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第36話 魔物経済特区
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というわけで、テスラはファンサたちと一緒に繁華街へ。適当なレストランに足を運び、四人でテーブルを囲むことにする。
「なんというか、静かな町だな」
食事をしている人たちは楽しんでいるようなのだが、コックやウェイトレスは、あまり楽しそうではなかった。
「クレルハラートの町は公営事業で成り立っています。ゆえに、民のモチベーションが低いのです」
ファンサが説明してくれる。
「というと、このレストランも、スピネイルが経営しているのか?」
「スピネイル卿か、あるいはその親族でしょう。領主がすべてを掌握することで、効率の良い経済成長を推進しておられるのです。貧富の差が少なく、安定した生活を送ることができます」
「要するに、食いっぱぐれる心配がないということか」
「はい、働けなくなっても保証があります。結婚すれば、世帯あたりの収入が倍になりますので、生活は非常に豊かです。子供が生まれたら、収入はさらに増えます」
結婚すれば暮らしが楽になる。子をつくればさらに楽になる。ゆえに、家族を成すのがこの町では普通のようだ。なるほど少子化対策の参考になるとテスラは思った。
問題は『生活』に優れていても『仕事』の価値が低いことか。好きな仕事を思い切りやっても評価は一緒。賃金も変わらない。出世したところで『役目』が変わるだけ。どうしてもモチベーションが下がる。
「魔物による産業には、どういうものがある?」
「有名なのは『魔物園』ですね。他国では飼育できなかったはずの魔物が、クレルハラートでは日常的に鑑賞することができます。学院でも興味のある生徒が多くて、ね?」
生徒たちに尋ねるファンサ。すると、トニークが答えてくれる。
「魔物ショップも多く展開しているんですよ。この前、友人がこの町でフレイムホウホウの雛を買って、自慢していましたよ」
この町だと、魔物をペットにしている人たちは多いらしい。飼育ノウハウも確立できているし、それに関する書籍なども大量に出版されている。勤勉な学者にとっては興味深い町でもあるようだ。
「あとは、料理ですね」
ちょうどそのタイミングで、ウェイターが巨大な皿に丸々一羽を唐揚げにした、料理を持ってくる。
「ウイングバードの丸ごとフライになります」
風魔法を使える珍しい鳥――というか魔物だ。
ちなみに、動物と魔物の違いは、構造自体にあまり違いはない。太古の昔、魔王という存在がいた時、魔王に従って人間に敵意を持った生物が魔物である。要するに、魔王に従う習性を持っていると、魔物と認定される。
テスラは、ウイングバードのモモ肉を引きちぎり、むしゃりとかぶりつく。
「うむ、悪くはない」
忖度のない感想である。だが、やはり鶏の方が美味い。まあ、牛豚鶏に勝る畜産物はないだろう。たまにダチョウや鹿肉、猪肉などを商人がたまに仕入れたりするが、本当にそちらの方が美味なら、それらをメインに世界は飼育している。飼育しやすく美味いからこそ牛豚鶏を中心に飼育しているのだ。
「コストを考えなければ、美味な食材も多くあります。さらにいえば、クランバルジュはそれらの食材に調理法にもすぐれております。これも、公的機関が一括して情報を共有している賜でもあります」
「なるほど……見習うべきところはあるのかもしれんな」
さすがは300年も続く一流貴族といったところか。権力を振りかざしているだけではなく、しっかりと町を運営している。強大な魔力も秘めているというし、領主としての器は大きいのだろう。
「……あの、テスラ様」
「なんだ?」
神妙な表情でファンサがつぶやく。そういえば、先程から食が進んでいない。
「……明日、イシュフォルト図書館の移転に関して、舌鋒鋭い揶揄が飛び交うのでは? そうなれば、テスラ様の進退は――」
「心配か? 元凶であるおまえが言うか?」
バツが悪そうにうつむいてしまうファンサ。付き人の生徒も気まずそうだ。少し意地悪だったかとテスラは反省する。
「冗談だ。これは、私の責任である。おまえたちが気に病む必要はない」
このラシュフォール大陸は、国王陛下の御威光のもと、近隣諸国の貴族たちがそれぞれの土地を治めている。ゆえに、戦争になることは希だ。だが、ならばと統治や経済で競争するしかない。
ゆえに、大勢の集まる場では貴族同士の絆や義理が重要になってくる。テスラの場合、そういった味方は少ないだろう。女領主というだけで軽んじられていたし、それが猛威を振るって他貴族を出し抜いているのだから。
「ファンサは図書館移転を悔いているのか」
「い、いえ、その……それは……たしかに、あの建造物がそのまま、しかも町の一部として残るのは嬉しいのですが……リーくんの働きを見ていると、その……自分が小さく思えてしまいました」
「反省しているのならば良し。ファンサは胸を張って、自分が正しいと信じるのだ。絶対に引くな。もし、おまえに迷いあらば、それは私やリークに対する冒涜である」
「肝に銘じておきます」
社交の場で、なじられるのは慣れている。気分を害することをテスラは気にしていないが、外交に影響が出るのであれば話は別だ。
「なんというか、静かな町だな」
食事をしている人たちは楽しんでいるようなのだが、コックやウェイトレスは、あまり楽しそうではなかった。
「クレルハラートの町は公営事業で成り立っています。ゆえに、民のモチベーションが低いのです」
ファンサが説明してくれる。
「というと、このレストランも、スピネイルが経営しているのか?」
「スピネイル卿か、あるいはその親族でしょう。領主がすべてを掌握することで、効率の良い経済成長を推進しておられるのです。貧富の差が少なく、安定した生活を送ることができます」
「要するに、食いっぱぐれる心配がないということか」
「はい、働けなくなっても保証があります。結婚すれば、世帯あたりの収入が倍になりますので、生活は非常に豊かです。子供が生まれたら、収入はさらに増えます」
結婚すれば暮らしが楽になる。子をつくればさらに楽になる。ゆえに、家族を成すのがこの町では普通のようだ。なるほど少子化対策の参考になるとテスラは思った。
問題は『生活』に優れていても『仕事』の価値が低いことか。好きな仕事を思い切りやっても評価は一緒。賃金も変わらない。出世したところで『役目』が変わるだけ。どうしてもモチベーションが下がる。
「魔物による産業には、どういうものがある?」
「有名なのは『魔物園』ですね。他国では飼育できなかったはずの魔物が、クレルハラートでは日常的に鑑賞することができます。学院でも興味のある生徒が多くて、ね?」
生徒たちに尋ねるファンサ。すると、トニークが答えてくれる。
「魔物ショップも多く展開しているんですよ。この前、友人がこの町でフレイムホウホウの雛を買って、自慢していましたよ」
この町だと、魔物をペットにしている人たちは多いらしい。飼育ノウハウも確立できているし、それに関する書籍なども大量に出版されている。勤勉な学者にとっては興味深い町でもあるようだ。
「あとは、料理ですね」
ちょうどそのタイミングで、ウェイターが巨大な皿に丸々一羽を唐揚げにした、料理を持ってくる。
「ウイングバードの丸ごとフライになります」
風魔法を使える珍しい鳥――というか魔物だ。
ちなみに、動物と魔物の違いは、構造自体にあまり違いはない。太古の昔、魔王という存在がいた時、魔王に従って人間に敵意を持った生物が魔物である。要するに、魔王に従う習性を持っていると、魔物と認定される。
テスラは、ウイングバードのモモ肉を引きちぎり、むしゃりとかぶりつく。
「うむ、悪くはない」
忖度のない感想である。だが、やはり鶏の方が美味い。まあ、牛豚鶏に勝る畜産物はないだろう。たまにダチョウや鹿肉、猪肉などを商人がたまに仕入れたりするが、本当にそちらの方が美味なら、それらをメインに世界は飼育している。飼育しやすく美味いからこそ牛豚鶏を中心に飼育しているのだ。
「コストを考えなければ、美味な食材も多くあります。さらにいえば、クランバルジュはそれらの食材に調理法にもすぐれております。これも、公的機関が一括して情報を共有している賜でもあります」
「なるほど……見習うべきところはあるのかもしれんな」
さすがは300年も続く一流貴族といったところか。権力を振りかざしているだけではなく、しっかりと町を運営している。強大な魔力も秘めているというし、領主としての器は大きいのだろう。
「……あの、テスラ様」
「なんだ?」
神妙な表情でファンサがつぶやく。そういえば、先程から食が進んでいない。
「……明日、イシュフォルト図書館の移転に関して、舌鋒鋭い揶揄が飛び交うのでは? そうなれば、テスラ様の進退は――」
「心配か? 元凶であるおまえが言うか?」
バツが悪そうにうつむいてしまうファンサ。付き人の生徒も気まずそうだ。少し意地悪だったかとテスラは反省する。
「冗談だ。これは、私の責任である。おまえたちが気に病む必要はない」
このラシュフォール大陸は、国王陛下の御威光のもと、近隣諸国の貴族たちがそれぞれの土地を治めている。ゆえに、戦争になることは希だ。だが、ならばと統治や経済で競争するしかない。
ゆえに、大勢の集まる場では貴族同士の絆や義理が重要になってくる。テスラの場合、そういった味方は少ないだろう。女領主というだけで軽んじられていたし、それが猛威を振るって他貴族を出し抜いているのだから。
「ファンサは図書館移転を悔いているのか」
「い、いえ、その……それは……たしかに、あの建造物がそのまま、しかも町の一部として残るのは嬉しいのですが……リーくんの働きを見ていると、その……自分が小さく思えてしまいました」
「反省しているのならば良し。ファンサは胸を張って、自分が正しいと信じるのだ。絶対に引くな。もし、おまえに迷いあらば、それは私やリークに対する冒涜である」
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