魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
51 / 94

第50話 食事処にての小休止1

しおりを挟む
 私がまた幼馴染おさななじみの話題をうっかり出してしまって以降、アルフォンス様が何やら険しい顔で考え込んでおられる……。

 えっ、私のせいですか。
 もしかして彼にとって幼馴染に関連の話題自体が禁句?
 まさか過去に何か幼馴染に関連しため事があったとか…………むむっ。

「あっ!! もう気が付けばお昼時ですねー」

 うん、こういう時は話題を変えるに限るね!! 停滞ていたい硬直こうちょくは何も生まないのでっ!

「……ああ、そういえばそうだな」

 よしっ、割と普通に乗ってきましたね。
 よかった、よかったー。
 しかしこの分だと、本格的に幼馴染語りは封印した方がいいかもしれないな……。

「では昼食にしましょう、アルさんは何か食べたいものはなどはございますか?」

「うむ……特にないな」

「あれ、そうなんですか?」

「そもそもこういう場はあまり詳しくないので君に任せる」

 ……任せられてしまった。
 さっきも似たような発言を聞いた気がするのですが……というか、この人さっきから全部私に考えさせる気では? ……まぁ別にいいですけどねー。

「分かりました。ではコチラへどうぞー」

「もう行き先が決まったのか……まるで当てがあるようだが?」

「ええ、先程いい感じの路地ろじを見かけたので、そちらを当たります」

「その根拠こんきょは…… 」

かんです!!」

「先程にもそんな言葉を聞いたな……」

「ええ、勘なので」

「そうか……」

 私が堂々と胸を張って答えると、書店を探した時よりは若干マシなもののやはり微妙な顔をされた。

 あっ、まだ信用していませんね!? 本当に当たるんですよっ!!
 例えば、ずらっと裏返したカードを並べて、その中から目当ての絵柄を引ける確率が10回中9回くらいという……!! はい、凄い!!
 えっ、一回は外してるじゃないかって……それはそれですよー。
 むしろ全部当てるって不可能じゃありません? 9回当たれば十分凄いですし、私のカンは当たると公言できると思っております!!

 というわけで、お見せしましょう私の直感力を!!

「さぁ、こちらですっっ!!」




「ほらアルさん、やっぱりありましたよ!! いい感じの料理店が!!」

 またしても私は、カンを信じて進んだ先でバッチリ料理店を見つけた。
 簡素な看板と素朴そぼくながらもお洒落しゃれ外観がいかんを持つその店を、ビシッと指差して胸を張る。
 はい、はーい優秀!!

「ああ、本当にまた見つかったな」

「ふふっ、私の勘は当たるのですよー」

「うむ、こう続くとあるいはそうかもしれない……」

 あ、あるいはってなんなんですか!?
 むー、むぅぅ……でもいいでしょう、わざわざ追及はいたしません。
 なぜなら私は心が広いので、これしきのことでは動じないのです……!!

「この店でいいのであれば中に入りますよー」

「ああ、構わない」

 アルフォンス様の同意も得られたので私は店内に入った。

 すると、まず最初に香ばしい料理の匂いが鼻につく。
 そして次に目に入る店の内装ないそうは、木張きばりの床や壁にぽつぽつと灯るやや薄暗い照明が印象的だ。

 そこそこの広さの店内にテーブルは10たく程度、人はまばらに入っており若干席が埋まっている様子である。

 うーん、とても親しみやすい庶民的な雰囲気のお店だ。
 まさしく私好み。
 高いお店って味は当然いいのだけど、ちょっと張り詰めた雰囲気があるから自分はこれくらいが好きだなー。洗練せんれんされていると言えば聞こえはいいけど、そこは好き好きなので……私はちょっとワイワイガヤガヤしたにぎやかさがあるくらいを推したいね。

 ふとアルフォンス様をみると、やっぱりというか物珍ものめずらしそうな様子で店内を見回していた。
 うん、気持ちは分かるけど悪目立わるめだちするのでやめましょうねー?
 いや、もういっそアルフォンス様の行動を隠すためにこっそり魔術を使っておくのもありかな……。

 そんなことを考えているうちに、店員さんがやってきて席に案内してくれた。

 席に着く際にメニュー表を手渡されたので、ざっと確認をする。
 なるほど、主食は羊肉で魚も少しだけある感じかー。

 見たところ羊の飼育がさかんな土地なのかな?
 あとこの料理の魚というのは、たぶん川の魚だろうな。
 ここから海って結構距離があるからね。
 魔術の技術がない以上、加工しない魚の持ち運びは出来ないだろうし……。

 実は私は島国出身なので、魚は断然海産派なのです。そういうことで、ここで食べるのは羊肉にしまーす!!
 だって川魚って、料理人の腕を含めて当たり外れが大きいんだもん。気が向いたら食べることもあるけど……とにかく今は気分ではないのでやめておきます。

 そんなわけで……さてさて、どれにしようかな?
 とりあえず羊肉のソテーか赤ワイン煮辺りかな……。
 あっ、林檎りんご果実水かじつすいもあるっ! それも飲もーとっ。

「アルさんは何になさいますか?」

「いや、まだ決まってなくて……キミの方は何にするんだ?」

「林檎の果実水を注文することは決めたんですが、メイン料理を羊肉のソテーか赤ワイン煮で迷っておりまして……」

「そうなのか、私もキミと同じものにしようかと思ったのだが……」

 ん、同じもの……?
 そうだ、その手があった!!

「それでは、私はソテーでアルさんは赤ワイン煮にするのはどうでしょうかっ!」

「私は別にそれでも構わないが、それに一体どんな意味があるんだ?」

「あえて別々のものを注文して、分け合いっこすればいいんですよー」

「わ、分け合いっこ……?」

「はい、少しづつ交換すればどちらのメニューも食べられるからいいかと思いまして」

 幼馴染であるカイくんと食事に行った時も、よくそうしてたんだよねー。でもカイくんの場合は、私が気になるって言ったメニューを全部注文してくれて、私が食べられなくなったところで残りを綺麗に食べてくれるみたいなことも多かったりして……あれ?
 それはよく考えると、なんか違うような気も…………うーん?
 まぁ、それはそれとしてっ。

「ですがもちろん、そういうことが嫌であればハッキリおっしゃって下さいね。無理を通すつもりはありませんので」

 思いついた瞬間は名案だと思ったけど、よく考えるといくら私が慣れてるからと言って、アルフォンス様に無理をさせることは出来ない。
 もしダメな場合はいさぎよあきらめないといけないよね……。

「いや、私は一向にそれで構わないが」

「それじゃあ、そうしましょうっ!!」

 ひかえめな口調で答えるアルフォンス様に、私は食い気味でうなずいた。

 やっふー!! いいって、これで両方食べられるぞー!
 嬉しいっっ!!

 えっ、無理を通すつもりはないとか言ってただろうって?
 ええ、ご了承を頂けたので私が無理を通したわけじゃありませんよー!
 ただちょっと喜びが有り余ってるというのはありますけどねっ!!

 だってせっかくなら食べたいと思ったものは、色々たくさん食べたいじゃないですか~。
 えへへっ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

処理中です...