最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga

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第六章 リュータと神と勇者の秘密

第六十三話 軍人はお姫様

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 シルちゃんを連れ、ガルフに案内されて応接室に入った所、扉が開いたと同時くらいにソファーに座っていた妙齢の女性が立ち上がり、そしてソファーの背後に控えていた男性二人も扉の方、つまり俺の方を向いていた。

 すごく統率の取れた行動にびっくりしつつも、軽く会釈をした。

「お初にお目にかかる。私は近衛魔戦部隊、隊長のアンリエットである」
「はい、初めまして」

 辛うじて挨拶を捻り出し、返答する。
 そして着席を促すと、俺の移動を待たずしてその女性は直ぐにソファーに座り直した。

 この時点で、相手が今名乗った以上の肩書を有しているのが良く分かった。

 何せ普通の立場ならば、こちらが促したとは言え、こんな即座に座る事はない。社交辞令的な面倒くさいやり取りがあった末に、俺がソファーまで移動して、お互いが対面となった所で着席するからだ。
 そうしないと言う事は、普段はそうやって相手を過剰に気遣うだけの立場にないと言う事だろう。

 俺はシルちゃんを伴い、アンリエット様の正面へと移動しつつ彼女をそれとなく観察した。

 今の大仰な肩書の通り、王家直属の魔法を使って戦う部隊の隊長さんだと言うのが良く分かる見た目をしている女性だ。
 ピシっと着こなした軍服めいた上下に、丈夫そうなマントを羽織り、肩にはウィルに教えてもらった軍で偉い人の証である肩章が付いている。
 パッと見ただけで、俺が長剣持って突き刺しても、まるで刃が通らなさそうなくらいに頑丈そうな装備だ。

 それ以外に目に付くだけでも、高そうなティアラに、高そうなネックレスに、高そうな腕輪に、高そうな杖。
 そして高そうなのに装飾が最低限で、かつ必要なものは全て揃っているかのような機能美に溢れている。

 素人目にでも分かる。

 この人は、凄腕の魔法使いだ。

「一応だが、この国の第十八王女様である。しかし、立場としては男爵と同位なので畏まる必要はない。出来るならば対等な対応を望む。いかがだろうか?」

 追加情報。
 この人、王女様だって。


 ・・・、え?

「王女様、ですか?」
「畏まる必要はない。継承権などとうに放棄しておるしな」

 ・・・、うーん。
 そう言えば、国王様も割と気さくな人だったな。

「分かった。じゃぁ、こういう感じで」
「フフッ、そうだな。そういう感じで、頼む」

 お、笑った。
 今までキリっとした表情だったけど、笑うとものすごい美人だなぁ。


 ぶしつけにならない程度に、今度は彼女自身を上から下まで見てみる。

 まず顔は、王女様と言う話を聞いたうえで見ると「なるほど」と思える程度には、国王様や、恐らく兄妹であろうオーリム王子に似ている。特に引き締まった表情の時の眼光は結構なもので、一重まぶただから余計に鋭さを感じさせるのがそっくりだ。
 そして整った顔立ち、軍属だからあまり手入れをしていないのかややゴワっとしているもの、それでも元の素材の良さを感じさせる金の髪。
 正直に言って、うちの周りにはいない感じの綺麗なお姉さん系の美人さんだ。

 そう言うと誤解を与えそうだけど、シルちゃんもそうだが、ミチルさんもどちらかと言えばカワイイ系だから、タイプが違うと言うだけだ。
 ステファンさんは美人系だけど、男前、タカラヅカ系だから種別が違う。

 目の前のこの人は、女性らしい女性、と言うか、秘書でもやっていそうな雰囲気すら感じる鋭利な女性だ。
 言ってしまえば、デキる女、だろう。
 年齢は恐らく、うーん、俺より年上っぽいし王族と言えども軍事に関しては贔屓がないそうだから、軍の偉い人と言う立場も考慮すると20代後半くらいか?

 しかし何より気になってしまうのは、結構なボリュームのありそうなお胸とお尻だろう。
 太っている訳ではなく、腰回りにも不自然さは一切感じられない。
 動くが仕事の軍人だからか、足はズボンの上からでも分かる程度の、やや筋肉質な感じはするが、それも標準の範囲内だろう。
 軍服と言う、体の動きを阻害しないレベルで体の線が出にくい服を着ているにも関わらず、何と言うか、結構グラマーな人だ。

「ところで、そちらのお嬢さんはどちら様だろうか」

 おっといけない。
 思ったよりも大物の登場で動転して、同席していたシルちゃんを紹介するのをすっかり忘れていた。

「ああ、すいません。この方はハイエルフのシルビィエンテクライテア様です」

 シルちゃん、何気に結構な有名人らしいのでお偉方が来た時は可能な限り紹介をしている。
 本当はあまり目立つ真似はして欲しくないんだけど、そこにはちょっとしたお国柄的な事情もあって、来る人の大半に紹介をしている。

「うむ。気軽にシルビィと呼んで欲しいのじゃ」
「そうか。ではシルビィ殿とお呼びしてもよろしいか?」
「結構なのじゃ!」

 お、何やら波長が合ったのか、二人がニコニコしながら話をし始めた。
 ふむ、どうしようかな。
 後ろの二人は・・・、ああ、うん、首を振っている。自分たちの紹介は不要? そう、分かった。

 なんて目と目とジェスチャーでコンタクトを取りつつ、彼女たちの会話を少し耳に拾う。

「ほう、エルフの魔法にはそのような」
「そうじゃ。そしてこれをこうして・・・」
「なるほど。さすが長命な種族の長殿。その博識さに脱帽です」
「長はもう引退したのじゃ! それでそこなのじゃが」
「そんな手が。やはり魔法は奥深い・・・」

 うーん?
 最初は女子会的な雰囲気で、俺との関係は?等と聞いていたのに、いつの間にやら魔法談義に変わっていた。

 後ろに控える部下の面々が諦めたかのような目で遠くを見始めたので、さり気なく『お手伝いさん』を呼ぶ。
 話が長くなりそうだし、急ぎの要件もないようだから、ちょっとお茶でも用意しようか。
 『生活魔法』の『お手伝いさん』、つまり『レッドキャップ』の面々に用意してもらうべく魔法を行使、成功。念じるだけで勝手に彼らがやってくれるんだから、この魔法、便利すぎる。

 するとすぐに扉がノックされるので、俺は返事をして彼らに入室してもらった。

 しかし俺の浅慮の所為で、場が混乱してしまった!


 ガタッと言う音と共に、今までの軍人然と言うか、淑女然とした態度を捨ててアンリエット様が立ち上がった。

「ゴ、ゴブリン!? 何故このような場所に!! 貴様ら、シルビィ殿とリュータ殿を守れ!」
「はい!」
「シルビィエンテクライテア様、リュータ男爵様、こちらへ!」

 え、ええー!?

 突然杖を構え、何やら不穏な魔力を漂わせ始めるアンリエット様と、体を張ってでも俺たちを守ろうと言う気概を見せるその部下たち。

 戸惑う『レッドキャップ』たちは、頭に茶色の三角巾、胴体には茶色いエプロンを装着しているが、確かに見ようによっては手に持っている丸椅子が鈍器に見えなくもないし、更に後ろのお盆を持った『レッドキャップ』は、確かにチャクラムを今にも投げそうに見えなくも・・・

 いや、無理があるだろ!!

「ちょっと待った!! 待って! 待って下さい!!」
「危険だ、下がり給え!」
「危険じゃないし! 俺の身内だし!」

 俺のその言葉に、ピタリ、と止まるアンリエット様。

 そこで俺は畳みかけるように事情を説明し、やっとの事で納得してもらった時にはすでに夕方に差し掛かっていた。


「それで、今回こちらに来た理由をお伺いしてもよろしいですか?」

 食事の準備の最中に、軽く本題についてアンリエット様に尋ねてみた。
 すると帰って来たのは予想外の、こんな返事だった。

「ああ、そうだな。まず第一に、我らの補給をお願いしたい。これは兼ねてからの契約に基づくものなので、特に異論はないな?」
「補給、契約・・・。そうか、あなたたちが山岳部の調査をしていたのか」
「なんだ、リュータ殿は知らなんだのか。ふむ・・・」
「どの部隊が調査しているかまでは、情報回ってこないからね。でも、補給の件は聞いているから構わないよ。すでにいつでも持ち出せるように準備は終わっているし」
「そうか、助かる」

 玄武が大暴れした後の被害調査やらその手続きやらは、このユーバリ地方の領主であるオーリム王子に丸投げだからねぇ。
 しかしそうなると、ちょっとは様子を聞いた方がいいかな。

 なんて思いつつ、あれこれ話を聞いている間に食事の準備が整った。


 ちなみに調査内容を要約すると

・玄武がいたダンジョンは消滅
・ダンジョンの近くにあったダークエルフの里、それとコーリアルの街は壊滅。復旧は絶望的
・隣国ザルツベツクからの間諜、いわゆるスパイが激増している
・カメムシの行方は一切不明。もしかするとザルツベルクに逃げたかもしれない


 中々の惨状っぷりと混乱っぷりに、波乱の予感が致します。
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