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第五章 邂逅
第1話 潜入
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鈴心が高校に通うようになって一週間ほどが経った。最初は色めきだった校内もやっと落ち着いてきた頃、星弥から皓矢に関する情報がもたらされた。
鈴心が高校に編入するようになってから、皓矢は頻繁に自宅に帰って来るようになったと言う。母が珍しがってその理由を尋ねると、母からの言いつけを守っていると返事が返ってきた。
母はこれに気を良くし、毎晩皓矢の好物を山ほど作って食卓を彩るようになった。おかげで星弥も鈴心も少し太った、と星弥は困りながら笑った。
後で本当の理由をこっそり聞いて見ると、鈴心の体調が心配だし、最近詮充郎が研究室に篭りっぱなしで研究所に全くこないので補佐する仕事がなく、時間に余裕ができたのだと言ったそうだ。
それを聞いた永はそれも真の理由ではないだろうと言う。だがその辺を勘繰ってこちらの行動を気取られては台無しなので、ひとまずそこに疑問を持つのは置いておくことになった。
そして皓矢が頻繁に自宅に帰ることで、その予定は簡単に掴むことができた。
次の日曜日、皓矢は研究フォーラムに出席するために一日出張に出ることが決まっている。
◆ ◆ ◆
「こっちこっち」
星弥が鈴心を連れて自宅前の門の影から手招きをしている所へ、永と蕾生は監視カメラに映らないように、かつ物音を立てないようにそそくさと合流した。
「皓矢は出かけた?」
小声でスパイよろしく、永が確認すると、星弥も小さく頷いた。
「うん、今朝早くに」
「家の方から倉庫に行けるのか?」
背の高い蕾生は中腰に苦戦しつつもやはり小声で聞いた。腰を屈める必要のない鈴心がそれに涼しい顔で答える。
「ええ。もともと研究員は立ち入り禁止の場所ですから、こちらから回れるようになっているんです」
そうして四人は顔をつき合わせて互いに目配せする。
「じゃあ、レッツゴー」
永の囁きによる音頭とともに、一同はゆっくりと静かに移動を開始した。
「周防くんが剣道やってるとは知らなかったな」
永が背負ってきた竹刀入りの布袋を見上げて、星弥は初めて見る物々しさに驚いていた。
「まあ、武将の生まれ変わりとしては基本だからね。ちなみに弓道も習ってるよ」
少し得意げにしている永に続いて、蕾生も何故か誇らしげに言う。
「永に武器持たせたら、俺も簡単には勝てない」
「あのね、それ武器持ってる僕にも負けたことないっていう自慢だからね、ライくん」
「そうなのか?」
蕾生としては「永はすごいだろ」という意味で付け足したのだが、当の永はお気に召さなかったらしい。
その様子に星弥は思わず吹き出した。
「ふふ、いつかの逆だね」
複雑な顔の永と不思議そうに首を捻る蕾生、それを微笑ましく見ている星弥に、少し先行して歩いていた鈴心が緊張を孕んだ声で雰囲気を正した。
「おしゃべりはそこまでです。見えてきました」
その声に従って全員顔を上げる。
目の前には一軒家ほどの大きさの真四角な建物が立っていた。コンクリートで固められた、窓一つない丈夫な外見の周りには頑強な鉄のフェンス。さらにその上には忍び返しの有刺鉄線が伸びていた。
鈴心が高校に編入するようになってから、皓矢は頻繁に自宅に帰って来るようになったと言う。母が珍しがってその理由を尋ねると、母からの言いつけを守っていると返事が返ってきた。
母はこれに気を良くし、毎晩皓矢の好物を山ほど作って食卓を彩るようになった。おかげで星弥も鈴心も少し太った、と星弥は困りながら笑った。
後で本当の理由をこっそり聞いて見ると、鈴心の体調が心配だし、最近詮充郎が研究室に篭りっぱなしで研究所に全くこないので補佐する仕事がなく、時間に余裕ができたのだと言ったそうだ。
それを聞いた永はそれも真の理由ではないだろうと言う。だがその辺を勘繰ってこちらの行動を気取られては台無しなので、ひとまずそこに疑問を持つのは置いておくことになった。
そして皓矢が頻繁に自宅に帰ることで、その予定は簡単に掴むことができた。
次の日曜日、皓矢は研究フォーラムに出席するために一日出張に出ることが決まっている。
◆ ◆ ◆
「こっちこっち」
星弥が鈴心を連れて自宅前の門の影から手招きをしている所へ、永と蕾生は監視カメラに映らないように、かつ物音を立てないようにそそくさと合流した。
「皓矢は出かけた?」
小声でスパイよろしく、永が確認すると、星弥も小さく頷いた。
「うん、今朝早くに」
「家の方から倉庫に行けるのか?」
背の高い蕾生は中腰に苦戦しつつもやはり小声で聞いた。腰を屈める必要のない鈴心がそれに涼しい顔で答える。
「ええ。もともと研究員は立ち入り禁止の場所ですから、こちらから回れるようになっているんです」
そうして四人は顔をつき合わせて互いに目配せする。
「じゃあ、レッツゴー」
永の囁きによる音頭とともに、一同はゆっくりと静かに移動を開始した。
「周防くんが剣道やってるとは知らなかったな」
永が背負ってきた竹刀入りの布袋を見上げて、星弥は初めて見る物々しさに驚いていた。
「まあ、武将の生まれ変わりとしては基本だからね。ちなみに弓道も習ってるよ」
少し得意げにしている永に続いて、蕾生も何故か誇らしげに言う。
「永に武器持たせたら、俺も簡単には勝てない」
「あのね、それ武器持ってる僕にも負けたことないっていう自慢だからね、ライくん」
「そうなのか?」
蕾生としては「永はすごいだろ」という意味で付け足したのだが、当の永はお気に召さなかったらしい。
その様子に星弥は思わず吹き出した。
「ふふ、いつかの逆だね」
複雑な顔の永と不思議そうに首を捻る蕾生、それを微笑ましく見ている星弥に、少し先行して歩いていた鈴心が緊張を孕んだ声で雰囲気を正した。
「おしゃべりはそこまでです。見えてきました」
その声に従って全員顔を上げる。
目の前には一軒家ほどの大きさの真四角な建物が立っていた。コンクリートで固められた、窓一つない丈夫な外見の周りには頑強な鉄のフェンス。さらにその上には忍び返しの有刺鉄線が伸びていた。
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