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私のせいで通報される。

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もう、何なの ⁉︎

店の人たちの態度はっ‼︎

私はセディの隣に黙って立っていたのだけれど、店長らしき男の、上から目線の言い草にぶるぶると震えるような怒りが湧き上がっていた。


女性店員さんの気持ちは、分からないでもない。

私にとっては最高のイケメンのセディだけど、この世界では恐怖や嫌悪に値する容貌らしいから。

それでもよ?前の世界なら、一瞬引いたとしてもプロ意識で笑顔を作り、きちんと接客をするじゃない?

この世界は醜いものに寛容じゃないってのも何となく分かったけど、それでも。

ただ、声をかけただけのセディが、なぜこんなにも酷い言われようをしなくちゃいけないの ⁉︎


私はこれ以上セディを傷つけられることは耐えられなくなって、思わず店長さんに噛み付いた。

幸いこの姿がこの世界では美しい部類に入るためか、店長さんは私にもセディにも謝ってくれた。

女性店員も私たちのやりとりを聞いていたらしく、奥から出て来て謝ってくれた。

私は気に入らない店で服を買うのは嫌だと思ったけれど、セディが選んでくれた服がとても私好みだったので、やっぱり欲しいと思って試着してみた。

この世界の服は、私のようなぽっちゃりデブのサイズが豊富にあるみたいで、ぴったり着られたから嬉しかった。

試着した姿をセディに見せると「似合っている」と言ってくれたので、そのまま値札を女性店員さんに切ってもらって、着て来たラベンダーのドレスを袋に包んでもらった。


「ありがとうございました。本当にすみませんでした。どうかまた、いらしてくださいませ」

店長さんと女性店員さんは、少しばかり値下げしてくれ、私とセディに深々と頭を下げた。



「......さっそく嫌な思いをさせてしまってごめんな」

店が見えなくなる辺りまで、私はつんと顎を上向けて歩いていたのだけれど、セディの言葉で武装解除されてしまった。

顔が青ざめていくのが自分でもわかる。
ガクガクと身体が震えだし、足の力がガクンと抜けた。

その場でしゃがみ込んでしまった私にセディが駆け寄った。

「ゆい⁈ 大丈夫か⁈ 」

私は今まで、どんなに嫌な気持ちを抱いても、人に抗議するなんてしたことがなかった。

自分のことなら我慢する方が楽だから黙っているけれど、セディを傷つけられるのは耐えられなかったのだ。

舐められないようにと貴族令嬢のごとく高飛車な風に振舞っていたのだけれど、もう限界だ。


「あ......。怖かった......。わたし、おみせのヒトに、モンクいう、はじめて...... 」

「ゆいっ!すまない。そんなになってまで俺をかばってくれて...... 」

セディは自分もしゃがみ込んで私を優しく抱きしめてくれた。

「ゆい、俺はあれくらいのことには慣れているから。今度からはかばってくれなくても大丈夫だから」

そう言いながら、私の背中をゆっくりと撫でてくれた。


セディの方が傷つくことを言われたのに、私をこんなにも気遣ってくれる優しいセディが、あんなひどい言われようを慣れている、とか庇ってくれなくても大丈夫、などと言うのを聞いて、今まで1人で耐えていたのかと思うと涙まで出て来てしまった。

「セディはとてもかっこよくてすてきなのに......。こんなにもやさしいのに...... どうして...... 」

「ありがとう、ゆい......。俺は、ゆいがそう思ってくれるだけで十分だよ...... 」

セディが更に私を強く抱きしめた時、頭上から鋭い声がかかった。


「おい!お前 !! そのお嬢さんから今すぐ離れろ!! 恐ろしいやつが、怖がって泣いている女性を無理やり手篭めにしようとしていると何人もから通報が来ているんだぞ!」

「へ?」

私は涙を引っ込めて周りを見た。

デパートの通路で、しゃがんだまま抱き合っていた私たちが悪いのだけど、周りには私たちを取り囲むように人だかりができている。

遠くから見るお客たちの嫌悪に満ちた目は、セディに向けられヒソヒソと噂されていた。


私たちにするどい声をかけて来たのは、治安を守る騎士様ふたりだった。

私は焦って立ち上がり、しゃがんだまま呆然としているセディを抱きしめ返して叫んだ。

「ちがいますっ!このヒトはわたしのタイセツなヒトですっ!ムリヤリなんかじゃありません」


「ええっ?」

通報で駆けつけた騎士たちは困惑しながら私を見た。

「と、とにかく、そこのお前、顔を見せろ!」

もう1人の騎士が鋭くセディに言った。

セディは「はあ」と大きくため息をつくとゆっくり立ち上がり、騎士たちを睨みつけた。


「副団長~?!」


ふたりの騎士は「失礼致しました!!」と敬礼をすると、周りにできた人だかりを追い払ってくれた。





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