翠眼の魔道士

桜乃華

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第二十八話 ご挨拶 2/2

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 とうとう来た問いにセシリヤの肩が揺れた。それを見逃すミラではない。

 「魔石、拾いましたね?」

 今度は問いではない。セシリヤは諦めたように息を吐くとポケットからティルラが宿った魔石を取り出した。

 「まあ、記憶を読んだ時点でバレるわよね……」

 ミラが魔石を覗き込む。

 「これが女神ティルラ、様……ですか」

 「な、何⁉ セシリヤ……」

 見知らぬ人が覗き込んでくれば驚かないはずがない。動揺したティルラがセシリヤへ助けを求めるように声を出した。

 「ああ……その人はえっと」

 なんと説明しようかと悩んでいると先にミラが口を開いた。

 「お初にお目にかかります。僕はクエスト管理協会本部に所属しているミラ、と申します。以後、お見知りおきを」

 礼儀正しく一礼したミラにティルラも倣って「初めまして」と一礼する。

 「ちなみに、セシリヤさんとは将来を誓い合った仲ですので、よろしくお願いいたしますね」

 「はあー⁉ ちょっとミラ、何勝手なこと言ってるの⁉」

 微笑むミラにセシリヤが目を丸くして勢いよくミラを見た。相手はえへへー、と頬を緩めているだけだ。ほんの少しイラッとしたが、それを表に出さないようにセシリヤも笑みを作った。多少頬が引きつっているのは仕方ない、仕方ない……。

 「あら、そうなの? 結構お似合いよ、あなたたち」

 ふふっ、と笑うティルラに頬を引きつらせたままのセシリヤの額に青筋が浮かんだ。それにティルラは気付かない。

 「やっぱりティルラはここに置いて帰ろうかな」

 「え⁉ ちょ、ちょっと待って! それだけはやめて……! 今の発言取り消すから!」

 涙目でセシリヤを見たティルラは必死で懇願する。最初に出会った時と似たようなやり取りに次第にセシリヤの機嫌が直っていく。

 「次に変な事言ったら問答無用でその場に置いていくから」

 「わかった! 気を付けるから……!」

 涙目のままティルラは何度も頷く。それを興味深そうに見ていたミラが口を開いた。

 「なんだか、お二人を見ていると女神と人ではなく、もっと近しい間柄のように見えますね」

 ミラの発言に二人同時に顔を向ける。

 「どこがよ⁉」

 同時に発せられた声にミラの肩がびくり、と揺れた。

 「い、いやぁ~。だって喧嘩するほど仲がいいと言いますし? 僕にはそんな相手いませんでしたから見ていて少し羨ましいです」

 そう言って寂しそうに微笑むミラにセシリヤは黙り込んだ。彼と初めて出会った頃を思い出せば、彼は一人でいるところをモンスターに襲われていた。たまたまクエスト遂行中だったセシリヤが助けたのだ。

 (あの時のミラは何というか……記憶喪失者みたい、いや……生まれたばかりの赤子みたいに世の中を知らなさ過ぎたのよね)
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