上 下
3 / 3

テイクアウト

しおりを挟む


◆◆◆◆◆





「ん……ん?」
「っ、起きたか?」


 ヤバい…


「あー…ごめん、間違えた」
「……」


 何もなかったように離れるけど、これはマズイ。

 寝ぼけて襲うとか…

 通りで美味しそうな匂いがした訳だ。



「…どれくらい寝てた?」
「ん?俺が来て…10分くらいしか経ってないかな」


 時計を確認しながら言うこのイケメンは今や大人気のモデルのseiセイこと
 黒咲 希星クロサキ キセイ


 私の幼なじみでΩで…


 私の【】だ。




「人気モデルの膝をお借りして…」
「やめろ」


 からかうように言うとしたら止められた。


「んなことより、また寝てないのか?」
「ん…ちょっと、いいとこまでと思ったら朝だった」
「って思ったのが何日前?」
「?…んー…?」


 いつだったかな?
 今日の約束は覚えてるけど…


「あーわかった。寝ろ。」
「わっ」


 再び、先程の膝枕タイセイにさせられた。

 いや…これは近い。

 念のために抑制剤飲んでてよかったけど…。


「いや…寝ろと言われても気になるんですが?」
「……お前が悪いんだろ」
「じゃあ…」
「って、おい!何する…」
「ナニって、責任とろうかと」
「とらんでっいいっ」
「ん~…ジャマ…」
「っ!おいっ舐めんなっ」


 ベルトをはずそうとしてる私の手を必死で止める希星の手をペロっと舐めた瞬間…


 ーーガチャ
 ーー♪


「…何してるんですか?ふたりとも」
「「……」」










 ×××××










「……」
「…そんな、睨まないでよ片倉ちゃん」
「…まったく、本当にナニしてるんですか…CEO」
「ちょっ、そう呼ばないでよ…」


 あの後、希星はそそくさとトイレに逃げ行った。


「他に誰も居ないことは確認済みですし、ワザとです」
「……ごめんって」
「まったく、いくらココが貴女が所有しているビル安全だからって、どこに誰が居るかわからないんですよ?スキャンダルになったらどうするんですか?よりにもよって…貴女がそのネタになるとか」


 説教が始まった。
 こうなったら希星が戻ってくるまで続くだろう。

 片倉 洋太カタクラ ヨウタはseiのマネージャーで、希星の愛するα。


 …だったはずなんだけど…


「聞いてますか?」
「聞いてる。心配してくれてありがと」
「っ…ほんと貴女って人は…」
「でもね?片倉ちゃんが、希星の番になれば済むんだよ?」
「ですから、お互いになんとも想っていないのに番になるわけないでしょう?」


 そう。
 何故か今回の人生では2人は今だに付き合ってもいない。


 何故だろう…


「……」
「そんなに睨まれても」


 どの人生でも、2人は愛し合ってて
 どんなに…どんなことがあっても絶対に2人の間には入れなかった。

 今世で違うのは、まずseiの事務所が違うこと。
 今世の希星は私がCEOのプロダクションに所属している。
 まあ、希星や所属タレント達は私がCEOだとは知らないけど。



 ーーやっぱ、間違えたか…?



「はい?」
「なんでもない」


 でも、希星をあの事務所に所属させる訳にはいかなかったし。
 今までと違う事をしたせいでタイムログがあるのかもしれない。

 いずれかは必ず2人は結ばれるのだから…。


「それより、よろしいのですか?ソレ」
「あぁ…そうだった」


 さっき鳴ったスマホを確認する。


「んー…」
「何か問題でも?」
「いや…大丈夫。とりあえず、テイクアウト頼んでくる」
「急用ですか?」
「いや、ご飯食べてからで大丈夫だけど、その後の為にね」
「?」











 ×××××










「しかし…本当によく食べますよね?」
「ん?そう?」
「見た目とギャップがありすぎなんだよな」


 何気ない顔をして戻ってきた希星と同時にすでに頼んでた食事が運ばれた。
 3人で雑談しながら食べ、今は食後のデザートだ。


「さっきテイクアウトも頼んでましたよね?」
「あぁ、あれは後で…というか明日かな?ソレ用」
「ソレ用?」
「だって、ヤった後もお腹すくじゃん」
「ヤった後?この後、運動でも?」


 …うん。
 意外と片倉ちゃんはこうゆうことには疎い。


「やっぱり…今、発情期か?」


 希星が訊いてくる。
 たぶん、さっきの着信音で気づいたんだろう。
 着信音アレはマホ専用だから。


「パートナーの方ですか?」
「そ。4日前からだって」
「は?」
「いや、発情期中のパートナーを4日もほっといたのか、みたいな目で見ないでよ。連絡きたのさっきだよ?」


 片倉ちゃんの目が怖い。


「さっき、急用じゃないって言いましたよね?早く行った方が…」

 ーーコンコン
 ーーガチャ


「渚ちゃん、お待たせ。テイクアウトね」


 ノックと同時に入ってきたのは


「ありがと。マスター」


 このお店のマスターだった。


「んじゃ、そろそろ行こうかな?片倉ちゃん、そこのカーディガン取ってくれる?」
「はい、どうぞ」


 片倉ちゃんはカーディガンを取るとスマートに着せてくれた。

 紳士だ。


「ありがとー。じゃあ、またね…っと」
「…おい。抱きつくな」
「えー?お別れのハグじゃん」

 片倉ちゃんにハグしたら、即、希星に引き剥がされた。


「ここは日本だ。片倉さんが困るだろ」
「そう?ごめんね?片倉ちゃん」
「いえ、だいぶ慣れました」
「ほら、慣れたって」
「だめだ。ほら…待ってるんだろ?」


 希星に早く行けと言わんばかりにバッグを渡された。


「はいはい。じゃあ、希星もまたね。明日から北海道でしょ?撮影頑張って」
「お前も、ちゃんと寝ろよ?」
「ヤったらね」


 お互いの頬にキスをする。


「前々から思ってるんだけど、あの2人って距離が近くない?ってか、アレ(キス)は良いわけ?」
「…まあ…2人とも海外育ちですから」


 マスターと片倉ちゃんが何か言ってるけど…


「マスターもまたね」
「え?俺にはハグしてくれないの」
「希星が怒るから、じゃ」
「えーズルい」






 マスターに心の中で謝りながらテイクアウトを受け取り、お店を後にする。




「お。きれいな満月だ…さてと、行きますか…」


 発情が始まって4日目になって連絡してきたマホの家に。


「あえて、だよね…。残り香コレが欲しくて…」


 今日、2人に会うことを知っていたマホは4日間、必死で待ったんだろう。


「お陰で、片倉ちゃんに誤解されたけど…」


 まあ…仕方ない。
 必死でデータは録ってくれてるだろうし、なんせマホはパートナーで協力者だ。


「…しかし、重いな」


 確かに3人分頼んだけど…


 テイクアウトが思ったより重たかった。



◆◆◆◆◆



しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

女装転移者と巻き込まれバツイチの日記。

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:24

君に愛は囁けない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:606

拝啓、今日からモブ、始めます!

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:314

百鬼夜荘 妖怪たちの住むところ

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:16

女装人間

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:255pt お気に入り:12

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,336pt お気に入り:3,724

処理中です...