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第五十二話 今後の予定と現状 1/2
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鶏の香辛料焼きをナイフで切り分けながらセシリヤはミラの方を見た。彼はニコニコしなら目の前の洋梨タルトにナイフを入れていた。
(……ワンホール)
視線に気付いたミラが顔を上げて「セシリヤさんも食べますか?」と上機嫌に問うてきた。
「そうね、一切れ貰おうかしら」
切り分けた鶏の香辛料焼きをフォークで刺して口に入れるセシリヤに表情を輝かせたミラが取り皿にタルトを乗せて渡す。受け取ったセシリヤは飲み込んで「ありがと」と礼を述べるとジッ、とミラを見つめた。視線に気付いた相手がタルトを幸せそうに頬張りながら首を傾ける。
「どうかしましたか?」
ミラの問いにセシリヤはテーブルへと視線を移す。洋梨タルトしか頼まなかったミラにセシリヤは自分と同じ物を注文していた。当然、彼のテーブルにも鶏の香辛料焼き、チックピーのスープ、バタールが置いてある。けれど、彼は目もくれない。
セシリヤは溜息を吐いた。
「ミラ、タルトを食べるのはいいけど、ちゃんとした食事を摂りなさい」
「……」
言われてミラはテーブルに置かれたタルト以外を見た。やや不満そうな表情にセシリヤは苦笑を零す。
「どうせ食べたことないんでしょ。ほら、味は美味しいから」
セシリヤが自分の皿から一切れ鶏の香辛料焼きをフォークで刺すとミラへと差し出した。目の前にある食事に少し逡巡しながらもミラは口に入れた。もごもごと口の中で咀嚼してごくり、と飲み込んだ。
「まあ、美味しいとは思いますけど……僕はタルトの方がいいです」
不満を述べながらもミラは自分の前にある皿を引き寄せた。
♦♦♦
食事も終わり、セシリヤはコーヒーをミラはミルクティーを飲んで一息ついていた。
「セシリヤさん、今度の予定はどうするんですか?」
「え? 今後の予定?」
コーヒーカップをソーサーに戻しながら「うーん」と考える仕草をする。
「そうね……どっかの誰かさんがうるさいから、とりあえずティルラがいたっていう土地まで行こうかと思ってるんだけど」
「ちょっと、余計な一言聞こえてるわよ」
黙っていたティルラから不機嫌そうな声が上がる。
「……」
「ミラ?」
ミラは目を丸くしていた。口を開けたままのミラの名前を呼んでようやく彼は「あ、すみません……」と言いながらティーカップを手に取った。小さく首を左右に振りミルクティーを飲んで息を吐く。
「どうしたの? ボーっとしてたけど」
「いえ、セシリヤさんは知らないんですね」
「知らないって何が?」
眉を寄せたセシリヤにミラが一呼吸置いて口を開いた。
「かつて女神ティルラがいた土地ティエール……正確には神殿のですが、そこは今……魔族たちの巣窟と化しています」
(……ワンホール)
視線に気付いたミラが顔を上げて「セシリヤさんも食べますか?」と上機嫌に問うてきた。
「そうね、一切れ貰おうかしら」
切り分けた鶏の香辛料焼きをフォークで刺して口に入れるセシリヤに表情を輝かせたミラが取り皿にタルトを乗せて渡す。受け取ったセシリヤは飲み込んで「ありがと」と礼を述べるとジッ、とミラを見つめた。視線に気付いた相手がタルトを幸せそうに頬張りながら首を傾ける。
「どうかしましたか?」
ミラの問いにセシリヤはテーブルへと視線を移す。洋梨タルトしか頼まなかったミラにセシリヤは自分と同じ物を注文していた。当然、彼のテーブルにも鶏の香辛料焼き、チックピーのスープ、バタールが置いてある。けれど、彼は目もくれない。
セシリヤは溜息を吐いた。
「ミラ、タルトを食べるのはいいけど、ちゃんとした食事を摂りなさい」
「……」
言われてミラはテーブルに置かれたタルト以外を見た。やや不満そうな表情にセシリヤは苦笑を零す。
「どうせ食べたことないんでしょ。ほら、味は美味しいから」
セシリヤが自分の皿から一切れ鶏の香辛料焼きをフォークで刺すとミラへと差し出した。目の前にある食事に少し逡巡しながらもミラは口に入れた。もごもごと口の中で咀嚼してごくり、と飲み込んだ。
「まあ、美味しいとは思いますけど……僕はタルトの方がいいです」
不満を述べながらもミラは自分の前にある皿を引き寄せた。
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食事も終わり、セシリヤはコーヒーをミラはミルクティーを飲んで一息ついていた。
「セシリヤさん、今度の予定はどうするんですか?」
「え? 今後の予定?」
コーヒーカップをソーサーに戻しながら「うーん」と考える仕草をする。
「そうね……どっかの誰かさんがうるさいから、とりあえずティルラがいたっていう土地まで行こうかと思ってるんだけど」
「ちょっと、余計な一言聞こえてるわよ」
黙っていたティルラから不機嫌そうな声が上がる。
「……」
「ミラ?」
ミラは目を丸くしていた。口を開けたままのミラの名前を呼んでようやく彼は「あ、すみません……」と言いながらティーカップを手に取った。小さく首を左右に振りミルクティーを飲んで息を吐く。
「どうしたの? ボーっとしてたけど」
「いえ、セシリヤさんは知らないんですね」
「知らないって何が?」
眉を寄せたセシリヤにミラが一呼吸置いて口を開いた。
「かつて女神ティルラがいた土地ティエール……正確には神殿のですが、そこは今……魔族たちの巣窟と化しています」
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