47 / 94
第46話 街の書店
しおりを挟む
「では参りましょうー!」
書店に行くことが決まったことで、調子づいた私は意気揚々と歩く速度を上げて、街のメイン通りに突っ込んだ。
「……ところでキミは書店の場所は分かるのか? 迷いなく突き進んでいるように見えるのだが」
そんな私を後ろから追ってきたアルフォンス様が、控えめにそんな言葉を掛けてくる。
おおっ問題なく私の歩行速度に着いてきてますね? 早すぎるようだったら速度を落とそうと思ったけど、ではではこの早足を続行しますねー!!
おっとー、それはそうとアルフォンス様に返事をしないと。
「いえ、分かりませんよー。ですが、まぁ大丈夫です!!」
「いや、分からないのになんで大丈夫なんだ……?」
隣を歩く彼は不思議そうな顔でそう問いかけてくる。
ええ、まぁそうも思うでしょうね……ならばしっかり理由を答えましょう。
「なんとなくカンでっ!!」
私は一切歩く速度を緩めず堂々とそう答えた。
そう、私のカンが告げてるのだ書店はコチラだと……!!
「か、カン……?」
「はい、カンです!!」
それ以上でもそれ以下でもないっ!!
実は今まで見てきた街の構造とか人の流れを考慮して……という部分もないわけでもないけど、その比率の大部分を占めるのはカンなのでカンという他ない。
「カン……」
なんだか彼の私を見る目が急に残念そうになった気がする……。
ねぇ、なんでです?
「大丈夫です、いけますこっちです!!」
「そうか……」
いや、なんでそんなに微妙な返事なんですか……。
むうーっ、こうなったら絶対に書店を見つけてみせますとも!!
「ほら、書店がありましたよー!」
私の先導によって無事辿り着いた書店をビシッと示し『どうですか!!』という意思を込めた眼でアルフォンス様を見る。
はいはい、やりましたー!!
私は見事、書店を探し当てましたー!!
すごーい!! さっすがー!!
「ああ、本当に見つかったな……」
ねぇ、なんで若干信じられないみたいな反応なんですか……? ねぇ?
そう思うものの問い詰めたい気持ちがぐっと堪えて、私は彼に声をかけた。
「とりあえず入りましょうか、アルさん?」
そう今は何より本だ……!!
「あ、ああ……」
扉を開き店内に入って、ざっと辺りを見回す。
うーん、入る前から思ってたけど、ここの書店って街の規模の割に小さいなぁ……。
「これが書店か……」
そんなことを考えていると、アルフォンス様のそんな呟きが耳に届いた。
はい?
これが書店というか、これは書店以外の何物でもないのですが……。
えっ、もしかして書店にいらっしゃること自体が初めてで……!!
ならば、自称書店マイスターである私が正しい書店の見方をお教えするしかっっ!?
あっ、いや、しかし今の私にはそれよりもするべきことがある……。
悪いけれど、そわそわと店内を見ている彼はあえて放置して、私は私の用を済ませることにしよう……。
呼吸を抑え気配を希薄にして、動いたこと悟られないように行動する……実は魔術で全部カバー出来るけど、それがあったとしても私は他の面についても一切妥協しないのです!! ……まぁ基本的にはね。
さて教本、教本、ダンスの教本はどこかなー?
それぞれの棚の配置と内容をざっと確認、教本という本の種類的には実用書に近い配置になっているはず……。
…………っ!! 見つけた、確保っ!!
周りの気配に気を払いつつ、私は素早く本を手にとった。
まぁ気配どうこう以前にそもそも、人がいないんですけどね!!
あとは本命を誤魔化す為に、テキトーな本も一緒に買っておいてっと……ん、この本は?
それを見つけたのは、児童書が並ぶ棚の中でも特に民話伝説系の本が揃ってる場所。その端にひっそりと置かれていた。
…………うん、なかなか面白そうだしこれも買おう。それから後もう二冊くらいテキトーに選んで、買っちゃおっとー。
チラッとアルフォンス様の様子を伺う。すると私が迅速に行動したお陰で、そんなに時間も経過してないこともあり、先程と変わらない様子で店内を見ていた。
うん、なら気づかれない内に会計も済まして置こう……。
そう考えて私は、入口付近にいるアルフォンス様を尻目に店の奥へと一人進んでいったのだった。
書籍の会計を済ませて入口の方まで戻ってくると、相変わらずそこにいたアルフォンス様とちょうど目があった。
「もう買ってきたのか?」
彼は私が手に持っている本の入った包みをちらりと見ていった。
「はい」
「早いな……それで陳列や品揃えを見たいというのももういいのか?」
「ええ、そちらももう大丈夫です。あっ、でもアルさんがお望みとあらば、私の考察をお話いたしますが?」
ふふふっ、あまりじっくり見たわけではないけれど、それでも私レベルになるとそれだけでも十分書店の分析は出来ている。
なぜならば魔術師兼、書店マイスターなので……!!
まず、入る前にみた書店の外観で、街の規模との相対的な書店利用者の割合について当たりを付ける。そして店内に入った時点で実際にどの程度書店が利用されているか、一番最初に目に入る書籍の種類でどういう層が利用してるかを割り出したりするのだ。
いやー、どうしよっかなー、どこから説明しようかなー。
私は説明をしたくてうずうずしながら彼を見つめていたのだが、彼は何故か急に身震いをしさっと目をそらした。
「……いや、それはいい。では用事が済んだのならば店を出よう」
そう口にすると彼は私の返事を待たずに店の外へ出て行ってしまう。
もう、中々せっかちですね!?
せっかく人が説明をしようと色々と考えていたというのに!!
一人で店内に残るわけにもいかないので、私もアルフォンス様を後を追うように書店を後にしたのだった。
書店に行くことが決まったことで、調子づいた私は意気揚々と歩く速度を上げて、街のメイン通りに突っ込んだ。
「……ところでキミは書店の場所は分かるのか? 迷いなく突き進んでいるように見えるのだが」
そんな私を後ろから追ってきたアルフォンス様が、控えめにそんな言葉を掛けてくる。
おおっ問題なく私の歩行速度に着いてきてますね? 早すぎるようだったら速度を落とそうと思ったけど、ではではこの早足を続行しますねー!!
おっとー、それはそうとアルフォンス様に返事をしないと。
「いえ、分かりませんよー。ですが、まぁ大丈夫です!!」
「いや、分からないのになんで大丈夫なんだ……?」
隣を歩く彼は不思議そうな顔でそう問いかけてくる。
ええ、まぁそうも思うでしょうね……ならばしっかり理由を答えましょう。
「なんとなくカンでっ!!」
私は一切歩く速度を緩めず堂々とそう答えた。
そう、私のカンが告げてるのだ書店はコチラだと……!!
「か、カン……?」
「はい、カンです!!」
それ以上でもそれ以下でもないっ!!
実は今まで見てきた街の構造とか人の流れを考慮して……という部分もないわけでもないけど、その比率の大部分を占めるのはカンなのでカンという他ない。
「カン……」
なんだか彼の私を見る目が急に残念そうになった気がする……。
ねぇ、なんでです?
「大丈夫です、いけますこっちです!!」
「そうか……」
いや、なんでそんなに微妙な返事なんですか……。
むうーっ、こうなったら絶対に書店を見つけてみせますとも!!
「ほら、書店がありましたよー!」
私の先導によって無事辿り着いた書店をビシッと示し『どうですか!!』という意思を込めた眼でアルフォンス様を見る。
はいはい、やりましたー!!
私は見事、書店を探し当てましたー!!
すごーい!! さっすがー!!
「ああ、本当に見つかったな……」
ねぇ、なんで若干信じられないみたいな反応なんですか……? ねぇ?
そう思うものの問い詰めたい気持ちがぐっと堪えて、私は彼に声をかけた。
「とりあえず入りましょうか、アルさん?」
そう今は何より本だ……!!
「あ、ああ……」
扉を開き店内に入って、ざっと辺りを見回す。
うーん、入る前から思ってたけど、ここの書店って街の規模の割に小さいなぁ……。
「これが書店か……」
そんなことを考えていると、アルフォンス様のそんな呟きが耳に届いた。
はい?
これが書店というか、これは書店以外の何物でもないのですが……。
えっ、もしかして書店にいらっしゃること自体が初めてで……!!
ならば、自称書店マイスターである私が正しい書店の見方をお教えするしかっっ!?
あっ、いや、しかし今の私にはそれよりもするべきことがある……。
悪いけれど、そわそわと店内を見ている彼はあえて放置して、私は私の用を済ませることにしよう……。
呼吸を抑え気配を希薄にして、動いたこと悟られないように行動する……実は魔術で全部カバー出来るけど、それがあったとしても私は他の面についても一切妥協しないのです!! ……まぁ基本的にはね。
さて教本、教本、ダンスの教本はどこかなー?
それぞれの棚の配置と内容をざっと確認、教本という本の種類的には実用書に近い配置になっているはず……。
…………っ!! 見つけた、確保っ!!
周りの気配に気を払いつつ、私は素早く本を手にとった。
まぁ気配どうこう以前にそもそも、人がいないんですけどね!!
あとは本命を誤魔化す為に、テキトーな本も一緒に買っておいてっと……ん、この本は?
それを見つけたのは、児童書が並ぶ棚の中でも特に民話伝説系の本が揃ってる場所。その端にひっそりと置かれていた。
…………うん、なかなか面白そうだしこれも買おう。それから後もう二冊くらいテキトーに選んで、買っちゃおっとー。
チラッとアルフォンス様の様子を伺う。すると私が迅速に行動したお陰で、そんなに時間も経過してないこともあり、先程と変わらない様子で店内を見ていた。
うん、なら気づかれない内に会計も済まして置こう……。
そう考えて私は、入口付近にいるアルフォンス様を尻目に店の奥へと一人進んでいったのだった。
書籍の会計を済ませて入口の方まで戻ってくると、相変わらずそこにいたアルフォンス様とちょうど目があった。
「もう買ってきたのか?」
彼は私が手に持っている本の入った包みをちらりと見ていった。
「はい」
「早いな……それで陳列や品揃えを見たいというのももういいのか?」
「ええ、そちらももう大丈夫です。あっ、でもアルさんがお望みとあらば、私の考察をお話いたしますが?」
ふふふっ、あまりじっくり見たわけではないけれど、それでも私レベルになるとそれだけでも十分書店の分析は出来ている。
なぜならば魔術師兼、書店マイスターなので……!!
まず、入る前にみた書店の外観で、街の規模との相対的な書店利用者の割合について当たりを付ける。そして店内に入った時点で実際にどの程度書店が利用されているか、一番最初に目に入る書籍の種類でどういう層が利用してるかを割り出したりするのだ。
いやー、どうしよっかなー、どこから説明しようかなー。
私は説明をしたくてうずうずしながら彼を見つめていたのだが、彼は何故か急に身震いをしさっと目をそらした。
「……いや、それはいい。では用事が済んだのならば店を出よう」
そう口にすると彼は私の返事を待たずに店の外へ出て行ってしまう。
もう、中々せっかちですね!?
せっかく人が説明をしようと色々と考えていたというのに!!
一人で店内に残るわけにもいかないので、私もアルフォンス様を後を追うように書店を後にしたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる