転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ

城山リツ

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第四章 新たな仲間とともに

第3話 微妙に入りたくない

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「何部にするんだ?」
 
 蕾生らいおが聞けば、星弥せいやはうーんと空を見上げながら呟く。
 
「そうだね……先生に受けが良くて、それでいて他の生徒は微妙に入りたくないクラブ、かな?」
 
「なんだよそれ、そんなもんあんのか?」
 
「だよねえ。部員募集しなければいいんだけど、それも角が立つし──」
 
 二人で悩んでいると、横からはるかがあっさりと答える。
 
「そんなの簡単だよ」
 
「ええ?」
 
 星弥が目を丸くして聞き返すと、永は得意気に人差し指を立てて言った。
 
「名付けて『これからの地球環境を考える』部! 活動内容は主に環境問題の研究と校内ボランティア──清掃したり、ちょっとしたお手伝いしたり」
 
 付け足した内容は誰かの普段の行動を連想させた。
 
「げ。絶対入らねえ」
 
 蕾生が嫌そうに言うと、星弥はにっこりと微笑みながら怒る。
 
「二人とも、わたしをいじってるんだね?」
 
「まあまあ、そのおかげでいい思いしてるんじゃない。よっ、部長!」
 
 永が茶化すと星弥は白けた顔をして言った。
 
「何言ってるの、部長は周防すおうくんでしょ」
 
「え! なんで!」
 
「わたしが部長までやったら、先生との癒着がバレるもん」
 
 ついに認めた、と蕾生は開いた口が塞がらなかった。
 永の方は抵抗しても意味がないと悟り、すんなり承諾する。
 
「ハイハイ、わかりましたよ、銀騎しらきサマ。じゃあ、先生とナシつけといてね」
 
「うん。じゃあ、放課後部室棟に集合ね」
 
「もう今日からできるのか?」
 
 蕾生が尋ねると、星弥は立ち上がってブイサインを掲げる。
 
「銀騎サマに任せなさーい!」
 
 勢いよくそう言いながら、星弥は小走りに駆け出し校舎の中に消える。
 
 月曜から行動力があるな、と蕾生はその姿を感心しながら見送った。
 永がまたひとつ欠伸をしたところで予鈴のチャイムが鳴った。


 
 ◆ ◆ ◆


 
 放課後、永と蕾生が体育館横の部室棟の前で待っていると、星弥が息を切らせてやってきた。
 
「ごめんね、お待たせ」
 
「首尾はどうだった?」
 
 永が尋ねると、鍵を目の前にぶら下げてにっこりと笑う星弥は、勝ち誇った金メダリストの様だった。
 
「もちろん大成功! はい、これが部室の鍵。部長が責任持って預かるようにって」
 
「さっすが銀騎サマ!」
 
 わざとらしく誉めそやした後、永はその鍵を受け取り、角部屋の扉を開ける。
 中に入ると机と椅子が粗雑に置いてあり埃っぽかった。三人は窓を開けて軽く掃除をした後、机と椅子を四つ、班を組む時のように向かい合わせで並べた。
 
「うん、こんなもんかな」
 
 パンパンと両手の埃を払いながら、星弥が満足そうに部室を見回した。
 
「じゃあ、まずは祝杯をあげよう」
 
「──ん」
 
 永の号令に、蕾生は来る前に自動販売機で買ったパック牛乳を配る。星弥はそれを受け取って弾んだ声を出した。
 
「わあ、用意がいいね」
 
 三人はそれで乾杯をした後、各々席についた。
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