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第二章 恋のレッスンまだですか?

再びお仕事探しにギルドへ行きます!

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 ガタガタゴトゴト......

 私はケンちゃんのお屋敷を出て、ジェイドが引く荷車に乗って、ギルドを目指していた。ケンちゃんのお屋敷から街に入るまで、舗装のない道があるから荷車の車輪が音を立て振動も大きい。

「ジェイド。ちょっと荷車を止めてもらえますか?」

 私は少しでもジェイドと話がしたくて、荷車を引いてるジェイドに言った。
 ジェイドは荷車を止めると、御者席から降りようとする私を見て言った。

「降りるのか?」
「はい。ジェイドの隣を歩きたくて」

 そういうと、ジェイドは無言で私を抱えて降ろしてくれた。

 日本人の私には、少し高い座席なんだけど、頑張れば自分で乗降できないほどではない。それなのに荷車に乗る時も、抱き上げて乗せてくれたんだよね。

「うふっ。ありがとうございます、ジェイド」

 私は目の前のジェイドに抱きついて、お礼を言いながら顔をジェイドに擦り付けた。

「お、おい......こんなところで、人に見られるぞ」
「大丈夫ですよ。街道に入るまで、あまり民家もないですもん。それに、見られたって平気でしょ? 私たち、薬指の恋人なんですから」
「う......」
「えへへ。これから遠慮なく、ジェイドに甘えてもいいんですよね?」
「は? あ、ま、まぁ......そうだな」

 なぜかぎこちない感じのジェイドだけど、さりげなく私の背に手を回して抱き返してくれているのはとても嬉しい。

「こうしていると、とてもあったかくて幸せな気持ちになりますね」
「そ、そうか。それなら良かった」

 私はしばしジェイドの匂いと触感を楽しんだ後、荷車を引くジェイドの隣を歩きながら仕事の話を始めた。

「今日こそ、ちゃんと仕事を見つけてギルドに登録しないとですね」
「ああ......だが、本当に良かったのか? あいつの屋敷で世話になれば、仕事などしなくても贅沢に暮らすことができるんだぞ」

「そんなの自分で生きてる気がしないもの。それに、あそこにいたら、ジェイドと一緒にいられないし」
「う......ま、まぁ、そうだな」


 ***

 ジェイドと眠った翌朝、私は誰にも見られずケンちゃんの屋敷の客室に戻ることができた。そして朝食をケンちゃんといただいてからお屋敷を出たんだけどーー。

 ケンちゃんは朝食の場で、今後も自分の屋敷に滞在するよう強く勧めてくれた。
 だけど私はもう決めていた。今日はケンちゃんのお屋敷を出て、ちゃんと仕事を探そうって。

 だって、せっかく健康になれて自由になれたんだもの。前の人生みたいに、人に頼りっぱなしで生きるのは嫌だ。それにケンちゃんはお貴族様で、平民の私が気安くお世話になっていい人ではなくなったんだから。

 そういうと、ケンちゃんは「そんな寂しいことを言うな、自分たちは日本人だから、貴族も平民も関係ない」と言ってくれた。ケンちゃんは成り上がっても、そういうところは変わってなくて、それが私は嬉しかった。

 だけどあの屋敷にいたら、ジェイドと一緒にいられる時間が短くなっちゃうし、やっぱり自分の力で自分の道を切り開いてみたかった。私が決心を変えないので、ケンちゃんは私の滞在を諦めてくれたんだけど、その代わりにと条件付きで私を解放してくれた。

 その一つは、当面の生活が困らないよう、自分のお金を受け取ること。
 これに私は、かなり抵抗して言い争った。いくら友達でも、お金なんて受け取れないって。だけど野宿は山賊などに襲われる可能性もあり危険だから、せめて宿に滞在できるようにしてくれとケンちゃんに説得された。

 ジェイドが守ってくれるとは言っても、複数の賊に襲われたなら、ジェイドが怪我してしまうかもしれない。そこで私はケンちゃんに借用書を書いてもらい、借金という形で当面の生活費を受け取ることにした。

 二つ目の条件は、滞在場所と仕事が決まったら、それをケンちゃんに知らせること。何か問題が起きたり、困ったことがあったら、必ず相談をすること。

 私はそれにはすぐに同意した。と言うより、ケンちゃんにとても感謝した。
 誰も知らないこの世界で、私には相談できる友人がいてくれる。それだけで私は元気がでるよ。おまけにケンちゃんは紹介状まで書いてくれたから、私はきっと仕事に就くことができるはずだ。

 ありがとうケンちゃん。

 この恩は、絶対に忘れない。ケンちゃんが困った時には、私も迷わずケンちゃんの元に駆けつけるから。

 お別れの時、寂しそうな顔をしたケンちゃんに後ろ髪を引かれた。
 けれどその両隣には、ラーラさんたち獣人さんがいてくれたので、私は明るく「サヨナラ」を言うことができたんだ。

 ケンちゃん、これからもラーラさんたちと末長く幸せにね!


 ***

 私はケンちゃんとの別れを思い返した後、再度頑張って生きていこうと心に誓った。

 私にはそれができる!
 だって私には、ジェイドという素敵なパートナーがついていてくれるから。


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