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「...大事な話がある。」
...夕食中に、婚約者は言いました。
「なんですか? 改まって。」
「僕たちの関係についてなんだが、婚約破棄をしてほしい。」
(......え?)
私は、頭が真っ白になりました。
(......婚約破棄?)
「...な、なぜですか!?
昨日も、『愛している』と言葉を囁いてくれたじゃないですか...!?
...それに、もう結婚の話も出てきているのに...!!」
「...今日、僕は出会ってしまったんだ!
僕を救ってくれる女神様に! これは真実の愛だ!」
(............はぁ?)
私は驚愕しました。
この人は何を言っているの...?
婚約者は、恍惚とした瞳で言いました。
「......あぁ、早くこんなこと終わらせて女神様のもとへ行きたい......!!」
「......ちょ、ちょっと待ってください!
どういうことですか? 女神様...ってどこの令嬢なんですか!?」
私がそう聞くと、
「そんなの決まっているだろう、この国の聖女...いや、女神様だ!!
僕を救ってくれるのはあの人しかいない...真実の愛って素晴らしい...!」
(......あぁ、この国の聖女......ですか。
貴方もあの悪名高い聖女に、堕ちてしまったのですね。)
気持ち悪い程恍惚とした瞳は、今になっては嫌悪感しか覚えない。
「わかりました。どうぞご勝手に?
ですが、後で真実に気づいても、遅いですからね。」
婚約者はきょとんとして、
「...はぁ? 真実って...なんだ?
まぁ、いい! 婚約破棄の手続きはこちらで済ませておく!!」
「...それじゃあ、さようなら。
......後で追いかけてこないで下さいね。」
_____
私は実家に戻ってから、両親に全てのことを話した。
「...な、なんだと!?
そんなことがあったのか...。 しかも、あの聖女様に堕ちたのか...。」
「大変だったわね、今日はゆっくり休みなさい。」
......今頃、聖女様と真実の愛(笑)に励んでいる頃かしらね?
もう、婚約者が滑稽に思えて来たわね。
_____
......この国の聖女は絶世の美女だ。
しかも、運が悪いことに、聖女は性格が悪い。
聖女の立場とその美貌を利用し、この国の令息を虜にした。
そして、令息たちの財産を奪いに奪い、破滅させるんだという。
もちろん噂はすぐに広まり、国民は、聖女について悪いイメージばかりになった。
だけど、この国に聖女は一人しかいない。 王も、追放したくてもできない状況となってしまった。
............きっと元婚約者も同じ被害に遭ったのでしょうね。
...『真実の愛』につられて進む先は、破滅ですよ?
_____
......予想通り、1か月後には元婚約者が破滅したという噂が街中に広がった。
絶世の美女って、怖い怖い。
後悔しないで下さいねって言ったのに、まぁ自業自得だけど。
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