魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
88 / 94

第86話 簡単な引っかけ問題です

しおりを挟む

「では気を取り直して話しを聞こう……カイアスも普通に立っていて構わないぞ」

御意ぎょい

 カイくんはお父様の言葉に頷くと、身を引いて私のやや後ろに立った。

「それでは私には退出許可を……」

「出すわけないだろう、そこを動くな」

 くっ、やっぱりダメか……。
 かなり自然な流れで許可を取ろうとしたのに!!

「むしろなぜ許されると思った?」

 そう聞いてくるお父様は露骨ろこつな呆れ顔だ。

「いや、とりあえず言うだけ言っておこうかと思いまして」

「その無謀むぼうなチャレンジ精神だけは評価してやろう」

「ありがとうございます。ではそういうことで私は失礼して……」

「だから、ダメだと言っているからな……!? まさか何度も言えばどうにかなると思っているのか?」

「……まさかぁ、冗談ですよ」

 ただ、もしかしたらという可能性に掛けていただけですって。
 だけど、これは本当に諦めるしかなさそうだなぁ……ちぇー。

「それではリア、話しをしろ」

「はぁ、でも具体的になんの話をすればよいのでしょうか……今年上半期の国内新書おすすめランキングのことでもよろしいですか?」

「そんなことをわざわざ聞くと思うか……?」

「はい、どんな内容だって可能性はゼロではありませんからね」

 私が笑顔でそう答えると、お父様は私から視線をそらして小さくため息をついた。
 え、え? なんですか、その反応は……あ、分かった。

「もしかして私にあえなくて寂しかったとか……? もうっお父様たら仕方ありませんねぇ~」

 そう、お父様はこう見えて案外寂しがりやさんなのだ。

 例えばある日唐突に、私の部屋に乗り込んできて『お前、また食事を全部保存食で済ませてるうえに、研究のためとか言って睡眠時間を削りまくってるらしいな!?』と言いながら、私がちゃんと寝るまで側を離れなかったり、食事を取る様子を監視したりすることがある。
 まったく仕方ない人だ。食事くらい前もって誘ってくれればちゃんと行くのに……まっ、実験と研究の予定さえ入ってなければね?

 ちなみにお父様のそんな行動のせいで、私は予定を何回か変更せざるおえなくなった。
 お父様はというと『こっちは忙しいんだからいい加減にしてくれ』などと言うが、それはどちらかというとこっちの台詞である。まぁ、私は優しいので「娘と過ごしたいけど素直になれない父親の気持ち」というものをんで、あえて言及はしていないけどね。やれやれ。


「断じて違うからな? 確かにお前の姿をしばらく見てないことに気づいたときには、軽く悪寒おかんが走ったが……」

 あれ、なんで悪寒が? おかしいなぁ……ああ、これまた分かりました!!

「心配でたまらなかったという意味ですねー? もう、素直じゃないのだから~」

 そう言いつつ、私はにこにこと笑みを浮かべるが、それに対してお父様の表情はかなり冷たい……というか無に近い。
 うーん、つれませんねぇ?

「……このままでは話しが進まないのでハッキリ言おう。 聞きたいのは、お前が無断で出国した件についてだ」

 あ……あれぇ?

「今回はその理由について、改めて聞かせてもらおうと思っていてな」

 ついさっきまで無表情だったお父様は、そう言いながらニヤリと笑った。

 そ、そこを聞いちゃいますかぁ!? いやぁぁ、それはマズいかなぁ!!
 だってこれを素直に答えちゃうと……。

『苦手なお兄様が、国外出張だと知って浮かれてつい~』
『よし分かった、ゆるさん』

 ギャー!? 私の関節が可動域の限界に挑戦させられてしまう……!!
 ん、いや、でも待って?

 その辺りって確かカイくんから聞いた話だと、上手く理由付けされてた感じだったよね?
 よかった、助かったぁ……ちなみに先程の動揺は、訓練された圧倒的精神力によって一切表面上に出してないから、上手く誤魔化し切れるぞ……!!

「そちらの件に関しては、おそらくお父様もご存知の通りでございます。私がヴィヌテテュース様からのご聖託せいたくを受け、一人この地に赴くことになったのです」

 はい、完璧。私に死角などありませんよ。

「…………ふむ、なんだ引っかからなかったか」

 んん、あれ? お父様が今、とてもおかしなことを言ったぞ? えっ、え、ヒッカカラナカッタカって何?

「確かにお前の今回の行動は、あの御方も認めているところだが……それにしては不自然な部分も多かったからな」

 ギクギクッッ!! わぁーなんていうか、もう心当たりしかない……。

「他に何かしらあるのではないかと勘ぐって、軽く引っかけたつもりだったが……流石に分かりやす過ぎだったか?」

 いえいえ、一瞬かなり焦ったので、客観的にその判断は間違ってないと思いますよ? それにしても、わざわざ話して下さりありがとうございます!! ……なんて言わないからね!?
 ひ、酷い実の娘に、そんな仕打ちをするなんて……私、傷つきました、楽しみに取っておいた貴重な実験素材を破損した時くらいには傷つきましたよ。えぇ。

「……私ってそんなことをされるほど、信用がありませんかね?」

「それについては自分の胸に聞け」

 ちょっ、なんで先刻のカイくんと、同じような事を言ってくるのですかね!?
 え、私ってなかなかいないレベルで善良な人間なのに、おかしいなぁ……なぁ。

 何気なく、私のやや後方にいるカイくんをちらりと見ると、無言なのにちょうど目が合って『ほら、だから言っただろ』と言われたような気がした。

 む、むぐぅ……いや、やっぱり納得できないんだけど!?
 みんな、私への認識がかなり酷いよね? か、悲しい……ぐすん。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

処理中です...