魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第48話 楽しい露店巡り2

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 いくつかの露店を見たところで、ふとある商品が目に止まった。

 あっ、この髪飾かみかざりいいなー。
 あの子に似合いそうで……。

 そこは装飾品が並んでいる露店で、私が気になったのは一つの髪飾りだった。小ぶりな花弁かべんを持つ可愛らしい花が模してある、控えめだが華のあるそれを私はある知り合いに贈りたいと思ったのだ。

 思い浮かべたのは、故郷に残してきたオレンジ色の髪と瞳を持つ子。

 せっかく美人さんなのに、飾りっ気がなくて装飾品を付けてる姿なんて一度も見たことがないんだよね……。
 良い機会だし、たまにはこういうものをプレゼントしてみるのもいいかも知れないねー。

「すみません、これ下さい」

 即座に購入を決めた私は店員さんへ声を掛けて、お金を渡し髪飾りを包んでもらった。

「もう買ったのか?」

「ええ、いい髪飾りがあったので」

「髪飾りか……」

 そう呟いて、アルフォンス様は私が髪飾りを買ったお店の商品をそっと目を落とした。
 なんだか知らないけど、アルフォンス様も髪飾りに興味があるみたいだ。

 しかし残念ながら、そこにアルフォンス様の気を引くようなものはなかったらしい。だから特に何も買うこともなく、私たちはまた別の店を見て回ることになった。



 そんな中で私はまた、目を引かれるある品物を見つけた。

「あ、この飾り羽の装飾品いいですねー」

 それは羽の付け根の部分にひもとガラス玉がついてて、持ち物に付けられるようになっている品だ。
 うん、これもまたお土産にしようっと!

「なんだ、その羽を買うのか……?」

「はい、親しい人にあげようと思いまして」

「親しい人……それは故郷の知り合いか」

「そうです、同年代くらいの幼馴染がいるんで彼にあげようと思いまして」

 何気なくそう口にしたら、アルフォンス様の表情が途端にこわばった。

「か、彼……お、幼馴染というのは、その……男なのか?」

 そして妙にたどたどしい口調で、彼はそう聞いてきた。
 ……一体急にどうしたのだろうか?

「はい、そうなんですよー。剣なんかが凄い強くて……だからいつも持ち歩いてる剣の柄に付けられそうな、この装飾品はいいなーって思いまして」

 でもまぁ特に隠すことでもないので、私は正直に答えた。

「…………その幼馴染との関係性は?」

「え、関係性? いや、だから幼馴染ですけど……」

「で、では幼馴染のことはどう思っているんだ?」

「どうですか…………」
 
 いや、色々唐突ですね!? しかしどう思ってるかねぇ……ふむ。

 私は赤い髪を持つ幼馴染の青年の姿を脳裏のうりに浮かべる。

 あらためて聞かれてみると少し悩んでしまうなー。
 やたら付き合いも長いし、身近に接している分なかなか表現がしづらい存在だ。
 うーん…………。

「……少し口が悪いところもありますが、なんだかんだ言って私のことを助けてくれる自慢の幼馴染ですかねー」

 そうしてやや思案した末に、どうにか言葉に出来た答えがそれだった。

 割と頻繁ひんぱんに馬鹿だとかアホだとか言われるので、口が悪いのは間違いない。でも面倒見のいい性格だからなのか『お前一人じゃ心配だ』とか言って私の行動に付き合ってくれることも多いんだよね。

「じ、自慢だと……!!」

 えっ、なんでそんなに驚くのだろうか。
 嘘はいってないけど、そこまで反応する部分じゃないのでは?

「あっ、あと贔屓目ひいきめもありますが、結構カッコいいとも思います」

 そうそう、彼って容姿も整ってる方なんだよねー。一般的な女子と感性がズレてると言われがちな私だけど、これは他の女子の間でも評判らしいから間違いない……!!
 普段から散々馬鹿にされてる分、しゃくさわるから本人には言ってないけどね。

「カッコいいっっ!?」

 するとまた私の答えのどこに驚いたのか、アルフォンス様は無駄に大声でそう言った。

 …………なんかアルフォンス様の過剰かじょうな反応が、合いの手みたいで段々楽しくなってきたかもしれない。

 よし、もっとやろう……!!

「カッコいいと言えば中でも剣術の試合の話がありましてねー。その時の彼の強さがすさまじくて連戦連勝、そして一つ一つの剣術のえなんかもう目を見張るもので……」

「っっっもういい!!」

 調子づいて続けて語ろうとしたところ、アルフォンス様に強めの口調でさえぎられてしまった。

 あら、調子に乗って幼馴染自慢をし過ぎたかな?
 でも自慢出来る機会が少ない分、聞かれるとつい色々話したくなっちゃうんだよねー。
 そもそも後々バレないように、本人の耳に入りそうな所だと控えてるし……。

「結局のところキミは幼馴染の彼のことがすっ……」

「す?」

「いや、なんでもない……」

 アルフォンス様は首を振って、そのまま視線をそらしてしまった。

 す、す…………好きかってことかな?
 それはもう好きか嫌いか聞かれれば、もちろん好きというか大好きだけど……。
 なんでわざわざ聞くのをやめたのかな?

 もしかして、そこからまた鬱陶うっとおしい自慢話をされると思われてしまったとか……うん、それは大いにあるな。

「悪いが私は近くの別の店を見てるから、終わったら声を掛けてくれ……」

「あっ、はい分かりましたー」

 アルフォンス様の言葉に反射的に返事をしてしまったものの、一拍おいてアレっと首を傾げた。

 え、これって明らかにわざわざ別の店を見に行ったよね…………。

 もしかして距離を取られるほど、さっきの自慢話を嫌がられた……? え、そんなに……?

 か、軽い気持ちだったんだけど……。

 ………………。

 うん、これは本気で嫌がられてそうだから、以降は気を付けよう。

 そんなことを思いながら一人取り残された私は、改めてお土産にする商品を選んだのだった。
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