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第二章 離された手、繋がれた手
第5話 会いたい
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「あのVTRのじいさんか? 異常な興味って?」
昨日の銀騎詮充郎の姿を蕾生は思い出す。
皺が深く刻まれた顔の中に、落ち窪んだどす黒い目。しゃがれているのに心の奥深くまで突き刺さる声。
まるで死神のような威圧感で睨まれたらきっと身がすくんで動けないだろう。あんな存在とこれから関わらなければならないと思っただけで背筋が寒くなる。
「ちょっとそれはまだ言えないな……」
永の更なる隠し事に、蕾生の苛立ちがますます大きくなった。大袈裟に睨むことで意思表示を試みる。
「だから、言えないことがあるのはゴメンって! とにかくリンと銀騎詮充郎の間に何かあったのかもしれないと思って、僕は昨日君を連れて研究所に行ったって訳」
永は蕾生の目の前で両手を合わせて謝った。ここまでしても教えてくれないなら、次の機会に期待するしかない。
「……まあ、わかった」
「リンのことは確信があった訳じゃないから、本来の僕の目的は刀の方だった。だけど、いざ研究所に入ってみたらリンの気配を感じたもんだから、僕も驚いてしまって」
「そうか……」
永にしてみたら、九百年もずっと仲間だと思ってきた相手に昨日突然拒否されたことになる。
蕾生にはその時間の重みはまだわからないけれど、もし、永にあんな態度を自分がとられたらと思うと、昨日あんなに永が取り乱したのもわかる。
永に自分以外にもそんな相手がいたことは少しショックだし、嫉妬のような感情と相まって、蕾生にはリンに対する怒りのようなモヤモヤした感情が生まれていた。
「で、ミッションの話をするよ?」
「お、おう」
「まずは、もう一度リンに会いたい」
蕾生がリンに感じている不信感など欠片も持っていないとわかる真剣な表情で永は訴えた。
そんな澄んだ目をされては、自分の持ってる感情が子どもっぽいものに思える。
「でも、どうやって? 昨日のはただラッキーだっただけだろ? それに──」
「うん。リンははっきりと僕達を拒絶してきた。もう、嫌になってしまったのかも。とても酷い運命だから」
永のこれまでの苦労はとても測れるものではない。酷い、と言い切る程の経験を永とリンはしてきたのだろう。
「それでも!」
永は自ら奮い立たせるように、きっぱりと蕾生に訴える。
「僕はもう一度リンに会いたいんだ」
少しだけ声が震えている。揺らぐ瞳の中にはリンに対する純粋な思いがある。それを感じ取ったからには、蕾生が戸惑う理由はない。
「わかった。絶対にお前をリンに会わす」
「ありがとう、ライ」
やっと安堵したように破顔した永を見て、蕾生の心は決まった。
「で、具体的にはどうするんだ?」
「うん。それなんだけど」
急に永らしい余裕の笑みを浮かべて、というかワルくニヤリと笑って言い放った。
「ライくんに、女の子をナンパして欲しいんだよね!」
「──ハア!?」
突拍子もない言葉に蕾生は思わず声を上げる。
同時に昼休み終了のチャイムが甲高く鳴り響いた。
昨日の銀騎詮充郎の姿を蕾生は思い出す。
皺が深く刻まれた顔の中に、落ち窪んだどす黒い目。しゃがれているのに心の奥深くまで突き刺さる声。
まるで死神のような威圧感で睨まれたらきっと身がすくんで動けないだろう。あんな存在とこれから関わらなければならないと思っただけで背筋が寒くなる。
「ちょっとそれはまだ言えないな……」
永の更なる隠し事に、蕾生の苛立ちがますます大きくなった。大袈裟に睨むことで意思表示を試みる。
「だから、言えないことがあるのはゴメンって! とにかくリンと銀騎詮充郎の間に何かあったのかもしれないと思って、僕は昨日君を連れて研究所に行ったって訳」
永は蕾生の目の前で両手を合わせて謝った。ここまでしても教えてくれないなら、次の機会に期待するしかない。
「……まあ、わかった」
「リンのことは確信があった訳じゃないから、本来の僕の目的は刀の方だった。だけど、いざ研究所に入ってみたらリンの気配を感じたもんだから、僕も驚いてしまって」
「そうか……」
永にしてみたら、九百年もずっと仲間だと思ってきた相手に昨日突然拒否されたことになる。
蕾生にはその時間の重みはまだわからないけれど、もし、永にあんな態度を自分がとられたらと思うと、昨日あんなに永が取り乱したのもわかる。
永に自分以外にもそんな相手がいたことは少しショックだし、嫉妬のような感情と相まって、蕾生にはリンに対する怒りのようなモヤモヤした感情が生まれていた。
「で、ミッションの話をするよ?」
「お、おう」
「まずは、もう一度リンに会いたい」
蕾生がリンに感じている不信感など欠片も持っていないとわかる真剣な表情で永は訴えた。
そんな澄んだ目をされては、自分の持ってる感情が子どもっぽいものに思える。
「でも、どうやって? 昨日のはただラッキーだっただけだろ? それに──」
「うん。リンははっきりと僕達を拒絶してきた。もう、嫌になってしまったのかも。とても酷い運命だから」
永のこれまでの苦労はとても測れるものではない。酷い、と言い切る程の経験を永とリンはしてきたのだろう。
「それでも!」
永は自ら奮い立たせるように、きっぱりと蕾生に訴える。
「僕はもう一度リンに会いたいんだ」
少しだけ声が震えている。揺らぐ瞳の中にはリンに対する純粋な思いがある。それを感じ取ったからには、蕾生が戸惑う理由はない。
「わかった。絶対にお前をリンに会わす」
「ありがとう、ライ」
やっと安堵したように破顔した永を見て、蕾生の心は決まった。
「で、具体的にはどうするんだ?」
「うん。それなんだけど」
急に永らしい余裕の笑みを浮かべて、というかワルくニヤリと笑って言い放った。
「ライくんに、女の子をナンパして欲しいんだよね!」
「──ハア!?」
突拍子もない言葉に蕾生は思わず声を上げる。
同時に昼休み終了のチャイムが甲高く鳴り響いた。
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