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プレゼントに選んだもの。

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「ゆいちゃん、おはよう」

「あらん!......えっと?」

「ゆい様、時折お姿をお見かけしておりますので初めましてでもないんですが。私はケリーと申します。本日はこちらのアランと共に護衛をさせていただきますので、よろしくお願い致します」

アランより少し年上のような男性は、アランとは真逆の背が高いもやしタイプ。

でっぷりのアランと二人並ぶと本当にこの人たちは護衛なの?って思ってしまう。
だけど、ローランド様が選んだ方たちだから、きっとお強い方々なんだろう。

「あらんとけりーさん。今日はよろしくです」

私はぺこりと頭を下げて日本式にご挨拶した。

いまだに言葉があまり上達しないので、こちらでの挨拶の仕方も教えてもらってない。
無理に急いでこちらの世界のしきたりを覚えなくていいとローランド様たちが言ってくださるので、甘えているのだけれど......。

ここの言葉は本当に分からなくて、書くのなんて全然無理。
まるで、前の世界でいう中東の言葉みたいに見えるのだ。

言葉をゆっくり話してくれる、見慣れた人たちの言葉は分かりやすいのだけど、人見知りのせいで顔をあまり見られないこともあり、知らない人の言葉は理解しづらいのだ。

だからセディやローランド様は、私に接する人を限定してくれているように思う。

アランがいてくれるだけで心強く感じた。

「あらん、このまえはごめんなさい。セディとは、ナカナオリ、できた?」

「ああ、そんなこと、心配しなくても大丈夫だよ。アイツとは長い付き合いだから、ちょっとやそっとで仲違いしたりしないから」

私はそれを聞いて、ほっと息を吐いた。
良かった。私のせいで、二人が気まずくなったりしたら嫌だもの。

「俺も悪かったね。これからは、ゆいちゃんに、気安く触れたりしないように気をつけるよ」

アランは私にウインクして言った。

するとケリーさんが肩をすくめてアランに言った。

「お前は誰に対しても気安くしすぎだ。女性に気安くすると、勘違いされても仕方ないんだぞ?」

「俺は紳士の嗜みとして接しているつもりなんだがな」

私たちはお互いに見つめあって笑った。


「ゆいちゃん、お待たせ。それじゃ、行きましょうか」

ママさんがとても貴婦人らしい出で立ちで出てきた。

「ママさん、きれい」

「ありがとう、ゆいちゃんには負けるけれどね」
ママさんはにっこり微笑んで言う。


こちらの世界では、女性は普通に綺麗な人が多くて、そんな人たちは、こちらの人が見れば平凡に見えるらしいから本当に不思議だ。

「さて、では馬車に乗り込んでから、何を買うのか教えてちょうだい」

私たちは馬車に乗り込み、アランとケリーさんは馬で馬車に並走してくれていた。

「ママさん。きのうはありがとでした。わたし、セディにシンパイかけたです。おわびと、それからイマまでのおれい、したいです。だからジブンのオカネ、ほしかったです」

「うふふ。そんなことだろうと思ったのよ。あの人ったら女心が何もわかってないんだから困った人よね」

ママさんは楽しそうに続けて聞いた。

「それで?息子に何を贈りたいの?」

「ハイ、かんがえたですが、セディんちはオカネモチだから、なんでもいいものもってマス。だから、てづくりで、<御守り>つくろうおもうです」

「オマモリ?」

「ハイ。まえのセカイで、わたした人をマモってくれるコブクロみたいなのがアリマシタ。わたし、それ作りたいデス。セディ、わたしをマモル。だから、わたしも、御守りわたして、セディをマモルです」

「なるほど。こちらで言う祝福のペンダントみたいなものね」

「こちらはペンダント、タイセツナヒトにおくるですか?」

「そう。自分の持ち物をペンダントにはめ込んで渡すのよ」

そうか、なら、私も自分の何かを、御守袋に入れて、首からかけられるようにしようかな。

私は商店街できれいな布を買った。御守り袋とお揃いの生地で、私のショールを作ればいいとママさんが言ってくれたから多めに買った。少しだけ生地を切ってもらい、残りは仕立屋さんに預けた。

そのあと首に掛けても切れない丈夫そうな飾り紐を買って帰った。

途中でママさんがお茶に誘ってくれたのだけど、私は早く帰って御守りを作りたかったので、お昼には屋敷に帰って来た。

「あらん、けりーさん。どうもありがとでした」

「随分早いお買い物でしたね。もっと色々買われるのかと思いましたが」

ケリーさんは不思議そうに言っった。

「はやくかえって、つくりたいので」

私がそう言うと、アランはニヤッと笑って言った。

「手作りのプレゼントかあ。今日は自分が護衛を頼まれなかったと機嫌が悪かったが、理由を知ったらアイツ、喜ぶだろうな」

「そ、そうかな?よろこんでくれるかな......?」
私は頬を染めながら言った。

「ああ。飛び上がって喜ぶに違いない」

そう言ってアランが私の頭を撫でようと、手を伸ばしたところをケリーさんが掴んで止めてくれた。

「ほら。すぐそうやって触ろうとする」

私たち3人は、また見つめあって笑った。


「さあ、ゆいちゃん。お屋敷に戻りましょう。お裁縫箱を貸してあげますからね」

ママさんに催促されて、私は2人にお辞儀して家の中に入った。



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