物園にいたらまず子供は来ないだろうな。
 そう考えていると、サンルーフがピシャリと閉まった。おっといけない。しっかり捕まっていないと振り落とされるな。

『リュータ! やるのだ!』
「あいよー」

 『芳香剤:カメムシ(強)』 発動!

 いきなり俺から半径20m付近の連中が身もだえし、悶絶し、泡を吹いて倒れた。

 こうか は ばつぐんだ !

 ミントさんやペパミンさんが言うには、こいつら強力な魔物的なモンスターは五感が異常に発達しているので、逆にそれが仇となりダンジョン上層部にいるカメムシを乗り越えられないらしい。ある意味、ダンジョンのフタとしての機能を果たしていたカメムシだが、それもまたダンジョンの間引きを制限する理由となり、今回の事態を招いたのではないかと推測していた。ぶっちゃけ、ダンジョンの底の方に凶悪なのが溜まりに溜まって爆発したと言うのが巨人族の見解だった。
 ただし、ただ溜まっただけならカメムシを乗り越えられないので結局は自滅するだけで、今回のようにはならない。

「つまり、カメムシを超えられる存在がダンジョンに現れた、と言う訳だけど」

 今までも辛うじて共生、と言うよりも不干渉主義なのか、無駄にカメムシに手を出さなかったコウモリ型やネズミ型は同じ階層にいられたようだが、今回はそんなものとは格が違う存在が生まれたらしい。だが、逃げるので精いっぱいだった巨人族の方々はその姿を確認できていないそうだ。
 そして今回の依頼は、それを見つけ、討伐する事。個体数は1体か、いても数体だろうとはミントさんの言である。

「その間、こうやって間引きしながら悪臭を放つって、なんだかすごく切ない・・・」
『寒くはない? 大丈夫かしら』
『リュータの事だ。心配などするだけ無駄だ。あれは歴戦の勇士ぞ』

 ウィルぅぅぅ! お前何勝手に余計な事をミントさんに言ってるわけ? 俺に何か恨みでもあるの? 美人のお姉さんに心配される役得を奪ってさぁ。

 まぁ、必死になって屋根にへばりついている俺が何を言っても格好悪いだけなんですけどね。これ、こういうの、映画で見た事あるよ。JCの、あれ!

「うわぁぁぁ!! お助けええええ!!」
『リュータはやる気満々ね。さすがだわ』
『何を言っているのかは聞こえんが、あれは戦士の雄叫びと言うものだろう。頼もしい限りだ。俺も負けてはいられんな』

 ドリフトからの、アクセルターン! サイドの突起物がないから前と後ろのラムで対処しようとしているんだろうけど、おい待て! 振り落とされそうだし、酔う! やめて! げ、ゲロゲロゲロ・・・。

「よ、『酔い止め』・・・。ああ、こんな『生活魔法』もあるのか。うひー。MPを無駄に消費しちゃったじゃないか」
『そろそろ例の秘密兵器はどうだ?』
「あ、ああ。近くのはいなくなったし、頃合いだと思う」
『お願いね、リュータ』

 ミントさんに色っぽく頼まれたら、応えない訳にはいかんでしょ。そしてウィルは後で覚えとけ。


***

「宙のダンジョンコア、君に決めた!」

 取り出したりますは、出発直前にシルちゃんが魔力を充填してくれた宙のダンジョンコアの魔石。早速ソラミちゃんを呼び出します。

「ソラミちゃん! 魔物的なモンスターがいじめるよー!!」
「あら、しょうがないわね。私に任せない」

 しゃなり、しゃなりと出てきたのは80年代をほうふつとさせる動きをするソラミちゃん。何故だろう。彼女が最も「自称笑いの神」の使徒である俺に似合っていると思ってしまった。言ったら絶対に怒られるけど。

「出てきて早々で悪いんだけど、お願いできますか?」
「いいわよ。元々そう言う話だったから、やってあげるわ」
「ありがとう! さすがデキる女だ! ホレそうだ!」

「・・・、今まではホレていなかったの?」


 やっべぇぇぇぇぇ! 良く分からんが、地雷を踏んだぁぁぁぁ!!!


「あ、いえ。惚れ直した? ご、ごめん、俺、女性とお付き合いした事なくて気の利いた言葉がうまく出ないんだ!」
「あらそうなの。それならしょうがないわね。うん、しょうがないわ」

 セーフ。俺の中でセーフ。
 色々とアウトな発言だった気もするし、『ステータス』に次々と妖精クインテットの面々から書き込みがされているけど、セーフ!

「派手にいくわよ。『メテオ』!!」

 ピカーっとソラミちゃんの伸ばした指先が光ったと思ったら、その光が上空へと消えた。そして落ちてくるは、今度こそ隕石。

「あれ? でも目的地より遠い場所に落下するの?」
「あれでもまだ近いわ。これ以上近いと衝撃波を殺しきれないの。さぁ来るわよ、備えて」
「わ、分かりました! ウィル! ミントさん! 衝撃がくるって!!」
『聞こえておるぞ。こちらは大丈夫だ』
『ええ。それに私は君を信じているから』

 なにそれ。ミントさん、もしかして俺に惚れたの? 声色が明らかに年下の少年に向けるような慈しむ調子だけど、それでも俺、いいよ?

「何あの女。私とキャラ、被ってるわね。消す?」
「か、被ってない! 被ってないから魔法に集中してください! なんか光が強くなってきましたよ!?」
「あら、そうね。『障壁展開』」

 ブオンと言う感じで魔法陣が作られて、俺と魔道馬車を中心に透明な壁が現れた。その直後、ズン、と腹に響く音と言うか振動が響いて、次には世界から音が消えた。
 一瞬の閃光の後に世界を波が駆け抜けた。景色が色あせ、地面がめくりあがっていく。同時に魔物的なモンスターが舞い上がり、粉々になって砕けていく。そして砂埃、いや、土砂によって全く前が見えなくなり、辺り一面を暗闇が覆った。その最中も振動は続き、障壁越しでも天地がひっくり返ったのかと錯覚するほどの揺れが続いた。


***

「なぁ。これって俺たちが諸悪の権化を探す必要なかったんじゃないのか?」
『俺もそう思うぞ』
『確実に引っ張り出す為には必要だった。私たちはいわばまき餌ね』

 そうか。これだけの超広範囲魔法を前に、それでも逃げられる危険性を考えての作戦だったのか。

「って、ンな訳あるか!! って、え? べっこう飴? ええ、はい。ありがとうございました」

 そしてソラミちゃんは消えた。


 いや、逃げた?

 [真紅:ソラミのヤツ、やりすぎだ。全力出しすぎて出がらしになってるよ]
 [藍子:地形が変わってしまいましたね。ここに人が住むのは無理でしょう]
 [クロノ:火力バカは当分寝てる。今がチャンス、フヘヘ]

 その後、顔に落書きしてやろう、などと不穏当な発言が飛び出ていたようだが、俺は見なかった事にした。俺の『収納小箱』の中は一体どうなっているのだろう。いつの間にか、妖精さんの憩いの場と化してはいないだろうか。

 [ソラミ:やめなさい! ああ、もう時間がないわ! 一匹残ったわ! そいつは自分でなんとかしなさい! お休み!]

「え、ええ、お休み。って、ええええ!?」

 疲れているのに律儀にお休みを言う辺り、やはりいい女である。そしてそんな彼女からもたらされた情報に驚いた。あんな状況でもまだ生き残りがいるだと!?

「ウィル! ミントさん! 気を付けて! まだ魔物的なモンスターの生き残り・・・が?」


 ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


「な、なんだあれ・・・ガ〇ラ?」

 そう、ソラミちゃんの『メテオ』にも耐えたのは、巨大なカメの魔物だった。

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