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「あ……おかえり」
リョウはソファに半分沈み込んだまま、目だけを開けている。
きちんと起きて待つつもりだったのだろうが、寝落ちしてしまったというところか。
「ただいま」
まるで魔法を解く呪文のように、その言葉を口にした瞬間、アヤの肩から力が抜けた。
纏っていた重厚で強固な鎧が、一瞬にして霧散するような。
「もう……寝てればよかったのに」
「雑煮、作っててん。一緒に食べよ」
「今から?」
「うん」
「起きてからでも良くない?」
「お雑煮は元旦にいただくもんやで」
なんだかよくわからないが、リョウが言うならそうなのだろう、とアヤは雑煮を食べる心づもりになった。リョウも軽々と身を起こし、キッチンへ。
リョウが再び火をつけた鍋からは、湯気がゆっくりと立ち上っていた。
白く、やわらかく、外の寒さとは無縁の温度を帯びている。
「関西は白味噌で雑煮作るんやけど、白味噌の雑煮、食べたことある?」
「んー……あ、ほら、リョウん家で」
「あっそっか」
椀に丁寧に盛り付けられた雑煮を受け取る。鶏肉、大根、人参などがたっぷりと入っていて、三つ葉がトッピングしてある。箸でかき分けると、焼いた餅も入っている。
「リョウが一人で、全部?」
「ん、まあ、オカンにレシピ送ってもろてやけどな。雑煮の味ぐらい継ぎたいなあ思て」
湯気が頬に触れた瞬間、胸の奥がじん、と痺れた。
ああ、帰ってきたのだ、と。
ようやく実感する。
「どやった? 初カウントダウン」
眠気で少し掠れたリョウの声が尋ねる。鼻先が真っ赤で、ふうふうと口を尖らす様が可愛いなあ、とアヤは思う。
「無事。いつも通り」
「そらそうか、なんちゅうても佐倉支配人が仕切るホテルやもんな」
二人並んで、黙々と雑煮を食べる。
テレビは消したまま。
年明けの喧騒は、ここには必要ない。
アヤは箸を持つ手を止め、また白く霞む視界の向こうでリョウを見た。
眠そうな目、少し無精髭が除く顎、くしゃくしゃの髪。
そんな姿を見て、胸の奥がほわりと温まり、張っていた気が緩やかにほどけていく。
もう表情も、立ち居振る舞いも、話すトーンも噛む速さも、息を吐くタイミングも。
何も、取り繕わなくていい。
「……生き返る」
大きな息とともにぽつりと吐き出された言葉に、リョウが小さく笑う。
雑煮の椀は、いつの間にか空になっていた。
底に残った湯気だけが、名残惜しそうに立ち上る。
リョウはソファに半分沈み込んだまま、目だけを開けている。
きちんと起きて待つつもりだったのだろうが、寝落ちしてしまったというところか。
「ただいま」
まるで魔法を解く呪文のように、その言葉を口にした瞬間、アヤの肩から力が抜けた。
纏っていた重厚で強固な鎧が、一瞬にして霧散するような。
「もう……寝てればよかったのに」
「雑煮、作っててん。一緒に食べよ」
「今から?」
「うん」
「起きてからでも良くない?」
「お雑煮は元旦にいただくもんやで」
なんだかよくわからないが、リョウが言うならそうなのだろう、とアヤは雑煮を食べる心づもりになった。リョウも軽々と身を起こし、キッチンへ。
リョウが再び火をつけた鍋からは、湯気がゆっくりと立ち上っていた。
白く、やわらかく、外の寒さとは無縁の温度を帯びている。
「関西は白味噌で雑煮作るんやけど、白味噌の雑煮、食べたことある?」
「んー……あ、ほら、リョウん家で」
「あっそっか」
椀に丁寧に盛り付けられた雑煮を受け取る。鶏肉、大根、人参などがたっぷりと入っていて、三つ葉がトッピングしてある。箸でかき分けると、焼いた餅も入っている。
「リョウが一人で、全部?」
「ん、まあ、オカンにレシピ送ってもろてやけどな。雑煮の味ぐらい継ぎたいなあ思て」
湯気が頬に触れた瞬間、胸の奥がじん、と痺れた。
ああ、帰ってきたのだ、と。
ようやく実感する。
「どやった? 初カウントダウン」
眠気で少し掠れたリョウの声が尋ねる。鼻先が真っ赤で、ふうふうと口を尖らす様が可愛いなあ、とアヤは思う。
「無事。いつも通り」
「そらそうか、なんちゅうても佐倉支配人が仕切るホテルやもんな」
二人並んで、黙々と雑煮を食べる。
テレビは消したまま。
年明けの喧騒は、ここには必要ない。
アヤは箸を持つ手を止め、また白く霞む視界の向こうでリョウを見た。
眠そうな目、少し無精髭が除く顎、くしゃくしゃの髪。
そんな姿を見て、胸の奥がほわりと温まり、張っていた気が緩やかにほどけていく。
もう表情も、立ち居振る舞いも、話すトーンも噛む速さも、息を吐くタイミングも。
何も、取り繕わなくていい。
「……生き返る」
大きな息とともにぽつりと吐き出された言葉に、リョウが小さく笑う。
雑煮の椀は、いつの間にか空になっていた。
底に残った湯気だけが、名残惜しそうに立ち上る。
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