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5.補完計画
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自分の意思を示すというのはとても大切なことだ。
よくニュースで、イジメや痴漢の加害者が、本人が嫌といわないから大丈夫だと思った、と言うが、それも間違ってはいないと思う。加害者が悪いのは当たり前だが。
もちろん、怖くて言い出せない、というのもあるだろうが、加害者と被害者では感じ方が違う。
からかうつもりでやったことも、受けた方からすれば深刻な被害かも知れない。
拒否の意思を示さない限り、エスカレートするばかりだろう。
相手に伝わるかどうかはともかく、周囲に嫌だという意思をアピールすれば状況が変わるかも知れない。
元々そうだったのか、イジメられてそうなったのかは知らんが、あかりのように見るからに気が弱そうなのは恰好の的だろう。
だから、まずは彼女の意思を示さないとならない。
そう思って、俺は彼女に聞いたのだった。
「……わ、わたしは……っ、かわり、たい……ですっ! い、いじめられ…たくなんて、ないよぉ……」
泣きながらも、途切れとぎれの小さな声でも、あかりは意思を示した。
俺は立ち上がり、干してあったタオルを取ると、あかりの頭にかけてやった。
「よく言ったな。今日のところはそれで十分だ」
そう言うと、あかりは声を出して泣いた。
俺は風呂を沸かし、ご飯を炊く。
ソファに戻ると、あかりは少し落ち着いたようで、タオルに顔をうずめていた。
「……グスッ、わ、わたし、ここに、いていいの……?」
「ああ。お前はちゃんと意思を示したからな。とりあえず、これからよろしくな、神楽坂」
「……うん……っ、うんっ」
俺はこいつが来てから初めて神楽坂と呼んだ。
「今風呂沸かしてるから入ってきてくれ。そしたら飯にするけど、好き嫌いとかあるか?」
あかりは首を横に振る。
「そっか。ならテキトーに作るな」
一応言っておくが、俺はただ彼女に優しくしているわけではない。
あの男に何を言ったところで今更無駄だろう。手続きも済んでいるだろうし、あかりの母親のことでいっぱいだろうし。
ならばと、俺はあかり自身を変えることにした。
不干渉でいこうかとも思ったが、それだと俺の一人暮らしは永遠に失われてしまう。
あかりの性格を変え、本人が自信を持てるようになったら、出て行って一人暮らしをしてもらおう。それがいい。
非常に不本意だが、少しの間、仕方なく付き合ってやろうじゃないか。
待っていてくれ、俺の一人暮らし……!
こうして、「あかり補完計画」は始動した。
よくニュースで、イジメや痴漢の加害者が、本人が嫌といわないから大丈夫だと思った、と言うが、それも間違ってはいないと思う。加害者が悪いのは当たり前だが。
もちろん、怖くて言い出せない、というのもあるだろうが、加害者と被害者では感じ方が違う。
からかうつもりでやったことも、受けた方からすれば深刻な被害かも知れない。
拒否の意思を示さない限り、エスカレートするばかりだろう。
相手に伝わるかどうかはともかく、周囲に嫌だという意思をアピールすれば状況が変わるかも知れない。
元々そうだったのか、イジメられてそうなったのかは知らんが、あかりのように見るからに気が弱そうなのは恰好の的だろう。
だから、まずは彼女の意思を示さないとならない。
そう思って、俺は彼女に聞いたのだった。
「……わ、わたしは……っ、かわり、たい……ですっ! い、いじめられ…たくなんて、ないよぉ……」
泣きながらも、途切れとぎれの小さな声でも、あかりは意思を示した。
俺は立ち上がり、干してあったタオルを取ると、あかりの頭にかけてやった。
「よく言ったな。今日のところはそれで十分だ」
そう言うと、あかりは声を出して泣いた。
俺は風呂を沸かし、ご飯を炊く。
ソファに戻ると、あかりは少し落ち着いたようで、タオルに顔をうずめていた。
「……グスッ、わ、わたし、ここに、いていいの……?」
「ああ。お前はちゃんと意思を示したからな。とりあえず、これからよろしくな、神楽坂」
「……うん……っ、うんっ」
俺はこいつが来てから初めて神楽坂と呼んだ。
「今風呂沸かしてるから入ってきてくれ。そしたら飯にするけど、好き嫌いとかあるか?」
あかりは首を横に振る。
「そっか。ならテキトーに作るな」
一応言っておくが、俺はただ彼女に優しくしているわけではない。
あの男に何を言ったところで今更無駄だろう。手続きも済んでいるだろうし、あかりの母親のことでいっぱいだろうし。
ならばと、俺はあかり自身を変えることにした。
不干渉でいこうかとも思ったが、それだと俺の一人暮らしは永遠に失われてしまう。
あかりの性格を変え、本人が自信を持てるようになったら、出て行って一人暮らしをしてもらおう。それがいい。
非常に不本意だが、少しの間、仕方なく付き合ってやろうじゃないか。
待っていてくれ、俺の一人暮らし……!
こうして、「あかり補完計画」は始動した。
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