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修行の刻
第1話 リオン・フェニックス
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「お前はもうフェニックス家の人間ではない! このクズが!! キサマなど出て行けッ!!」
生まれつき最高の魔力量をほこり、チヤホヤされ続けた僕が父上からそう告げられたのは……。
魔法学園に入学する6ヶ月前の出来事であった。
***
「起きてくださいリオン様、朝ですよ」
耳には優しく透き通るような声に、カーテンが開かれていく独特な音が響き渡る。
朝日が閉じている瞼に照り付け、眩しさを感じながらゆっくりと身体を起こした。
「ふぁ~。おはよう……アカツキ。いい天気だね」
「はい、リオン様。それよりお食事の時間15分前ですけど……」
「な、なんでもっと早く起こしてくれなかったのさ?!」
「30分前から起こしてましたけど中々起きられなかったので、リオン様の綺麗な顔立ちの寝顔を堪能しておりました」
そうイタズラっぽく微笑むのは、僕の傍付きのアカツキ。少し暗めの赤色のロングヘアを三つ編みに束ね、黒と白のメイド服を着用している。年齢は確か成人年齢と同じ15歳だったはずだ。
僕の住むこの国『アステル王国』には貴族制度はないが、フェニックス家は魔法の名家として知られており、かなり大きなお屋敷に住んでいるのだ。
そしてフェニックス家の現当主である父は、名家としての誇りを持っているためいくつかの家訓を矜持としており、その中には食事を家族全員で食べることというものがあった。
「ササッ、急いでお着替えしますから早く脱いで下さいね」
「ちょ、ちょっと待ってよ。恥ずかしいから、自分で出来るってば」
「ダメです。リオン様が自分で着替えたら30分は掛かっちゃいますから、私が着替えさせるんですーッ」
もうすぐ12歳になる思春期の年頃なので、傍付きとはいえ、アカツキのことを異性として意識し始めているのだが、彼女はお構いなしに服を脱がしてくる。
まぁ、確かにそっちの方が早いのだけども……。
アカツキにされるがまま、5分もしない間に着替えは終わり僕は食卓の間へと向かった。
***
「おはよう、リオン。今日は楽しみだな」
「おはようございます、父上。僕もようやく『星の導』を受ける日が来たのでワクワクしてます」
『星の導』とは――自分に宿った魔法の属性を見てもらう儀式の名前であり、ここアステル王国にある『神星アステル魔法学園』に入学する6ヶ月前に受けることができるのだ。そして、今日がまさしくその『星の導』の日となっていた。
「まぁリオンならきっと大丈夫ですよ、父上。何せ魔法史上、最高の魔力量の持ち主ですからね。自慢の弟です」
そう微笑むのはクリム兄様。
僕より3つ歳上の兄で14歳だ。
既に魔法学園でも目覚ましい活躍をしているらしく、フェニックス家の魔法師として目標となる存在だった。
僕と同じクリムゾンレッドの髪色に、クリアブルーの瞳をしている。兄様は僕よりも髪を伸ばしており、いつも後ろで一つに束ねていた。
「ありがとうございます、クリム兄様。僕も父上と兄様の期待に添えるよう頑張ります」
「ハッハッハッハッ。そんな張り切らんでも、宿る属性は『炎』と決まっておるわ」
――そう。魔法の属性は全部で九つ。
炎・水・氷・風・雷・地・草・光・闇の中から一つだけ宿ると決まっていた。
フェニックス家は魔法の中でも、炎に優れた名家なのだ。
当然、父上もクリム兄様も炎の魔法師だ。
「ですよね。これまで勉学には励みましたけど、運動も魔力の鍛錬も一切せずにこの歳になってしまったので、少しだけ不安で……」
「リオンよ、前にも話したが魔法師に運動は不要だ。それにお前は魔力の鍛錬の必要もない。生まれ持った才能があるからこれまた不要だ。万が一にも己に不安を感じることはないぞ」
過去にも複数回父上からそう話されており、不安になる度、同じ言葉を聞かされることで安心感を得ていた。
「とりあえずしっかりご飯を食べて、今日の儀式でフェニックス家としての矜持を見せつけてやりなさい」
「はい、父上!」
こうして僕は『星の導』を受けるべく、ワクワクした気持ちで魔法学園へと向かった。
――まさかこの後、父上からの罵詈雑言を浴びる未来が待ち受けているとも知らずに。
———————————————————————
【☆あとがき☆】
読んでいただきまして、ありがとうございます。
「面白そうかも」「もっと読んでみたいな」と思っていただけましたら……
作品フォロー等いただけると嬉しいです。
皆様からの応援が、なによりも励みになります。
よろしくお願いいたします!
生まれつき最高の魔力量をほこり、チヤホヤされ続けた僕が父上からそう告げられたのは……。
魔法学園に入学する6ヶ月前の出来事であった。
***
「起きてくださいリオン様、朝ですよ」
耳には優しく透き通るような声に、カーテンが開かれていく独特な音が響き渡る。
朝日が閉じている瞼に照り付け、眩しさを感じながらゆっくりと身体を起こした。
「ふぁ~。おはよう……アカツキ。いい天気だね」
「はい、リオン様。それよりお食事の時間15分前ですけど……」
「な、なんでもっと早く起こしてくれなかったのさ?!」
「30分前から起こしてましたけど中々起きられなかったので、リオン様の綺麗な顔立ちの寝顔を堪能しておりました」
そうイタズラっぽく微笑むのは、僕の傍付きのアカツキ。少し暗めの赤色のロングヘアを三つ編みに束ね、黒と白のメイド服を着用している。年齢は確か成人年齢と同じ15歳だったはずだ。
僕の住むこの国『アステル王国』には貴族制度はないが、フェニックス家は魔法の名家として知られており、かなり大きなお屋敷に住んでいるのだ。
そしてフェニックス家の現当主である父は、名家としての誇りを持っているためいくつかの家訓を矜持としており、その中には食事を家族全員で食べることというものがあった。
「ササッ、急いでお着替えしますから早く脱いで下さいね」
「ちょ、ちょっと待ってよ。恥ずかしいから、自分で出来るってば」
「ダメです。リオン様が自分で着替えたら30分は掛かっちゃいますから、私が着替えさせるんですーッ」
もうすぐ12歳になる思春期の年頃なので、傍付きとはいえ、アカツキのことを異性として意識し始めているのだが、彼女はお構いなしに服を脱がしてくる。
まぁ、確かにそっちの方が早いのだけども……。
アカツキにされるがまま、5分もしない間に着替えは終わり僕は食卓の間へと向かった。
***
「おはよう、リオン。今日は楽しみだな」
「おはようございます、父上。僕もようやく『星の導』を受ける日が来たのでワクワクしてます」
『星の導』とは――自分に宿った魔法の属性を見てもらう儀式の名前であり、ここアステル王国にある『神星アステル魔法学園』に入学する6ヶ月前に受けることができるのだ。そして、今日がまさしくその『星の導』の日となっていた。
「まぁリオンならきっと大丈夫ですよ、父上。何せ魔法史上、最高の魔力量の持ち主ですからね。自慢の弟です」
そう微笑むのはクリム兄様。
僕より3つ歳上の兄で14歳だ。
既に魔法学園でも目覚ましい活躍をしているらしく、フェニックス家の魔法師として目標となる存在だった。
僕と同じクリムゾンレッドの髪色に、クリアブルーの瞳をしている。兄様は僕よりも髪を伸ばしており、いつも後ろで一つに束ねていた。
「ありがとうございます、クリム兄様。僕も父上と兄様の期待に添えるよう頑張ります」
「ハッハッハッハッ。そんな張り切らんでも、宿る属性は『炎』と決まっておるわ」
――そう。魔法の属性は全部で九つ。
炎・水・氷・風・雷・地・草・光・闇の中から一つだけ宿ると決まっていた。
フェニックス家は魔法の中でも、炎に優れた名家なのだ。
当然、父上もクリム兄様も炎の魔法師だ。
「ですよね。これまで勉学には励みましたけど、運動も魔力の鍛錬も一切せずにこの歳になってしまったので、少しだけ不安で……」
「リオンよ、前にも話したが魔法師に運動は不要だ。それにお前は魔力の鍛錬の必要もない。生まれ持った才能があるからこれまた不要だ。万が一にも己に不安を感じることはないぞ」
過去にも複数回父上からそう話されており、不安になる度、同じ言葉を聞かされることで安心感を得ていた。
「とりあえずしっかりご飯を食べて、今日の儀式でフェニックス家としての矜持を見せつけてやりなさい」
「はい、父上!」
こうして僕は『星の導』を受けるべく、ワクワクした気持ちで魔法学園へと向かった。
――まさかこの後、父上からの罵詈雑言を浴びる未来が待ち受けているとも知らずに。
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【☆あとがき☆】
読んでいただきまして、ありがとうございます。
「面白そうかも」「もっと読んでみたいな」と思っていただけましたら……
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応援ありがとうございます!
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