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第三十七話 王座の裁き
しおりを挟む第三十七話:玉座の裁き
謁見の間――
紫檀の柱に囲まれたその空間に、朝日が細く差し込む。重苦しい空気が張りつめ、文官、武官たちが沈黙のまま見守る中、第六王子と将軍・墨霖寅が進み出た。
「供述はすでに得ております」
将軍が一礼し、声を張る。
「刺客の背後にいた黒幕、そして晨殿下を誘拐し、陛下の兄君と我が墨家の私の両親を亡き者とした者……それは――貴姫でございます!」
場が、ざわめいた。まるで雷が落ちたように、どよめきが謁見の間を駆け抜ける。
「静まれ!」
陛下の重々しい声が響き渡り、空気が凍る。
再び将軍が進み出る。
「全ては、自身を皇后にするため。立太子を阻む者を始末し、そして……晨殿下を隠し、己が皇后になれぬと知るや、娘を墨将軍に嫁がせ兵権を奪おうといたしました」
「貴姫をここへ!」
律と泰が容赦なく貴姫を引き立て、玉座の前に突き出す。
「陛下~!違います、わたくしは無実です!すべては陛下のためでございます!」
貴姫は濡れた目を装い、哀願するように声を張り上げた。
陛下は目を閉じ、やがてゆっくりと立ち上がり、玉座を降りる。
「貴姫よ。あれほど寵愛したというのに……」
「わたくしは、すべて陛下のために……!」
「認めたな」
将軍の目が細くなり、侮蔑の色を含む。
「お約束なさいましたよね?私を皇后にすると……!」
陛下の顔が一変した。
「朕が皇后に立てなかったから、兄を殺したのか!!」
「ち、ちが……! 王位を譲らぬと……!」
その瞬間だった。温厚な陛下が、雷のごとく怒りを爆発させた。
「謀反人めが!兄を殺し、朕に汚名を着せ、将軍の両親をも……!!」
その怒号に空間が震える。目には涙すら浮かび、陛下の心が引き裂かれているのが見えた。
「霖寅よ……すまなかった……」
陛下が将軍を抱きしめる。
「……あなたは私の父です。それだけで……救われました」
その背中を優しく擦る陛下。しんと静まる謁見の間に、温かいものが流れ込んだ刹那――
「アハハハハハ!!」
狂ったように笑い声が響いた。貴姫が立ち上がり、口を歪めて叫ぶ。
「どうせお前も捨てられるんだ!私は皇后になるはずだった!あの女が田舎から嫁いで来なければ、全てうまくいったのに!」
そして――
彼女は簪を抜き、将軍へと飛びかかろうとした。
だが次の瞬間、律と泰が容赦なく足を払う。貴姫の体が回転し、床に叩きつけられた。
「朕のためだと?今の言葉のどこに朕がいる!」
陛下は玉座に戻り、冷然とみことのりを記す。
「貴姫は、謀反を企て、数多くの命を奪った。よって、斬首に処す。即刻、実行せよ!」
「ちがう!陛下ァァァァァ!!!」
貴姫の絶叫が謁見の間にこだまし、やがて引きずられて消えていった。長い、長い悪夢が、ようやく終わった――。
同日・将軍府 瑶華の部屋
数日ぶりの目覚めだった。将軍がまだ戻っていないと聞き、瑶華は窓に肘をついて外を見ていた。頬を膨らませ、ぷいっと顔を背ける。
幾日も眠れぬ夜を過ごした為か
あの日将軍に抱きしめられた後記憶がない
多分、寝不足と披露で気を失う様に寝てしまったんだろう
必死だった、将軍を守る為考えつくあらゆる事をした。刺客に襲われた時、無意識に将軍の心臓を守ろうと将軍を後から抱きかかえる様に心臓の前で手を組んだ。それなのに
芝居だったなんて~私を騙したなんて許せない
「瑶華ちゃん、梨の花のお菓子食べよ~?」
「瑶華ちゃ~ん、これ外国の絹糸よ?一緒に組紐作りましょ?」
第一皇女と第六王子が代わる代わるお菓子やお茶を差し出すが、瑶華は無視してふて寝。
「私を騙した!知らない!」
枕を抱いて背中を向けた。
「もう~!将軍の両親の敵を討つためだったんだよ~?」
第六王子が弁解するように言うが、瑶華はくるりと振り返り、怒りに顔を赤くする。
「演技なら私だってできました!どうして黙ってたのよ!」
「バカね」
第一皇女がそっと抱きしめた。
「彼はね……あなたを巻き込みたくなかったの。大切に思ってるからこそ、ね」
「それでもっ……夫婦なのに!」
「うんうん、分かるよ~~」
と、第六王子も両手を合わせて謝り出す。
「もう!将軍なんて大嫌い~~~!」
布団や枕が次々に飛んでくる。
「ぎゃああ、やめて~~!」
逃げ惑う第一皇女と第六王子に、侍女の明蘭は苦笑した。
――でも。
騒がしい将軍府が戻ってきた。静かだった日々より、ずっと、ずっといい。
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