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過去話10(sideアル)
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「おはようございます」
「おはよう~。セバス~」
セバスに声をかけられて目を覚ましたおれは、むにゃむにゃと目をこすりかけて、はっと気が付いて横を見やる。
「お、おはようございます…」
同じく目をこするギルバートがそこにはいた。手首からのぞく包帯が痛々しい。
昨日、お医者さんにも診てもらったところ、やはりあの男に付けられたアザがあちこちにあったが、骨や内臓に至るような傷ではなかったらしい。
優しいおじいちゃん先生が、怖がらせないように話を聞いてくれた。
ギルバートの両親は揃って病で亡くなっており、母の兄というあの男しか親族もいない。
小さな子供のギルバートには、我慢するしか道がなかったのだ。
気に入らないことがあると、物を投げたり腕や足を掴んで怒鳴って脅す。実際に殴られたり大怪我をすることは無かったようだが、話を聞いた父上と母上も、見たことのないほど険しい顔をしていた。
それでも、最近は仕事がうまくいかずに荒れていたけど、もともとは優しいおじさんなんだ、と叔父をかばう発言をするギルバートには、おれをふくめた全員が目頭を押さえた。
おれも、これからはおれがギルバートを守るんだ!と決意を深めたのだった。
「おはよう!ギルバート!よくねむれた?」
「うん…。おはよう…すごい暖かくて…柔らかくて気持ちよくて…」
そう言うギルバートはまだ、うつらうつらと夢の世界に戻りかけている。
寝そうな子供って可愛いよね。キラッキラ王子様のようなギルバートだと余計に可愛い。
昨日の夜、寝る前にいろいろお話したかったけど、5歳児と7歳児のおれたちには睡魔に勝つ手段はなく、あっさりと寝入ってしまっていた。
でも寝る前に、おれに対しては敬語を使おうとしなくていい、という説得だけはしていたのだ!えらい!おれ!
クスクス笑いながら、セバスさんがカーテンを開ける。
「まぶしい…」
なんとか目を覚ましたギルバートが目を細めながら、おれ越しに外の光を見ている。
うん。日の光をあびて光る金髪も、青い目も、こちらを見てにへっと笑うその笑顔も、まぶしいです。
「朝食はパンケーキですよ。甘いクリームも用意してますからね」
旦那様と奥様もお待ちですよ、とせかしながらも子供の気を引くのも忘れないセバスさん。
おれの着替えを手伝ったあと、ギルバートの着替えも手伝ってくれた。
ギルバートは庶民的ではない素材の服であることに戸惑っていたが、セバスさんのお古だと説明を聞いてちょっと安心したようにお礼を言っていた。
でも、多分ちょっとお直しはしてくれているんだろう。だって、本当にピッタリサイズだったから。
二人揃って朝食の席に付けば、テーブルの上には一口サイズのコロコロパンケーキが乗っていた。
昨日も、なるべくフォークやスプーンだけで食べやすいメニューにしてくれていた。
ギルバートのことを聞いた料理長が、怪我でうまくナイフが使えないことを心配して考えてくれたらしい。
料理長や服を直してくれたメイドさんにもあとでお礼を言いに行こう!
昨日も今日も、父上と母上も全く同じメニューを食べている。
こういうところ、とても大好きです!
「おいしいね?」
隣のギルバートに話しかける。今日も満面の笑みが出ている自信がある。
目を細めたギルバートが、頷きながらおれの頬に付いたクリームを指で取ってくれた。
「まあまあ」
「…」
相変わらず、母上は楽しそうにおれたちを見ている。わかります。
小さい子供が小さい子供の世話をやく光景…微笑ましいですよね…。
しかも、このギルバートの容姿がまた…。
世話をやかれているのが自分であることは棚に上げて、心の中で母上に同調する。
あ、父上はナフキンをかじるのはやめてください。
「食後は、温かいミルクを用意しましょうね。ハチミツもたっぷり入れるとおいしいわよ~」
母上がそう言いながら、メイドさんに合図をする。
食後にソファーに移動すると、すぐにおれたちの前にほのかに湯気の立つカップが置かれた。
さすがに大人組は、紅茶を飲むらしい。
「では、ギルバート君。少しお話をさせてもらっても良いかな?」
それぞれが一息つくと、父上が切り出した。
隣のギルバートが緊張するのがわかったので、おれはちょっと近づいて手を握った。
父上も、チラリと見たのみで微笑みを崩さない。父上の成長!
「まずは、その怪我が治るまで、うちでゆっくりすごしなさい」
うんうん頷くおれ。おれをチラリと見て、ギルバートが「ありがとうございます」とつぶやいた。やった!ギルバートと一緒!
「けど、俺…。ただの庶民で、お世話になる理由もない…ですし…。お礼もなにもできません…」
おれの表情を見ながらも、しっかりと父上の方に向き直ったギルバートは、ゆっくりと語った。
これはまずい!断られる!
「あらぁ。でも、ギルバート君はアルフレッドのお友達でしょう?理由はそれで充分よ~」
「そうだな。今まで何人もの迷子や怪我人、動物など見つけては世話をしてきたけど、一度も拾ってこなかったアルフレッドが、初めて拾いたがった子だからな」
「んんっ。アルフレッド様は今まで探していた『自分だけの相棒』がギルバート君だと思われているのでしょう?」
母上素敵!父上言い方!セバスさんそのとおり!!!
「そうだよ!ギルバートをみたしゅんかん、このこだ!っておもったんだ」
勢いよく答えるおれを見て、ギルバートが驚いた顔をしている。
「あらあら。じゃあ、ギルバート君がいてくれたら、アルフレッドはあちこち走り回るのが落ち着いてくれるのね~」
何か言いかけた父上を遮って、母上が笑う。
「それならば、アルフレッド様が一人でどこかに行かないように、怪我が治ったあとは従者として働いて貰えれば、我々も大助かりですね」
「それは良いわね。怪我が治ったら、アルフレッドのお友達兼従者としてお勉強もしてもらおうかしら~」
「ギルバート、だめ?」
甘えるように言ってみた!おれ、元18歳!
ギルバートは目をパチパチ瞬いている。もうひと押し!
「ぼく、ずっといっしょにいてくれる、ぼくだけのあいぼうがほしかったんだ」
「アルフレッドだけの…ずっと一緒…」
ギルバートの表情がちょっと明るくなった!いける!
「そうだよ!ねえ、ギルってよんでもいい?ぼくのこともアルってよんで?」
「ギル…アル…」
父上はずっと口をパクパクさせているが、母上とセバスさんに止められている。
「うん!ギルとアルってきょうだいみたいでしょ?」
「兄弟…」
あれ?顔が曇った。
「だめ?かぞくみたいでうれしいなっておもったんだけど…」
「家族…!」
またギルの顔が明るくなった!
「うん!ぼくだけのかぞくになって…?」
あれ?相棒じゃなくて家族になったけど、まあいっか!相棒も兄弟も似たようなもんだ!
顔を赤くしたギルがこくりと頷いてくれた!
「あらあら~、ギルバート君。ほんとにうちの息子にしちゃえそうねぇ」
「…。まだ早い…!」
なにはともあれ、まずは怪我を治すまではおれのお客さんとして、その後はセバスさんに付いて従者の勉強をしながら、おれの遊び相手をしてくれることになった!
神様。どんな子を選ぼうとしてくれていたのか分からないけど、俺はギルが良いです。俺にくれる転生特典はギルにしてください!
あ、でも選ぼうとしてくれてた子も、幸せにしてあげてくださいね。
これからよろしく!ギルのことは、おれが幸せにするよ!
「おはよう~。セバス~」
セバスに声をかけられて目を覚ましたおれは、むにゃむにゃと目をこすりかけて、はっと気が付いて横を見やる。
「お、おはようございます…」
同じく目をこするギルバートがそこにはいた。手首からのぞく包帯が痛々しい。
昨日、お医者さんにも診てもらったところ、やはりあの男に付けられたアザがあちこちにあったが、骨や内臓に至るような傷ではなかったらしい。
優しいおじいちゃん先生が、怖がらせないように話を聞いてくれた。
ギルバートの両親は揃って病で亡くなっており、母の兄というあの男しか親族もいない。
小さな子供のギルバートには、我慢するしか道がなかったのだ。
気に入らないことがあると、物を投げたり腕や足を掴んで怒鳴って脅す。実際に殴られたり大怪我をすることは無かったようだが、話を聞いた父上と母上も、見たことのないほど険しい顔をしていた。
それでも、最近は仕事がうまくいかずに荒れていたけど、もともとは優しいおじさんなんだ、と叔父をかばう発言をするギルバートには、おれをふくめた全員が目頭を押さえた。
おれも、これからはおれがギルバートを守るんだ!と決意を深めたのだった。
「おはよう!ギルバート!よくねむれた?」
「うん…。おはよう…すごい暖かくて…柔らかくて気持ちよくて…」
そう言うギルバートはまだ、うつらうつらと夢の世界に戻りかけている。
寝そうな子供って可愛いよね。キラッキラ王子様のようなギルバートだと余計に可愛い。
昨日の夜、寝る前にいろいろお話したかったけど、5歳児と7歳児のおれたちには睡魔に勝つ手段はなく、あっさりと寝入ってしまっていた。
でも寝る前に、おれに対しては敬語を使おうとしなくていい、という説得だけはしていたのだ!えらい!おれ!
クスクス笑いながら、セバスさんがカーテンを開ける。
「まぶしい…」
なんとか目を覚ましたギルバートが目を細めながら、おれ越しに外の光を見ている。
うん。日の光をあびて光る金髪も、青い目も、こちらを見てにへっと笑うその笑顔も、まぶしいです。
「朝食はパンケーキですよ。甘いクリームも用意してますからね」
旦那様と奥様もお待ちですよ、とせかしながらも子供の気を引くのも忘れないセバスさん。
おれの着替えを手伝ったあと、ギルバートの着替えも手伝ってくれた。
ギルバートは庶民的ではない素材の服であることに戸惑っていたが、セバスさんのお古だと説明を聞いてちょっと安心したようにお礼を言っていた。
でも、多分ちょっとお直しはしてくれているんだろう。だって、本当にピッタリサイズだったから。
二人揃って朝食の席に付けば、テーブルの上には一口サイズのコロコロパンケーキが乗っていた。
昨日も、なるべくフォークやスプーンだけで食べやすいメニューにしてくれていた。
ギルバートのことを聞いた料理長が、怪我でうまくナイフが使えないことを心配して考えてくれたらしい。
料理長や服を直してくれたメイドさんにもあとでお礼を言いに行こう!
昨日も今日も、父上と母上も全く同じメニューを食べている。
こういうところ、とても大好きです!
「おいしいね?」
隣のギルバートに話しかける。今日も満面の笑みが出ている自信がある。
目を細めたギルバートが、頷きながらおれの頬に付いたクリームを指で取ってくれた。
「まあまあ」
「…」
相変わらず、母上は楽しそうにおれたちを見ている。わかります。
小さい子供が小さい子供の世話をやく光景…微笑ましいですよね…。
しかも、このギルバートの容姿がまた…。
世話をやかれているのが自分であることは棚に上げて、心の中で母上に同調する。
あ、父上はナフキンをかじるのはやめてください。
「食後は、温かいミルクを用意しましょうね。ハチミツもたっぷり入れるとおいしいわよ~」
母上がそう言いながら、メイドさんに合図をする。
食後にソファーに移動すると、すぐにおれたちの前にほのかに湯気の立つカップが置かれた。
さすがに大人組は、紅茶を飲むらしい。
「では、ギルバート君。少しお話をさせてもらっても良いかな?」
それぞれが一息つくと、父上が切り出した。
隣のギルバートが緊張するのがわかったので、おれはちょっと近づいて手を握った。
父上も、チラリと見たのみで微笑みを崩さない。父上の成長!
「まずは、その怪我が治るまで、うちでゆっくりすごしなさい」
うんうん頷くおれ。おれをチラリと見て、ギルバートが「ありがとうございます」とつぶやいた。やった!ギルバートと一緒!
「けど、俺…。ただの庶民で、お世話になる理由もない…ですし…。お礼もなにもできません…」
おれの表情を見ながらも、しっかりと父上の方に向き直ったギルバートは、ゆっくりと語った。
これはまずい!断られる!
「あらぁ。でも、ギルバート君はアルフレッドのお友達でしょう?理由はそれで充分よ~」
「そうだな。今まで何人もの迷子や怪我人、動物など見つけては世話をしてきたけど、一度も拾ってこなかったアルフレッドが、初めて拾いたがった子だからな」
「んんっ。アルフレッド様は今まで探していた『自分だけの相棒』がギルバート君だと思われているのでしょう?」
母上素敵!父上言い方!セバスさんそのとおり!!!
「そうだよ!ギルバートをみたしゅんかん、このこだ!っておもったんだ」
勢いよく答えるおれを見て、ギルバートが驚いた顔をしている。
「あらあら。じゃあ、ギルバート君がいてくれたら、アルフレッドはあちこち走り回るのが落ち着いてくれるのね~」
何か言いかけた父上を遮って、母上が笑う。
「それならば、アルフレッド様が一人でどこかに行かないように、怪我が治ったあとは従者として働いて貰えれば、我々も大助かりですね」
「それは良いわね。怪我が治ったら、アルフレッドのお友達兼従者としてお勉強もしてもらおうかしら~」
「ギルバート、だめ?」
甘えるように言ってみた!おれ、元18歳!
ギルバートは目をパチパチ瞬いている。もうひと押し!
「ぼく、ずっといっしょにいてくれる、ぼくだけのあいぼうがほしかったんだ」
「アルフレッドだけの…ずっと一緒…」
ギルバートの表情がちょっと明るくなった!いける!
「そうだよ!ねえ、ギルってよんでもいい?ぼくのこともアルってよんで?」
「ギル…アル…」
父上はずっと口をパクパクさせているが、母上とセバスさんに止められている。
「うん!ギルとアルってきょうだいみたいでしょ?」
「兄弟…」
あれ?顔が曇った。
「だめ?かぞくみたいでうれしいなっておもったんだけど…」
「家族…!」
またギルの顔が明るくなった!
「うん!ぼくだけのかぞくになって…?」
あれ?相棒じゃなくて家族になったけど、まあいっか!相棒も兄弟も似たようなもんだ!
顔を赤くしたギルがこくりと頷いてくれた!
「あらあら~、ギルバート君。ほんとにうちの息子にしちゃえそうねぇ」
「…。まだ早い…!」
なにはともあれ、まずは怪我を治すまではおれのお客さんとして、その後はセバスさんに付いて従者の勉強をしながら、おれの遊び相手をしてくれることになった!
神様。どんな子を選ぼうとしてくれていたのか分からないけど、俺はギルが良いです。俺にくれる転生特典はギルにしてください!
あ、でも選ぼうとしてくれてた子も、幸せにしてあげてくださいね。
これからよろしく!ギルのことは、おれが幸せにするよ!
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