そらに光る星

もやしのひげ根

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6.おにいちゃん

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 朝。スマホのアラームで目を覚ました俺は、腰の痛みに顔を顰める。
 まあ仕方ない。昨夜はソファで寝たのだから。




 昨夜。
 あかりが風呂に入っている間に料理をし、一緒に夕飯を食べた。ちなみに作ったのはチャーハンと簡単な炒め物だ。
 あかりがどれくらい食べるのか分からないし、好き嫌いも昨日は無いと答えたが、本当のところは分からない。ということで量も調節できる無難なチャーハンを選んだ。

 あかりは、一口食べると、固まってしまった。

「どうした?」

 と聞くと

「……おいしい」

 とだけ答えた。




 そんな、大げさな。とも思うが、その後聞いたところによると、元々母親が仕事で忙しく、今までは一人でコンビニやスーパーで買った弁当や冷凍食品で済ませていたという。
 学校へ行かなくなってからは食事の量も減り、さらにテキトーになっていったという。

 だから、久しぶりに誰かの手料理が食べられて感動した。ということらしい。

 まあ、俺も誰かと食べたのなんて久しぶりだが、おいしいと言ってもらえて悪い気はしなかった。



 食後、使ってなかった部屋がひと部屋余ってたので、あかりの部屋にしようと思ったところで問題が発生した。

 彼女の着替え等は持ってきた大きなカバンに入っているのであろう。しかし、寝具は……?
 あかりに聞くと、彼女も今気づいたようで絶句していた。

 まさか女の子をソファで寝かせて自分がベッドで寝るなどという非常識さはあいにくと持ち合わせていないので、結果、俺のベッドにあかりを寝かせ、俺はソファで寝たのであった。



 しかし慣れないところで寝ると体がバキバキだ。
 今日はまだ金曜日。彼女の荷物が届くのは土曜日、つまり明日だ。今日もソファで寝るのか、と思うとまだ朝だというのに少し気分が落ち込む。


 顔を洗い、お昼用の弁当を作ろうとしたが、あかり用の弁当箱が無いのに気付く。
 ……買いに行くしかないよなぁ。

 仕方ない、今日のところはおにぎりで我慢してもらおう。


 出来上がったところで、簡単な朝食を用意して、7時になったところで自室に向かう。

 ノックをするが、反応はない。
 念のため、もう一度ノックをして声をかけて中に入る。

 ベッドの上では、丸い膨らみが規則正しく上下に動いている。
 近づくと、顔まで布団をかぶって熟睡しているようだ。

 声をかけても反応がないので、意を決して布団をはぐと、俺はそのまま固まってしまった。

 昨日、あかりがウチに来てからというもの、ずっと俯いており、髪で隠れて顔が見えなかった。
 しかし、今は無防備にその素顔を晒している。

 今までの食生活のせいか、少し痩せすぎな気もするが、触れたら壊れてしまいそうな小柄な顔に長い睫毛。小さな鼻と形の良い唇。

 神楽坂あかりは、まぎれもない美少女だった。

 如月愛衣も美少女だが、あっちは美人系の美少女だ。対してあかりは、小動物のようなかわいい系の美少女であった。


 見とれていると、あかりが身じろぎをして、ハッと我に返る。
 あらためて声をかけるも反応はなし。
 仕方なく、頬を軽く叩く。手で覆えてしまうくらいに綺麗で小さな顔。
 あかりは身動ぎすると、俺の手を掴み、その手に頬ずりをし始めた。

 再び固まる俺の体。

 昨日のあかりと印象が違いすぎて、どうすればいいのか分からなくなる。
 しばらく呆然としていると、あかりの目がだんだんと開いていき、焦点の合っていないトロンとした瞳でこちらを見る。

「……おに…ちゃ……」


 はーい! あなたのお兄ちゃんですよー!
 でもね、もう起きて! お兄ちゃんのライフはもう0よ!
 なんなら生き返ってもういっぺんライフ消し飛ぶまであるから!

 そんな俺の祈りが通じたのか、だんだんと焦点の合った瞳が俺を捉える。
 そして、頬ずりもピタリと止まり、顔が見る見るうちに赤く染まる。

「……っ、な、なんで……っ」

「いや、朝だし、起こそうと思ったんだけど……」

 なんて言えばいいのか分からず、見つめ合ってしまう。

「あー、その、なんだ。とりあえず朝飯用意してあるから、起きて顔洗ってこいよ」

「あ、はい……」

 俺は掴まれていた手をするりと抜いて、そのまま部屋を出て扉を閉める。
 そのままソファに座り、片手で顔を覆う。


「あれは反則だろ……」
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