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第28話 森の精霊たちとのお話 1
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「精霊さんたちはいつも何をして遊んでるのー?」
今、ここに集まっているのは精霊の中でも下級精霊と言われる存在だ。その多くが無邪気でやや幼い性格をしており仲間たちと戯れて遊ぶことを好んでいる。
だから当たり障りない話題を選ぶとこういう感じなってしまう。
……別にふざけてるわけじゃないんだよ?
「追いかけっこー」
「水遊びー」
「そっかー、私も水遊びは好きだよ」
いやー、水を使って魔術の威力を検証したりするのって便利なんだよねー。
だから私は水辺でお気に入りの検証スポットをいくつか確保していたりする。
「じゃぶじゃぶするのが楽しいんだー」
「葉っぱをお舟にするのー」
身振り手振りを交えて楽しさを表現する小さな精霊たちの様子は微笑ましく、見てるだけで癒やされる気がする。
目的が違うのは分かってるけど……多少はいいよね……!!
私、徹夜してるし……!!
「みんなでたくさん遊んで楽しそうだねー」
私がうんうん頷いていると、何故か楽しそうだった精霊たちが急に暗くなった。
あら、どうしたのかな……?
「でも昔より仲間が減っちゃったの……」
「たくさん森から出ていっちゃった……」
あら……もしかして《みんな》って言葉で出て行った仲間のことを思い出しちゃったのかな……?
うーん、でもそれはかなり気になるぞ……。
「そうだったんだ、それは寂しいね……でもどうしてかな?」
大精霊が住んでいる場所なら、他の精霊にとっても居心地が良いはずなのに……。
というのも大精霊はそこにいるだけで特別な存在だからだ。
まず魔力を保有している存在は、みんな何もしなくても僅かに魔力をまとっているのが普通であるのと共に、その魔力には属性という大きな括りとは別に、個人の資質によって異なる特殊な性質を保有していることがある。
そして大精霊が常にまとっている魔力は大精霊自身にとっては僅かな量でも、他から見れば莫大なものある。更に魔力の特殊な性質により周りの環境に大きな影響を及ぼすのだ。
つまり大精霊が長期間どこかに居れば、そこの環境自体が変わってしまう。
例えば大地の大精霊ならば、その土地の植物が一切病を患わなくなったうえ成長が早まったり、その土地の地質が大きく向上するといった感じだ。
何より精霊にとって重要なのは、その土地の大気には大精霊がまとう優良な魔力が混じるという部分だ。それは魔力を糧としている精霊にとって貴重なものであり、何もない土地に住むよりも遙かにラクに食料である魔力を得ることができる。
だから大精霊がいる土地には他の精霊が数多く住み着くことになるわけだ。
要するに大精霊様が住んでいる場所は、他の精霊たちにとって居心地最高で食事食べ放題な優良お昼寝スポットと言っても過言ではないわけだ……こういうこと言うと怒られるけど、人間に置き換えるとこの認識だから間違ってはいない!!
「マナが減っちゃったの……」
「この森のマナがいっぱい減っちゃったの……」
「そのせいで木やお花も前より元気がなくなっちゃったの……」
マナというのは、精霊たちが魔力をさして使う言葉だね。厳密には生命エネルギー的なものも含まれた意味合いらしいけど……魔術学的な観点から言えば、それら全部をまとめて魔力なので私の中では魔力と言い切らせてもらおう。
もちろん会話するときは合わせるけどね?
「それは困ったね……どうしてそんなことになったんだろうね……」
うーん、しかしなんで森の魔力が減ったのかな……。
大精霊がいるのにどうすればそんなことが起こるのだろうか……。
「大精霊様が眠っちゃったの」
「それから段々森の元気がなくなってきちゃったの」
眠った……?
おかしいな、大精霊をはじめとする上級以上の精霊は睡眠を取らないはず……。
体力の回復のための休息を取ることはあるけど、それは睡眠と根本的に異なる。なぜなら彼らは休んでいたとしても意識があるはずだからだ、だからそれを眠ったと表現するのは不自然なんだよね……。
「大精霊様が眠っちゃったって本当の話……?」
「ホントだよー」
「呼んでも全然答えてくれなかったんだからー」
下級精霊とはいえ、精霊の同胞を無視した……?
人間であるアルフォンス様を無視するのとはワケが違う。
精霊たちの間で上下関係は絶対ではあるけど、仲間を大切にする彼らは格上の精霊が下級精霊を無碍にすることはない。
まぁ本当に寝てたのだとしたら、おかしくないけど。
……まず、大精霊が寝ること自体がおかしいんだよな。
一体なんなんだろう、これは……。
「ところで大精霊様はどれくらい寝てたの?」
「うーん、800年くらい?」
「違うよー、1000年だよ!!」
「えー、600年くらいじゃない?」
全部桁がおかしい……!! しかも数百年単位でぶれてる!!
この子たちにとってはこれが普通なのか……凄いな……。
「……それじゃあ、大精霊様はかなり長い間寝てたんだね」
この子たちの言葉通りなら1000年でも600年でも、物凄く長い間寝てたということだけは間違いないさそうだ。
「そうそう」
「ずーと寝てた!!」
「閉じこもって寝てたんだよー」
ずっと閉じこもってた……ね。
寝るときは静かな方がいいのは分かるけど、大精霊様がね……。
うーん……なんだろうね、この違和感は……。
今、ここに集まっているのは精霊の中でも下級精霊と言われる存在だ。その多くが無邪気でやや幼い性格をしており仲間たちと戯れて遊ぶことを好んでいる。
だから当たり障りない話題を選ぶとこういう感じなってしまう。
……別にふざけてるわけじゃないんだよ?
「追いかけっこー」
「水遊びー」
「そっかー、私も水遊びは好きだよ」
いやー、水を使って魔術の威力を検証したりするのって便利なんだよねー。
だから私は水辺でお気に入りの検証スポットをいくつか確保していたりする。
「じゃぶじゃぶするのが楽しいんだー」
「葉っぱをお舟にするのー」
身振り手振りを交えて楽しさを表現する小さな精霊たちの様子は微笑ましく、見てるだけで癒やされる気がする。
目的が違うのは分かってるけど……多少はいいよね……!!
私、徹夜してるし……!!
「みんなでたくさん遊んで楽しそうだねー」
私がうんうん頷いていると、何故か楽しそうだった精霊たちが急に暗くなった。
あら、どうしたのかな……?
「でも昔より仲間が減っちゃったの……」
「たくさん森から出ていっちゃった……」
あら……もしかして《みんな》って言葉で出て行った仲間のことを思い出しちゃったのかな……?
うーん、でもそれはかなり気になるぞ……。
「そうだったんだ、それは寂しいね……でもどうしてかな?」
大精霊が住んでいる場所なら、他の精霊にとっても居心地が良いはずなのに……。
というのも大精霊はそこにいるだけで特別な存在だからだ。
まず魔力を保有している存在は、みんな何もしなくても僅かに魔力をまとっているのが普通であるのと共に、その魔力には属性という大きな括りとは別に、個人の資質によって異なる特殊な性質を保有していることがある。
そして大精霊が常にまとっている魔力は大精霊自身にとっては僅かな量でも、他から見れば莫大なものある。更に魔力の特殊な性質により周りの環境に大きな影響を及ぼすのだ。
つまり大精霊が長期間どこかに居れば、そこの環境自体が変わってしまう。
例えば大地の大精霊ならば、その土地の植物が一切病を患わなくなったうえ成長が早まったり、その土地の地質が大きく向上するといった感じだ。
何より精霊にとって重要なのは、その土地の大気には大精霊がまとう優良な魔力が混じるという部分だ。それは魔力を糧としている精霊にとって貴重なものであり、何もない土地に住むよりも遙かにラクに食料である魔力を得ることができる。
だから大精霊がいる土地には他の精霊が数多く住み着くことになるわけだ。
要するに大精霊様が住んでいる場所は、他の精霊たちにとって居心地最高で食事食べ放題な優良お昼寝スポットと言っても過言ではないわけだ……こういうこと言うと怒られるけど、人間に置き換えるとこの認識だから間違ってはいない!!
「マナが減っちゃったの……」
「この森のマナがいっぱい減っちゃったの……」
「そのせいで木やお花も前より元気がなくなっちゃったの……」
マナというのは、精霊たちが魔力をさして使う言葉だね。厳密には生命エネルギー的なものも含まれた意味合いらしいけど……魔術学的な観点から言えば、それら全部をまとめて魔力なので私の中では魔力と言い切らせてもらおう。
もちろん会話するときは合わせるけどね?
「それは困ったね……どうしてそんなことになったんだろうね……」
うーん、しかしなんで森の魔力が減ったのかな……。
大精霊がいるのにどうすればそんなことが起こるのだろうか……。
「大精霊様が眠っちゃったの」
「それから段々森の元気がなくなってきちゃったの」
眠った……?
おかしいな、大精霊をはじめとする上級以上の精霊は睡眠を取らないはず……。
体力の回復のための休息を取ることはあるけど、それは睡眠と根本的に異なる。なぜなら彼らは休んでいたとしても意識があるはずだからだ、だからそれを眠ったと表現するのは不自然なんだよね……。
「大精霊様が眠っちゃったって本当の話……?」
「ホントだよー」
「呼んでも全然答えてくれなかったんだからー」
下級精霊とはいえ、精霊の同胞を無視した……?
人間であるアルフォンス様を無視するのとはワケが違う。
精霊たちの間で上下関係は絶対ではあるけど、仲間を大切にする彼らは格上の精霊が下級精霊を無碍にすることはない。
まぁ本当に寝てたのだとしたら、おかしくないけど。
……まず、大精霊が寝ること自体がおかしいんだよな。
一体なんなんだろう、これは……。
「ところで大精霊様はどれくらい寝てたの?」
「うーん、800年くらい?」
「違うよー、1000年だよ!!」
「えー、600年くらいじゃない?」
全部桁がおかしい……!! しかも数百年単位でぶれてる!!
この子たちにとってはこれが普通なのか……凄いな……。
「……それじゃあ、大精霊様はかなり長い間寝てたんだね」
この子たちの言葉通りなら1000年でも600年でも、物凄く長い間寝てたということだけは間違いないさそうだ。
「そうそう」
「ずーと寝てた!!」
「閉じこもって寝てたんだよー」
ずっと閉じこもってた……ね。
寝るときは静かな方がいいのは分かるけど、大精霊様がね……。
うーん……なんだろうね、この違和感は……。
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