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18.アフターフェスティバル
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世界というのは、どこまでも残酷で俺の日常を壊していく。
これで今月だけで何度目だろうか。
登校しただけの俺に向けられる、静まり返ったクラス中からの視線。
え、俺ちゃんと制服着てるよな?……大丈夫、ズボンもちゃんと履いている。
ってことはなんだ?まさか寝ぐせか?怒りで目覚める戦闘民族みたいになってるのか?だが、俺は誇り高き非戦闘民族なのだ。髪が変色も伸縮もしない。あれってどういう原理なんだろうな。
そんなことを考えながら自分の席に着く。隣の席では如月がウズウズというかソワソワしている。なんだよ、トイレなら今のうちに行って来いよ。
「神谷、ちょっといいか?」
顔をあげればそこにいたのは……誰だっけ。いや、顔は分かる。クラスのお調子者代表の茶髪野郎。名前……なんだっけ。
「お前さ、その、神楽坂さんと兄妹ってホントか?」
なるほど、この視線はそういうことか。
「ああ、義理のな。そんなこと聞いてどうすんだ?」
「いやー、いつも他のヤツらには興味ありませんって顔してるのに、授業を乗っ取るような熱いヤツだったなんて意外でさ。ま、妹を守るためだったなら納得だわ」
意外なのは分かるが勝手に納得してんじゃねえよ。自らの快楽のために平気で他者を犠牲にするようなあいつらが気に食わなかっただけだ。
「でも兄妹ってことは一緒に住んでんだろ?いいよなあ。俺は兄貴しかいないから妹ってあこがれるぜ」
いや、お前の個人情報とかいらんから。
「そうかよ。俺は一人のほうが気楽でいいね。で、誰から聞いたんだ?」
別に隠す必要はないが、あまり詮索されるのもいい気分ではない。まさか、一ノ瀬が洩らすとは思えないが。
「いや、誰っていうか、神楽坂さんたちが話してるのが聞こえちゃってさ……」
前の席をチラッと見ながら若干気まずそうに言う茶髪。
「あ?」
目の前で小さな背中がビクッと震える。そうか、お前が犯人か。
「あ、違うの!あかりちゃんは悪くないの!私たちがあかりちゃんちに遊びに行っていいか聞いたら、自分だけじゃ判断できないっていうから……」
慌てて説明したのは、あかりと喋っていた、ゆるい三つ編みの少女。それで俺と兄妹で一緒に住んでるって言ったわけか。
「別に責めてるわけじゃねえよ。そいつが自分の意思で喋ったなら別にいい」
目の前の背中が勢いよく振り返った。そんなに驚くことかよ。
「い、いいの……?」
「いいもなにも言っちまったもんはもうどうしようもねえだろ。別に悪いことしてるわけじゃねえし」
「おー、さすがお兄ちゃん!早くも妹を手なずけてる!?」
うるさいぞ三つ編み。お兄ちゃん言うな。
「まあでも、みんな口には出さないけど、神谷君には感謝してるよ」
そう言いながら茶髪の後ろから出てきたのはメガネの男子生徒。おい、これ以上一気に登場人物を増やすな。名前を覚えられんだろうが。……そもそも名前知らんけど。
「感謝されるようなことはした覚えないぞ」
「いやいや。このクラスになってから、なんというか空気が悪かったけど、それを払拭してくれたんだからね」
空気が悪い……ね。原因は言わずもがなってところだけど。
でも俺から言わせてもらえば、お前らだって止めようともせずにやりたい放題やらせてたんだからな?それで、今になってすり寄ってくるとか虫が良すぎんだろ。まあこいつらに言ったところで理解するとは思えないがな。
何か言えば、次は自分が標的にされるかもという恐怖があるかもしれんが、他人の顔色を窺ってばかりの生活なんて何が楽しいのかね。俺にはさっぱり理解できんな。
「ねえねえ!お家での神谷君ってどんな感じなの!?やっぱり隅っこで静かにしてるの!?」
おい、だからうるさいぞ三つ編み。ここぞとばかりに俺に興味を持つな。今まで通り放っておいてくれ。それと、自分の家なのに隅っこにいるってどう考えてもおかしいだろ。
「ソ、ソラ君は、すごく優しいよ?ご飯も美味しいし……」
「な、名前……」
おい如月、お前聞いてたのかよ。しかも身を乗り出して興味津々じゃねえか。そんなに興味あるならちゃんとあかりに話しかけてやれよ。
「へ~。仲いいんだねー。っていうかご飯、神谷君が作ってるんだ。まさかお弁当も毎日神谷君が?」
三つ編みの問いかけにあかりが小さく頷く。
「意外だねえ。でも家事ができる男の子ってポイント高いよねえ」
知らねえよ。なんのポイントだよ。貯まったら洗剤でもくれんのか?そもそも俺は一人暮らしで、節約して好きなことに金を使うために自炊してるにすぎない。こいつのはそのついでだ。
登校後、最初のチャイムが鳴ってやっと解放されたが、俺は朝っぱらから疲れ果てていた。世の学生たちはこんなのを毎日やってんのか。尊敬するぜ。
誰とも関わりたくないから今まで隅で静かにしてたのに、こうまで注目されてしまうとは……。やっぱり目立つことはするもんじゃないな。今更言っても後の祭りだけど。
各自席に着き、ざわめきがおさまりりつつある中で、俺は机に突っ伏するのであった。
これで今月だけで何度目だろうか。
登校しただけの俺に向けられる、静まり返ったクラス中からの視線。
え、俺ちゃんと制服着てるよな?……大丈夫、ズボンもちゃんと履いている。
ってことはなんだ?まさか寝ぐせか?怒りで目覚める戦闘民族みたいになってるのか?だが、俺は誇り高き非戦闘民族なのだ。髪が変色も伸縮もしない。あれってどういう原理なんだろうな。
そんなことを考えながら自分の席に着く。隣の席では如月がウズウズというかソワソワしている。なんだよ、トイレなら今のうちに行って来いよ。
「神谷、ちょっといいか?」
顔をあげればそこにいたのは……誰だっけ。いや、顔は分かる。クラスのお調子者代表の茶髪野郎。名前……なんだっけ。
「お前さ、その、神楽坂さんと兄妹ってホントか?」
なるほど、この視線はそういうことか。
「ああ、義理のな。そんなこと聞いてどうすんだ?」
「いやー、いつも他のヤツらには興味ありませんって顔してるのに、授業を乗っ取るような熱いヤツだったなんて意外でさ。ま、妹を守るためだったなら納得だわ」
意外なのは分かるが勝手に納得してんじゃねえよ。自らの快楽のために平気で他者を犠牲にするようなあいつらが気に食わなかっただけだ。
「でも兄妹ってことは一緒に住んでんだろ?いいよなあ。俺は兄貴しかいないから妹ってあこがれるぜ」
いや、お前の個人情報とかいらんから。
「そうかよ。俺は一人のほうが気楽でいいね。で、誰から聞いたんだ?」
別に隠す必要はないが、あまり詮索されるのもいい気分ではない。まさか、一ノ瀬が洩らすとは思えないが。
「いや、誰っていうか、神楽坂さんたちが話してるのが聞こえちゃってさ……」
前の席をチラッと見ながら若干気まずそうに言う茶髪。
「あ?」
目の前で小さな背中がビクッと震える。そうか、お前が犯人か。
「あ、違うの!あかりちゃんは悪くないの!私たちがあかりちゃんちに遊びに行っていいか聞いたら、自分だけじゃ判断できないっていうから……」
慌てて説明したのは、あかりと喋っていた、ゆるい三つ編みの少女。それで俺と兄妹で一緒に住んでるって言ったわけか。
「別に責めてるわけじゃねえよ。そいつが自分の意思で喋ったなら別にいい」
目の前の背中が勢いよく振り返った。そんなに驚くことかよ。
「い、いいの……?」
「いいもなにも言っちまったもんはもうどうしようもねえだろ。別に悪いことしてるわけじゃねえし」
「おー、さすがお兄ちゃん!早くも妹を手なずけてる!?」
うるさいぞ三つ編み。お兄ちゃん言うな。
「まあでも、みんな口には出さないけど、神谷君には感謝してるよ」
そう言いながら茶髪の後ろから出てきたのはメガネの男子生徒。おい、これ以上一気に登場人物を増やすな。名前を覚えられんだろうが。……そもそも名前知らんけど。
「感謝されるようなことはした覚えないぞ」
「いやいや。このクラスになってから、なんというか空気が悪かったけど、それを払拭してくれたんだからね」
空気が悪い……ね。原因は言わずもがなってところだけど。
でも俺から言わせてもらえば、お前らだって止めようともせずにやりたい放題やらせてたんだからな?それで、今になってすり寄ってくるとか虫が良すぎんだろ。まあこいつらに言ったところで理解するとは思えないがな。
何か言えば、次は自分が標的にされるかもという恐怖があるかもしれんが、他人の顔色を窺ってばかりの生活なんて何が楽しいのかね。俺にはさっぱり理解できんな。
「ねえねえ!お家での神谷君ってどんな感じなの!?やっぱり隅っこで静かにしてるの!?」
おい、だからうるさいぞ三つ編み。ここぞとばかりに俺に興味を持つな。今まで通り放っておいてくれ。それと、自分の家なのに隅っこにいるってどう考えてもおかしいだろ。
「ソ、ソラ君は、すごく優しいよ?ご飯も美味しいし……」
「な、名前……」
おい如月、お前聞いてたのかよ。しかも身を乗り出して興味津々じゃねえか。そんなに興味あるならちゃんとあかりに話しかけてやれよ。
「へ~。仲いいんだねー。っていうかご飯、神谷君が作ってるんだ。まさかお弁当も毎日神谷君が?」
三つ編みの問いかけにあかりが小さく頷く。
「意外だねえ。でも家事ができる男の子ってポイント高いよねえ」
知らねえよ。なんのポイントだよ。貯まったら洗剤でもくれんのか?そもそも俺は一人暮らしで、節約して好きなことに金を使うために自炊してるにすぎない。こいつのはそのついでだ。
登校後、最初のチャイムが鳴ってやっと解放されたが、俺は朝っぱらから疲れ果てていた。世の学生たちはこんなのを毎日やってんのか。尊敬するぜ。
誰とも関わりたくないから今まで隅で静かにしてたのに、こうまで注目されてしまうとは……。やっぱり目立つことはするもんじゃないな。今更言っても後の祭りだけど。
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