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18話 休憩時間のジミーな会話
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私はゴライアス先輩率いる《ダンジョン攻略専攻チーム》の新人ミルフィ・クリミア。
ダンジョン攻略の休憩時間のこと。近くの大岩に腰掛けて水筒の水を飲んでいたら、そこへ近づいてくる眼鏡を掛けた地味めな人影があった。
「ねぇ、クリミアさんさぁ」
「うん、なによジミ……チャール、いや、チャーリー」
「そこまで間違えるのなら、もうジミーでもいいよ」
「ほんと!!?」
「そんなに嬉しそうにされると、ちょっと傷付くんだけども」
そう言いつつ眉をひそめるのは、同学年で同時期に《ダンジョン攻略専攻チーム》へ配属されることになったジミーことチャーリー・クレイである。今後は本名の方を思い出す機会もあまりないだろうけども。
だってジミーって呼んでいいのなら、今後間違える心配もないからね。余計なことに脳を使わなくてよくなると思えば、自然と気分も上向くというものだ。
「最近さ、先輩たちと仲良いよね……僕とはそんなに仲良くしてくれないくせに」
「いや、別にジミーと仲良くしてないわけじゃないと思うし、先輩たちとも普通の関係性だと思うけども」
「ウソだー」
ジミーは口を尖らせて責めるような口調で言う。
「やたら先輩にベッタリじゃん。僕を放っておいて、やれ『先輩、効率的な戦闘の運び方を教えて下さい』だの『先輩、もっと武器の使い方やそれを活かした動きを教えて下さい』だのってさー」
「だって先輩たちって本当に凄いのよ!?だから色々聞いてみるのも当然でしょ」
最初こそ少し誤解していたが、ゴライアス先輩は本当に素晴らしい人だった。
お陰で私の実力はメキメキ上がっているし、先輩がプレゼントしてくれた魔法補助機能があるメイスは本当に良いもので、今では予備用でもう一つ買おうかと悩んでいる程だ。メイスというか打撃武器というものは中々奥深いもので、殴り方、振りかぶり方など簡単に語れるものではなかった。当初棍棒を馬鹿にしていた頃の自分に会えるのであれば、殴って改めて言い聞かせたいほどである。
そんなわけで、私は先輩のことをとても尊敬している。見た目はゴリラだけど面倒見もいいし、あんなにいい先輩もなかなか居ないだろう。
「僕に聞いてくれてもいいのに……」
「え、ジミーにそんなこと出来るの!?」
「できなきゃ言わないけども……?」
むむ、ジミーって本当に色々と優秀よね、ジミーのくせに。
「それでもくやしいから、やっぱり先輩に聞くわ」
「えぇ~」
ジミーは大げさな身振りで驚いた振りをする。今まで一緒に過ごしてきて分かったが、彼はこういう芝居がかったようなリアクションをよくする。言うなれば、存在がうるさい人間だった。
「ひどい、それじゃあ。今度の中間試験の勉強だって、どうせ先輩に教えて貰うんだろ」
「いや、別に勉強はわざわざは……って中間試験?」
「うん中間試験、学年最初のやつがもうすぐだっただろう。もしかして忘れてた?」
「……完全に忘れてたわよ!!」
私がそう叫んだ瞬間、ジミーは嬉しそうにニンマリ笑った。
あ、嫌な予感……。
「へぇー、そうなんだ。それじゃあ全然対策もしていなくて大変だろうね。ねぇねぇ今からどうするつもり、もう試験まで2週間切ってるよ」
うわぁぁ、コイツムカつくぅぅ!!
「一体どうするのかな、気になるな~ ちなみに僕はもう対策済みだよ」
そう言いつつ彼はチラリとコチラを見る。それはもう嫌らしくニマニマと。
こ、コイツだけには頼りたくない!!
「えー、どうしようかな?僕が教えてあげても」
「いえ、先輩に頼るわ」
私がそう口にした瞬間、ジミーの動きが完全に止まった。
「また先輩に?」
「そうよ、悪い!?」
「僕がいるのに」
「別にアンタは関係ないでしょ」
「ひどいよー」
そう言ってジミーは私のことをポコポコと軽く叩く。本当に軽くだから全然痛くはないけども、それがどうにも鬱陶しい。
「ええい、いちいちなんなのよ!!もしかしてアンタ私の彼氏とかのつもりなの!?」
苛立ちから彼を振り払いつつ、そんな言葉を口にした瞬間、明らかに彼のまとう空気が変わった。鬱陶しい動きをピタリと止め、口を閉じ、何を思ったのか地面を見つめている。
…………これは間違えたかもしれない。
「ご、ごめん、流石に言い過ぎたかも」
流石に空気の悪さを察して、私は即座に謝罪した。しかし彼はそれでも何も言わない。
「ごーめーんってジミー。ほら冗談じゃん、機嫌直してってば」
今度は私の方が茶化すような口調で、ぽんぽんジミーの背中を叩く。
いや、だってキツいんだもの。お願いだから適当になんとかいってよ!
「……僕、ちょっと席を外すね」
「え?」
そういうと彼は私の返事も聞かず、その場から立ち去ってしまった。
え、え、え。
ちょっと待ってよ!!?
そんなに駄目だったの!?だってジミーも割と悪ふざけするし、それくらい良いかなって……。
いや、待って、謝るから戻ってきてよ!!
慌てて追い掛けようとしたところ、ゴライアス先輩に捕まってしまった。そこで個人間のトラブルがあったので、ジミーを追いかけたい旨を話したのだが「アイツなら一人でも大丈夫だから」と聞いてもらえず、結局私は先輩とともにダンジョン攻略に戻ることとなった。
そしてその日以降、中間試験が始まってダンジョン攻略が休止期間に入るまで、ジミーがこの《ダンジョン攻略専攻チーム》に戻ってくることはなかった。
ダンジョン攻略の休憩時間のこと。近くの大岩に腰掛けて水筒の水を飲んでいたら、そこへ近づいてくる眼鏡を掛けた地味めな人影があった。
「ねぇ、クリミアさんさぁ」
「うん、なによジミ……チャール、いや、チャーリー」
「そこまで間違えるのなら、もうジミーでもいいよ」
「ほんと!!?」
「そんなに嬉しそうにされると、ちょっと傷付くんだけども」
そう言いつつ眉をひそめるのは、同学年で同時期に《ダンジョン攻略専攻チーム》へ配属されることになったジミーことチャーリー・クレイである。今後は本名の方を思い出す機会もあまりないだろうけども。
だってジミーって呼んでいいのなら、今後間違える心配もないからね。余計なことに脳を使わなくてよくなると思えば、自然と気分も上向くというものだ。
「最近さ、先輩たちと仲良いよね……僕とはそんなに仲良くしてくれないくせに」
「いや、別にジミーと仲良くしてないわけじゃないと思うし、先輩たちとも普通の関係性だと思うけども」
「ウソだー」
ジミーは口を尖らせて責めるような口調で言う。
「やたら先輩にベッタリじゃん。僕を放っておいて、やれ『先輩、効率的な戦闘の運び方を教えて下さい』だの『先輩、もっと武器の使い方やそれを活かした動きを教えて下さい』だのってさー」
「だって先輩たちって本当に凄いのよ!?だから色々聞いてみるのも当然でしょ」
最初こそ少し誤解していたが、ゴライアス先輩は本当に素晴らしい人だった。
お陰で私の実力はメキメキ上がっているし、先輩がプレゼントしてくれた魔法補助機能があるメイスは本当に良いもので、今では予備用でもう一つ買おうかと悩んでいる程だ。メイスというか打撃武器というものは中々奥深いもので、殴り方、振りかぶり方など簡単に語れるものではなかった。当初棍棒を馬鹿にしていた頃の自分に会えるのであれば、殴って改めて言い聞かせたいほどである。
そんなわけで、私は先輩のことをとても尊敬している。見た目はゴリラだけど面倒見もいいし、あんなにいい先輩もなかなか居ないだろう。
「僕に聞いてくれてもいいのに……」
「え、ジミーにそんなこと出来るの!?」
「できなきゃ言わないけども……?」
むむ、ジミーって本当に色々と優秀よね、ジミーのくせに。
「それでもくやしいから、やっぱり先輩に聞くわ」
「えぇ~」
ジミーは大げさな身振りで驚いた振りをする。今まで一緒に過ごしてきて分かったが、彼はこういう芝居がかったようなリアクションをよくする。言うなれば、存在がうるさい人間だった。
「ひどい、それじゃあ。今度の中間試験の勉強だって、どうせ先輩に教えて貰うんだろ」
「いや、別に勉強はわざわざは……って中間試験?」
「うん中間試験、学年最初のやつがもうすぐだっただろう。もしかして忘れてた?」
「……完全に忘れてたわよ!!」
私がそう叫んだ瞬間、ジミーは嬉しそうにニンマリ笑った。
あ、嫌な予感……。
「へぇー、そうなんだ。それじゃあ全然対策もしていなくて大変だろうね。ねぇねぇ今からどうするつもり、もう試験まで2週間切ってるよ」
うわぁぁ、コイツムカつくぅぅ!!
「一体どうするのかな、気になるな~ ちなみに僕はもう対策済みだよ」
そう言いつつ彼はチラリとコチラを見る。それはもう嫌らしくニマニマと。
こ、コイツだけには頼りたくない!!
「えー、どうしようかな?僕が教えてあげても」
「いえ、先輩に頼るわ」
私がそう口にした瞬間、ジミーの動きが完全に止まった。
「また先輩に?」
「そうよ、悪い!?」
「僕がいるのに」
「別にアンタは関係ないでしょ」
「ひどいよー」
そう言ってジミーは私のことをポコポコと軽く叩く。本当に軽くだから全然痛くはないけども、それがどうにも鬱陶しい。
「ええい、いちいちなんなのよ!!もしかしてアンタ私の彼氏とかのつもりなの!?」
苛立ちから彼を振り払いつつ、そんな言葉を口にした瞬間、明らかに彼のまとう空気が変わった。鬱陶しい動きをピタリと止め、口を閉じ、何を思ったのか地面を見つめている。
…………これは間違えたかもしれない。
「ご、ごめん、流石に言い過ぎたかも」
流石に空気の悪さを察して、私は即座に謝罪した。しかし彼はそれでも何も言わない。
「ごーめーんってジミー。ほら冗談じゃん、機嫌直してってば」
今度は私の方が茶化すような口調で、ぽんぽんジミーの背中を叩く。
いや、だってキツいんだもの。お願いだから適当になんとかいってよ!
「……僕、ちょっと席を外すね」
「え?」
そういうと彼は私の返事も聞かず、その場から立ち去ってしまった。
え、え、え。
ちょっと待ってよ!!?
そんなに駄目だったの!?だってジミーも割と悪ふざけするし、それくらい良いかなって……。
いや、待って、謝るから戻ってきてよ!!
慌てて追い掛けようとしたところ、ゴライアス先輩に捕まってしまった。そこで個人間のトラブルがあったので、ジミーを追いかけたい旨を話したのだが「アイツなら一人でも大丈夫だから」と聞いてもらえず、結局私は先輩とともにダンジョン攻略に戻ることとなった。
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