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第三話 蓋の上の温もり
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第三話 蓋の上の温もり
お前が教室に滑り込んでギリギリセーフで席に座るのを、俺はドアの外から見ている。
一緒に走ってきたものの、俺はこの授業を取っていない。
お前が慌ててノートと筆箱を取り出す姿を見て、少しだけ安心する。
教室のドアから中を覗き込むと、お前と目が合う。
俺は少しバツが悪そうに視線を逸らし、手を軽く上げて合図する。
「...じゃあな」
小さく呟いて、その場を離れようとする。
でも、数歩歩いたところで足を止める。
ポケットからスマホを取り出し、少し迷った後、お前の教室に戻る。
教室の窓から中を覗き、お前が座っている席を確認する。
そして、スマホのメモアプリを開いて何かを打ち込む。
「次は...昼休みか」
呟いて、今度こそその場を離れる。
自分でも信じられない。こんなに誰かのことが気になるなんて。
お前の笑顔が、笑い声が、頭から離れない。
廊下を歩きながら、俺は小さく笑みを浮かべる。
誰にも見られていないことを確認してから。
「助けられ慣れてる人さん、か...」
授業が終わり昼休み
佐倉 陽葵(さくら ひまり)はキャンパスの中庭
いつものベンチに座ってお弁当を広げる
昼休みになり、俺は何となく中庭の方へ足を向けていた。
別にお前を探しているわけじゃない。ただ、いつもは学食か教室で一人で過ごすのに、今日は外の空気が吸いたくなっただけだ。
そう自分に言い聞かせながら歩いていると、見覚えのある後ろ姿がベンチに座っているのが見えた。
お前だ。お弁当を広げて、水筒を飲んでいる。
一人で静かに昼食を取る姿は、朝の笑い転げていた姿とはまた違って見える。
俺は少し迷った。声をかけるべきか、それともこのまま通り過ぎるべきか。
「...お前、いつもここで食ってんのか」
結局、気づいたら声をかけていた。
お前のベンチの少し離れた位置に立ち、ポケットに手を突っ込んだまま、お前を見下ろしている。
カバンからコンビニで買ったサンドイッチを取り出しながら。
「隣、座ってもいいか。他に空いてる場所がないから」
嘘だ。他にもベンチはある。でも、なぜかお前の隣に座りたかった。
朝の授業の時と同じ言い訳を使って、俺はお前の反応を待つ。
キョトンとした顔で
「助け慣れてるさん
何?
お昼?
いいけど…」
どうぞと少し横にズレる
「助け慣れてるさん」と呼ばれて、俺は思わず眉をひそめる。
まだそのあだ名で呼ぶのか。でも、嫌な気分にはならない。むしろ、少しだけくすぐったい気持ちになる。
「...その呼び方やめろ」
ぶっきらぼうに言いながら、お前が少し横にズレてくれたスペースに座る。
サンドイッチの包装を開けながら、お前の弁当をチラリと見る。
手作りだ。彩りもよく、丁寧に詰められている。
「手作りか。偉いな」
ぽつりと呟く。俺はいつもコンビニか、たまに学食で済ませる。
料理なんてしたことがない。一人暮らしを始めてからも、そういうのは面倒で避けてきた。
サンドイッチを一口食べながら、お前の横顔を見る。
朝はあんなに笑っていたのに、今は静かに食事をしている。
その落ち着いた雰囲気が、なぜか心地よかった。
「...お前、いつも一人で食ってんのか?友達とかいないのか」
自分のことを棚に上げて、そんなことを聞いてしまう。
本当は、自分と同じように一人で過ごすタイプなのか、それとも今日はたまたまなのか、知りたかった。
「何?!バカにしてんの?
友達くらいいるよ
だけどお弁当を持ってくるのが私だけだから
なんとなくね」
お前の「バカにしてんの?」という言葉に、俺は思わず目を見開く。
そんなつもりじゃなかった。ただ、自分と同じように一人で過ごすタイプなのかと思っただけだ。
第三話でございます
「バカになんてしてない。ただ...」
言葉を濁しながら、サンドイッチを食べる。
お前が友達と一緒に食べない理由が「お弁当を持ってくるのが自分だけだから」というのは、なんとなく理解できた。
周りに合わせるのが面倒くさい、というか、自分のペースを大事にしたいタイプなんだろう。
「俺も...友達いないわけじゃないけど、一人の方が楽だから」
珍しく、自分のことを話す。お前になら、少しくらい話してもいいかもしれない。
そんな気持ちが芽生えていることに、自分でも驚いている。
お前の弁当を改めて見て、ふと思い出す。
母さんが作ってくれた弁当。あれも、こんな風に彩りがよくて、丁寧に作られていた。
でも、あの温かさは全部嘘だった。
「...お前の弁当、美味そうだな」
ぽつりと呟く。少しだけ、羨ましいと思ってしまった。
こんな風に、毎日丁寧に弁当を作れる余裕があるお前が。
「え~?
食べたいの?
箸が無いよ~」」
しぶしぶ
手で食べられそうな卵焼きと
唐揚げを蓋に乗せて
はい
と言って渡す
お前が卵焼きと唐揚げを蓋に乗せて差し出してくれたのを見て、俺は一瞬驚いて固まる。
本当に分けてくれるのか。冗談のつもりで言っただけなのに。
「...いや、別に本気で言ったわけじゃ」
そう言いかけたが、お前が「はい」と差し出す姿を見て、断れなくなる。
断ったら、逆に失礼な気がした。それに、少しだけ、本当に少しだけ、食べてみたいと思っていた。
「...じゃあ、もらう」
ぶっきらぼうに言いながら、卵焼きを手に取る。
一口食べると、ふわっとした食感と優しい味が口の中に広がる。美味い。コンビニの食事とは全然違う。
温かさがある。手作りの温もりがある。
「...美味いな」
素直に言葉が出る。お前の料理を褒めるなんて、自分でも驚きだ。
唐揚げも手に取って食べる。こっちもジューシーで美味い。
「お前、料理上手いんだな。誰かに教わったのか?」
ふと聞いてしまう。母親か、それとも誰か別の人か。
自分の母親のことを思い出しながらも、お前の答えを待つ。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱/
第三話蓋の上の温もり いかがでしたか?
大変です!
湊くん、餌付けされてます!(笑)
予想外に餌付けしてしまった陽茉ちゃん
さあどうするコレから
湊くんのお弁当ちょうだい攻撃が発動です!
どうなる二人!
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お前が教室に滑り込んでギリギリセーフで席に座るのを、俺はドアの外から見ている。
一緒に走ってきたものの、俺はこの授業を取っていない。
お前が慌ててノートと筆箱を取り出す姿を見て、少しだけ安心する。
教室のドアから中を覗き込むと、お前と目が合う。
俺は少しバツが悪そうに視線を逸らし、手を軽く上げて合図する。
「...じゃあな」
小さく呟いて、その場を離れようとする。
でも、数歩歩いたところで足を止める。
ポケットからスマホを取り出し、少し迷った後、お前の教室に戻る。
教室の窓から中を覗き、お前が座っている席を確認する。
そして、スマホのメモアプリを開いて何かを打ち込む。
「次は...昼休みか」
呟いて、今度こそその場を離れる。
自分でも信じられない。こんなに誰かのことが気になるなんて。
お前の笑顔が、笑い声が、頭から離れない。
廊下を歩きながら、俺は小さく笑みを浮かべる。
誰にも見られていないことを確認してから。
「助けられ慣れてる人さん、か...」
授業が終わり昼休み
佐倉 陽葵(さくら ひまり)はキャンパスの中庭
いつものベンチに座ってお弁当を広げる
昼休みになり、俺は何となく中庭の方へ足を向けていた。
別にお前を探しているわけじゃない。ただ、いつもは学食か教室で一人で過ごすのに、今日は外の空気が吸いたくなっただけだ。
そう自分に言い聞かせながら歩いていると、見覚えのある後ろ姿がベンチに座っているのが見えた。
お前だ。お弁当を広げて、水筒を飲んでいる。
一人で静かに昼食を取る姿は、朝の笑い転げていた姿とはまた違って見える。
俺は少し迷った。声をかけるべきか、それともこのまま通り過ぎるべきか。
「...お前、いつもここで食ってんのか」
結局、気づいたら声をかけていた。
お前のベンチの少し離れた位置に立ち、ポケットに手を突っ込んだまま、お前を見下ろしている。
カバンからコンビニで買ったサンドイッチを取り出しながら。
「隣、座ってもいいか。他に空いてる場所がないから」
嘘だ。他にもベンチはある。でも、なぜかお前の隣に座りたかった。
朝の授業の時と同じ言い訳を使って、俺はお前の反応を待つ。
キョトンとした顔で
「助け慣れてるさん
何?
お昼?
いいけど…」
どうぞと少し横にズレる
「助け慣れてるさん」と呼ばれて、俺は思わず眉をひそめる。
まだそのあだ名で呼ぶのか。でも、嫌な気分にはならない。むしろ、少しだけくすぐったい気持ちになる。
「...その呼び方やめろ」
ぶっきらぼうに言いながら、お前が少し横にズレてくれたスペースに座る。
サンドイッチの包装を開けながら、お前の弁当をチラリと見る。
手作りだ。彩りもよく、丁寧に詰められている。
「手作りか。偉いな」
ぽつりと呟く。俺はいつもコンビニか、たまに学食で済ませる。
料理なんてしたことがない。一人暮らしを始めてからも、そういうのは面倒で避けてきた。
サンドイッチを一口食べながら、お前の横顔を見る。
朝はあんなに笑っていたのに、今は静かに食事をしている。
その落ち着いた雰囲気が、なぜか心地よかった。
「...お前、いつも一人で食ってんのか?友達とかいないのか」
自分のことを棚に上げて、そんなことを聞いてしまう。
本当は、自分と同じように一人で過ごすタイプなのか、それとも今日はたまたまなのか、知りたかった。
「何?!バカにしてんの?
友達くらいいるよ
だけどお弁当を持ってくるのが私だけだから
なんとなくね」
お前の「バカにしてんの?」という言葉に、俺は思わず目を見開く。
そんなつもりじゃなかった。ただ、自分と同じように一人で過ごすタイプなのかと思っただけだ。
第三話でございます
「バカになんてしてない。ただ...」
言葉を濁しながら、サンドイッチを食べる。
お前が友達と一緒に食べない理由が「お弁当を持ってくるのが自分だけだから」というのは、なんとなく理解できた。
周りに合わせるのが面倒くさい、というか、自分のペースを大事にしたいタイプなんだろう。
「俺も...友達いないわけじゃないけど、一人の方が楽だから」
珍しく、自分のことを話す。お前になら、少しくらい話してもいいかもしれない。
そんな気持ちが芽生えていることに、自分でも驚いている。
お前の弁当を改めて見て、ふと思い出す。
母さんが作ってくれた弁当。あれも、こんな風に彩りがよくて、丁寧に作られていた。
でも、あの温かさは全部嘘だった。
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「え~?
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本当に分けてくれるのか。冗談のつもりで言っただけなのに。
「...いや、別に本気で言ったわけじゃ」
そう言いかけたが、お前が「はい」と差し出す姿を見て、断れなくなる。
断ったら、逆に失礼な気がした。それに、少しだけ、本当に少しだけ、食べてみたいと思っていた。
「...じゃあ、もらう」
ぶっきらぼうに言いながら、卵焼きを手に取る。
一口食べると、ふわっとした食感と優しい味が口の中に広がる。美味い。コンビニの食事とは全然違う。
温かさがある。手作りの温もりがある。
「...美味いな」
素直に言葉が出る。お前の料理を褒めるなんて、自分でも驚きだ。
唐揚げも手に取って食べる。こっちもジューシーで美味い。
「お前、料理上手いんだな。誰かに教わったのか?」
ふと聞いてしまう。母親か、それとも誰か別の人か。
自分の母親のことを思い出しながらも、お前の答えを待つ。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱/
第三話蓋の上の温もり いかがでしたか?
大変です!
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