初恋の香りに誘われて

雪白ぐみ

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第二十九話〜柔らかな温もり〜※

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「スイ? 嫌なら止めるから」

 滲んだ枕に気づいたサキ君は、一度動きを止めて腰を引こうとする。
 心配そうに顔を歪めた彼の今にも離れていきそうな気配に、慌てて広い背中に手を回し引き留めた。

「ちがう嫌なんじゃないの。こうしてるのがただ嬉しくて、幸せで……だから止めないで」

「俺もすごく嬉しいよ。もう少し動くけど、辛かったらちゃんと言って」


 ゆるゆると再開された律動に、じんじんしていた痛みと違和感が少しずつ引いていく。
 代わりに与えられたのは、女に生まれて良かったと思えるような悦びだ。
 未知の世界を教えてくれたサキ君に応えたくて、縋るようにより一層強く背中にしがみついた。
 

「好きだ。好き過ぎておかしくなりそうなくらい俺はスイが好き」

「わたしも」

 私を見下ろす色素の薄い瞳は、甘く蕩けてる。
 でもきっと、見つめ返した私の瞳の方が、それ以上に情けないほどトロトロに蕩けきっている事だろう。

「あっ……さきく、ん。さきくん……すき」

 広い背中に回した手を引き寄せキスをねだる。

 夢中でキスを繰り返すうちに、サキ君の息づかいと腰の動きは段々と激しさを増していった。

 優しさの中に、時折滲ませる荒々しさに呼吸が乱れる。
 
「んっ、んんッ……ふぅッ……」

「スイ、気持ちいい……はっ……ヤバい、くっ…………イキそう……」


 視界が揺れるほど激しく貫かれた後
 サキ君は私の中で弾けた。



 *



「スイ、身体大丈夫?」

 
 大好きな人の温もりに包まれながら、優しく髪を撫でられる。

「大丈夫だよ」

「俺今すごく幸せ」

「私も」

 
 肌を合わせるのがこれほど気持ち良い事なんて知らなかった。
 
 今、心も身体も、全てが満たされるような幸福感に包まれている。

 幸せ。
 上気した私達から漂う甘い芳香は、初めてキスした時と同じ香り。
 今私達は、その思い出の香りに優しく包み込まれている。
 やっとひとつになれたね。
 ここまで長かったけど、今二人でこうしていられるのが本当に幸せ。

 サキ君にありがとうって伝えなきゃ。
 もう一度好きになってくれて、ありがとうって。
 優しくしてくれて、ありがとうって。
 
 サキ君に伝えたい事がまだまだたくさんあるの。
 私の気持ち、つたえ、なきゃ。





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