そらに光る星

もやしのひげ根

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7.悪夢の前兆

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 扉が開き、パタパタと走り去る音がする。

 落ち着け、俺。

 ペッタン、ペッタン。
 それは餅つけだ。
 脳内で餅をつき始めるウサギどもを追い出す。


「おにいちゃん、ね……」


 自分で言うのもなんだが、昨日はかなり冷たく接したはずだ。
 なのに、寝ぼけていたとはいえ、あの態度。

 ……考えても分からない。


 まあいいか。
 ぼっちは他人のために割く時間など持ち合わせていないのだ。

 どうせ向こうも忘れたいだろうし、なかったことにするのが一番だ。
 それよりも朝飯を食べて学校へ行かねば。

 数分後、戻ってきたあかりと朝食を摂る。
 昨日と同じく、うつむいているせいで、顔が隠れてしまう。
 ……顔が赤いのはバレバレだけど。


 いただきますとごちそうさま以外、お互い無言で食べ終え、学校へ行く支度をする。

 そういえば、あかりはどうやって通学するのだろうか。
 ここから最寄りの中学は徒歩で30分くらいはかかるはずだけど……。

 なんて考えていると、あかりの部屋の扉が開く。
 そして出てきたあかりを見て、思考が全て吹っ飛んでしまう。



 …………え?


 そういえば、俺が勝手にと思いこんでいただけで、ちゃんと聞いていなかった。

「か、神楽坂……」

「……なんですか?」


 俺はやっとの思いで言葉を絞り出す。

「お前、?」


「……16歳、高校2年生です」


 彼女は俺が通う高校の女子用制服を身にまとっていた。
 俺は小柄な彼女を中学生と思い込んでいて、高校生、しかも同学年であるなんて想像もしていなかった。

 自分のマヌケさに呆れてしまう。こんな可能性を見落としていたなんて……。


「神楽坂」

 再び彼女を呼ぶ。

「緊急時以外、学校では俺に関わるな」

「……えっ」

 言われた側は驚いているようだが、俺は説明をせずに玄関へ向かう。
 彼女も慌てて後ろについてきて靴を履こうとするが、バイブ音がそれを中断させる。
 こんな時間に電話……?しかし、俺のポケットからは振動を感じない。ということは?

 振り返ると、あかりがビックリしつつもカバンからスマホを取り出して、電話に出る。

「……もしもし。……はい。……はい。…………はい」

 こいつは「はい」しか言えないのかよ。典型的なNOと言えない日本人じゃねえか。

 いくつか返事をすると、電話を終え、なにか言いたげに俺を見てくる。

「なんだ」

「……お父さんからで、学校へ付いたら、二人で錦野先生のところに行くようにって」

「は?」

「昨日言い忘れてたらしくて、か、神谷君にかけても出てくれないから私にって……」



 たった今こいつに、俺に関わるなって言ったばかりなのに、ものすごく嫌な予感しかしない。
 もういっそのこと、学校を休んでしまいたいが、こいつの転入初日だ。行かないわけにもいかないだろう。




 俺はスマホを取り出すと、あの男に『豆腐の角に頭ぶつけてくたばれ』と送信した。
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