上 下
3 / 99

おばあさんに騙されました。

しおりを挟む
私はおばあさんに連れられて王宮へやって来てわかった。

このおばあさんは、私を騙して王宮に売りに来たのだと。


この世界の人間て、みんなこんな人たちばかりなのかしら。

人間不信になりそうだ。


おばあさんは太った文官に、たくさんのお金を貰って、嬉しそうに私に言った。

「悪く思わないでおくれ。こうすることが、私にとっても、嬢ちゃんにとっても良いことなんだから。ちょっと我慢すれば、きれいな服を着て、美味しいご飯が食べられるんだからね」

そう言って、おばあさんは鼻歌を歌いながら上機嫌で帰って行った。


そばにいる文官は、私の腕を掴むと「来い」と荒々しく引っ張った。

そして広い何もない部屋に入れられた。


部屋には数人の騎士たちがいて、扉からも逃げられないように見張っている。

さっきのエロジジイもそうだったけど、ここにいる騎士たちもみんな赤い顔で私を見てる。なんか気持ち悪くて嫌だ。それに太った人か、もやしのような人しかいない。

普通って感じの人を、まだ見たことがなくて不思議に感じた。


しばらくすると、でっぷりと太った王様らしき人と、ふくよかな王妃様らしき人が一段高い場所へ入って来て座った。

その隣には先ほど荒々しく私を連れて来た文官が立っている。


王様に侍っているところを見ると、宰相かなにか偉い人なのだろう。

「どうです、陛下。かなりの上物でしょう。これならきっと第1王子もお気に召しますよ」

そう言って、意地の悪そうな顔でニヤリと笑った。


「うむ。前の奴隷はひと月もせぬうちに気が狂ってしまったからな。どうせダメになるのだから、無理にでも手を付けて楽しんでおけば良かったものを」


(な、なんだろう......奴隷とか、手を付けるとか......私、かなり危機的状況なのでは......?)

私は不安になりつつも、どうすることもできなくて立ち尽くしていた。


「女、記憶喪失というのは誠か?」

王様は私に向かって聞いてきた。


人でなしばかりのこの世界で、抵抗したら何をされるか分からない。

私は本能的に、逆らわず穏便に過ごすが吉と判断して返事をした。

「はい」


「行く当てもなく困っていると言うのも誠だな?」

「はい」


「ならば、この王宮で使ってやるから、誠心誠意務めるように。どんな事も主人に従うようにな」

「はい」


「なかなか従順で良い女ですな、陛下。これなら第一王子の褥にも、素直に入るやも知れませぬ。ククッ」

「たとえ素直にならずとも、お前に与えた所有物なのだから、遠慮なく使えと伝言しておくさ」

私はゲスな王様の言葉にドン引きした。


エロジジイといい、

乱暴な感じの宰相といい、

赤い顔の気持ち悪い騎士たちといい、

国王まで。

この世界の男はまともな者がいないのか!


それにさっきの話からして、私は第1王子の所有物になるようだけど、その第1王子って、何か訳ありみたい。

前の奴隷がひと月もしないうちに狂ったとか言っていたけど、一体どんな人なんだろう......。

私はとんでもなく嫌な世界へ来てしまったと恐怖した。



しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

オレはスキル【殺虫スプレー】で虫系モンスターを相手に無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,430pt お気に入り:618

妹の妊娠と未来への絆

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,022pt お気に入り:28

妹にあげるわ。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:132,950pt お気に入り:4,445

【完結】婚約破棄された地味令嬢は猫として溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:447pt お気に入り:1,474

後発オメガの幸せな初恋 You're gonna be fine.

BL / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:450

時代小説の愉しみ

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:576pt お気に入り:3

処理中です...